突然、天才令嬢に転生してしまった ③ 【南の国編】【西の国編】

ぷりりん

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恍然大悟 ③

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 一人で悩んでいると、突然ナック君が紙を高く掲げた。

「……できた!」

「ん? 何を描いていたのだ、ナック」

 ニロがそう問えば、ナック君はワクワクと絵を見せてくれた。
 私も気になり、鉛筆で書いたその絵をちらりと覗きこんだ。

 大人を模様とした二人が左右に立ち、真ん中にいる小さな子供の手を繋ぐ、いかにもほのぼのとした絵だ。

 うふふ、可愛いわ。
 あ、下の方に何かが書いてある。ニロに教えてもらったのかな?

 どれどれ……ニロ、ナック、フェー。

 まあ、私たち3人の絵か! 
 確かに昨日の帰り、私とニロに手を繋いでもらった。それでこの絵か。なんだか嬉しいわ。

「ナックの……かちょく!」
 
 ナック君がニロと私の手を取り、にっこりと笑った。

 家族……? 昨日も同じことを言ったわね。

「家族だと思ってくれたのか、ナック。ありがたいな」

 ニロは微笑ましそうにナック君の頭を撫でたら、横合いからセルンが声を上げた。

「おい、ナック。お前自分の親がいるだろ。勝手に新しい家族つくんな」

「……余とフェー、そしてナックか。ふふっ。確かにいい家族に見えるな……」

 言いながらニロは頬を緩め、うっとりした目で絵を眺めた。


「おい、ニロ。白昼堂々と妄想すんな。そもそもお嬢はお前なんかと結婚しないから諦めろ」

 そう言われ、一瞬顔をしかめたニロだったが、すぐさま片頬を吊り上げた。

「……ふむ。そうだな、セルン。其方の言う通りだ。王子ならまだしも、我々はの護衛だ。フェーは余なんかと結婚できなければ、其方なんかとも結婚できない。当然であろう?」

「くっ……」

 あっ、大変! 
 セルンの体からむくむくと黒い靄が……! 

 ささっとニタちゃんの髪にリボンをつけて、ピリピリする二人を止めようとした時。

「ええ! お姉ちゃん王子様と結婚するのー!」

 急にニタちゃんの声が轟き、リット君も駆け寄ってきた。

「すげぇー! フェー姉ぇは王妃になるのかー!」

 驚く2人に「ふむふむ」とニロが頷けば、セルンは呆れ果てた様子を見せた。

「ないないないない! ありえない! お嬢は王子なんかよりもずっと強くて素晴らしい婚約者がいるんだ! 王子なんかと結婚することはないから、絶対!」

「……ふん、セルン。王子に『なんか』を何度強調すれば気が済むんだ? 慮外千万だぞ」

「ああ。確かに言われてみれば失礼だけど、正直な感想だぜ? ただそうだな。さすがのオレでも王子の前では言わないぞ? 王子のではな?」

「セルン、其方は──」

 と二人が言い合いになっているところ、なぜだかニタちゃんに期待の眼差しを向けられた。

「わぁああ、なになにー! まさかの三角関係?! さすがお姉ちゃん、羨ましいー!」

 え?! 三角関係だなんて、そんな……! 

 違う違う! というつもりで何度も首を横に振り、精一杯手も一緒に振った。

 それなのに、ニタちゃんは夢を見ているような表情で手を合わせた。

「あ~、王子様か~、素敵な婚約者か~。あ~、どうしよう~! 悩ましいよ~」

 そう呟いたニタちゃんの目は星よりも輝いてみえた。
 え、なに、私が見えない何かを見ているの?

