新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

文字の大きさ
135 / 141

第135話 加勢

しおりを挟む
「やった……のか?」

 路地に散らばる、魔剣の破片。
 完全に力を失い、沈黙している。
 さすがに粉々になってまで、襲いかかってくることはないらしい。

 だが、ほっとしたのもつかの間だった。

『オオオオオオォォ……』『ココ……ドコ……』『アアアアアアァァ……』『斬ル……斬リタイ……』『ニク……ニエ……』『アアアァァァッ!!』『死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ』

 地の底から響いてくるような呪詛とともに、教会の大扉からぞろぞろと出てくる『影』たちの姿が見える。

 数は……クソ。
 いちいち数えるのがバカらしいほどだ。

「……パレルモ、まだ行けるか?」

「もー、お腹へったよー……」

 パレルモは完全にお疲れモードだな。
 まあ、それは俺もだが。

 だが、愚痴をこぼしていてもどうしようもない。
 やるしかない。

「いいかパレルモ。連中の本体は武器だ。攻撃は俺が引きつけるから、その隙に片っ端から武器を破壊しろ」

「……う、うん!」

 時間を停めて打撃を重ねれば、あるいは刃にヒビ位は入れられるかも知れないが、『魔剣』の類いは総じてただの刀剣よりもずっと強靱だ。
 もちろん試してはみるつもりだが、難しいだろう。

 だから今は、なんでも切断可能なパレルモの空間断裂魔術が頼りだ。

 短剣を強く握りしめる。
 多少の負傷は想定内だ。

「じゃあ、いくぞ!」

 覚悟を決め、『影』の群れに突っ込もうとした――そのとき。



「ライノ殿! 伏せろッ!」



 突然、背後から鋭い女の声が聞こえた。
 聞き慣れた、声だ。

「……っ!!」

 違和感なく身体が反応する。
 考える前に、俺は低く身を伏せた。

「――焼き尽くせ、《火焔刃》ッ!」

 次の瞬間。

 ゴウ、と灼熱の風が頭上を通り過ぎ――
 俺に襲いかかろうとしていた『影』が、まとめて数体が消し飛んだ。

 カラン、と武器だけが地面に落ちる。

「ちょっとねえさま!? にいさまに当たったらどうするの!?」

 さらに、後ろで焦ったような怒ったような声が聞こえ、トタトタと軽い足音がこちらに近づいてくる。

「にいさまっ! 大丈夫かしらっ!?」

 振り向くと、金髪のふわふわ頭――アイラがそこにいた。
 その奥には、涼しい顔で剣を構え直すイリナの姿もある。

「アイラちゃん!」

 パレルモが嬉しそうな声を上げる。

「……よう。ナイスフォローだ。助かったぞ」

 二人がここにいるということは、魔物湧きは収まったということか。

「ああ。向こうは何とか片付いた。それでライノ殿の加勢に向かおうとしたら、巨大な光の柱が見えたのでな。急いで走ってきたのだ」

「ねえさまったら、いきなり建物の屋根に飛び上がるんだから! 私は治癒術師ヒーラーなのに……」

 アイラが不満げな顔でブツブツねえさまの文句を言っている。 
 だが彼女が一緒にいるということは、それはつまり半魔化してイリナの後に付いてきたということだ。
 ……ありがたいことである。

「ともあれ、だ。この影のような魔物を倒さねば、おちおち話もできん。……ライノ殿、あの魔物の弱点はどこだ? 倒したと思ったのに、アンデッドのように復活してしまったぞ」

 言って、イリナが鋭い視線を『影』の群れに向けた。
 先ほど倒したと思った数体は、すでに『影』の身体を取り戻している。

 ……なるほど、言い得て妙だな。
 たしかにアレらはアンデッドと言っていいかも知れん。
 人の魂が宿っていることを考えれば、種類的には怨霊レイスが近いだろう。

 もしかしたら、『死霊浄化ターンアンデッド』のような神聖魔術が有効かも知れない。

 まあ、俺は寺院の神官ではないので神聖魔術を使えないから、たとえ効いたとしても意味がないのだが。

 やはり『影』を倒すには、武器そのものを破壊する必要があるだろう。

「アイツらの本体は、手に持った『魔剣』だ。武器を破壊しなければ、倒せない」

「……ほう? まさかあれらは全て『魔剣』なのか」

「ああ、そうだ」

 『魔剣』と聞いて、イリナの目がキラリと光った。

「それは興味深いな。……なあライノ殿、一本くらい生け捕りにしても構わないだろうか?」

 そんなこと俺に聞かれても困るんだが。

「ねえさま……」

 ほらほらねえさま、アイラもげんなりした顔になっているぞ。

「先に言っておくが、破壊せずに倒すのは無理だと思うぞ」

「やってみなければ分からんだろう! 要は戦闘能力を奪い、動きを封じればいいのだ。いくぞ、――《雷刃》!」

 イリナが喜々とした表情で、『影』の群れに突撃していった。

 ……これだから剣士は。



 ◇



「クソッ! なぜっ……! どうしてっ……!」

 無数に散らばる魔剣の残骸の中、膝をついたイリナが慟哭する。
 すでに動くものは俺たち以外存在しない。

 よりどりみどりな魔剣を独り占めしようと、イリナが教会から出てくる『影』全てを相手にしていたら、いつの間にか殲滅してしまっていたからだ。

 それはもう鬼神のごとき戦いぶりだった。
 というか、まさか『影』の群れを一人で倒しきるとは思っていなかった。

 途中から面倒になったので数えていないが、百本は倒したんじゃなかろうか。
 おかげで、パレルモと俺はまったく出番がなかった。

 しかし、イリナはまだ身体が完治していないはずだというのに、とんでもない戦闘力だった。さすがは元勇者パーティーの魔法剣士である。

 まあ、その力の源泉が不純な動機だったらしいのは置いておくが。
 いや、不純な動機だったからこその奮闘ぶりだったのかも知れない。

 ……それはさておき。

「だから言っただろ。魔剣が本体だから、制圧するには破壊しなけりゃならないって」

「ああ、それは戦いの中、気付いたさ……! 分かっているとも! だが、だが……この世に神はいないのか……っ!」

 『魔剣を破壊せずに捕獲すること』をつかさどる神なんていてたまるか。

 つーかそれ生み出したの、魔王だからな?
 あとさっき倒した魔剣、全部人間の魂入りだからな?

 倒すのはまあ……敵対した以上仕方ないことだ。
 だがそれ以前に、人間の魂入りだということを知っている俺からすれば、とても所有したいとは思えない。

 まあ、言わぬが花……というやつだろう。

「はあ。まったくねえさまは仕方ないわね……」

 アイラが腰に手を当てながら、俺に同意を求めるようにこちらを見てくる。
 俺はどう反応していいのか分からず、とりあえずスルーすることにした。

「……とりあえず、俺たちは屋敷に戻ることにする。腹ごしらえも必要だからな。アイラとイリナはどうする?」

「そうね……」

 いまだ立ち直れていないイリナをちらりと横目で見つつ、アイラが「んー……」と思案顔になる。

「状況も状況だし、しばらく一緒に行動した方がいい気がするわ。私たちもご相伴にあずかっても、いいかしら?」
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...