 ニタちゃんの輝かしい瞳に気圧されていると、遠くから呼び声が聞こえてきた。

「やーいやーい。ここにいたやが? 楽しそーやっさー」

「ババー!」

 いつも通り、阿吽の呼吸でリット君とニタちゃんは老婆に駆け寄った。

 あ、昨日一緒に晩ご飯を食べたお婆さんだ! 名前は確か……ミアンさん、だったかな。

「ミアンさん、こんにちは」
 
 ニロがぺこりと挨拶をした。
 さすがニロ。相変わらず礼儀正しいわ。

「やーい、ニロとフェーやが? 綺麗な格好だからよー、一瞬誰かと思ったやい。ひゃひゃっと……そっちのお兄さんは?」

 とお婆さんはセルンに目を向けた。

「やあ、どうも。オレはセルンだ。よろしく」

 セルンの甘い笑顔をみて、お婆さんは驚いたような声を上げた。

「やーいやーい! これまたいい男やっさー! あんさんも付き人やが?」

「付き人? ああ、オレはお嬢の護衛だ」

「ハー! フェーはお嬢さんやったやがー?!」

 ぎょっとお婆さんが目を剥いた。

「あ、すまない。不要な心遣いをかけたくなかった故、余が勝手に嘘をついたのだ」

 ニロと共に私も頭を下げて謝った。

「やーいやーい! お嬢さんは宰相の客人やが! ワッチらこそ馴れ馴れしくして失礼したやっさー!」

「いやいや、やめてくれ、婆さん! うちのお嬢は身分とか気にしない人だから、まじで気軽に接してくれ」

 セルンは申し訳なさそうな顔でペコペコするお婆さんを止めてくれた。

「ふむ。その通りだ、ミアンさん。何と言っても我々は一緒に飯を食した仲だ。これからも普通に接したまえ」

 ニロに続いて私も頷くと、緊張が緩んだようにお婆さんは胸を撫で下ろした。

「そーがそーが……それなら安心やい! 昨日二人とも小汚い格好をしただわけさー、てっきり付き人やと思ったやっさー!」

 ほっとするお婆さんを見て、リット君は小首を傾げた。

「なーなー! ババ、フェー姉ぇはすげぇ人なのかー?」

「それはそーやい! お嬢さんは宰相の客人やい! それは相当の要人だわけさー!」

「すげぇ……じゃー本当に王妃になるんだー!」

「わぁあ! 王妃ー! 羨ましいよー、お姉ちゃん!」

 リット君とニタちゃんはすごいというような顔で口を開けた。

 え⁈ まだ婚約も解消できてないのに王妃だなんて……、とんでもない誤解だわ! 
 慌てて二人に手を振り、否定した。そして困る私を気遣ってニロが話題を変えてくれた。

「ミアンさん、この時間は仕事中ではないのか?」

「そーやい! やしが丁度昼休みだわけさー、あんさん達に昼食を届けてやろーと思ってきたやっさー。それでついでに、アットに餅米と蝋燭を持ってきたやっさー!」

 そう言ってお婆さんは手に持っている袋を軽く揺らしてみせた。

「我々の分まで?」
 
 ニロの顔に意外そうな感情がかすめてみえた。

「なーに、昨日は美味しいご飯を炊いてもらったからよー、それに孫達の面倒まで見てもらってるやい、このくらいは当たり前やっさー! あ、やしが、五人分しか持ってきてないやい……」

 遠慮がちなお婆さんをみて、セルンは「いいよいいよ」と手をふった。

「気にしないで、婆さん。オレはお嬢と一緒に食べるから、大丈夫だよ!」

「否。それには及ばない。ちょうど余も食欲がないゆえ、この分を其方に譲ろう、セルン。代わりに、余はフェーから少し摘めばよい」

「あ? いやいや、いいよ、ニロ。オレもそこまで腹減ってないから、お嬢と一緒に食べるよ」

 まあ、二人が譲り合うなんて、珍しいわ。
 お婆さんがいるから、喧嘩しないようにしているのかな?

「何を言っているのだ、セルン。先輩である其方に譲るのも余の仕事だ」

 とニロは葉っぱで包んだ料理を差し出すが、

「いや、何言ってんだはこっちのセリフ。後輩から飯を奪うほどオレも悪いやつじゃあないぜ? それより、さん付けから始めたらどう?」

 セルンは頑なに受け取ろうとせず、お互い笑顔で見つめあった。

 あれ、いい笑顔なのに、何気なく怖い……。
 2人の背中に雷でも走っているようだ。
 
「やーいやーい、それなら二人が半分っ子すればいいやっさー。お嬢さんは一人で食べー!」

 なんと素晴らしい提案だ! 

 仲睦まじく食べたら、二人はこのまま打ち解けるかも! 
 お婆さんの意見に賛同してコクコクうなずくと、二人に嫌そうな顔をされた。

「いな、それは結構だ」

「ああ、オレも遠慮しとく」
 
 えぇぇ、せっかく仲良くなれる機会なのに……。
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