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レード山林地帯開拓編
第36話 巨人迎撃①
「ほ、報告します! ジャイランドがレード山林地帯を越えました! フォルン領に接近中です!」
執務室に兵士が飛び込んでくる。
俺はその報告を目をつむって聞いている。とうとうこの日が来てしまった。
「至急センダイたちを集めろ! それとジャイランドを例の荒れ地におびき寄せろ!」
「はっ! あの、本当に我々は戦わなくてよろしいのでしょうか……?」
「構わん。あのジャイランド相手に、お前たちを無為に失うわけにはいかない」
「…………はいっ」
ジャイランド相手に一般兵は役に立たないどころか、むしろ足手まといになりかねない。
彼らとてムダに命を散らせたくはないだろう。死地に赴けなどと命令はできない。
兵士がドタドタと部屋を出て行ったあと、しばらくして皆が執務室へやってくる。
「ジャイランドを迎撃する。全員揃っているな」
「無論でございます。あの伝説の巨人を、フォルン領が討伐する……このセバスチャン、夢を見ているみたいですぞ!」
「夢だったらよかったんだけどな。それと討伐ではなくて迎撃だ。最悪、追い返せればいい」
残念ながらジャイランドがやって来ているのは現実である。
本当に夢だったらよかったのにな。
「ふむ。迎撃だと他領地に向かう可能性もあるのでは?」
「とりあえずフォルン領が無事ならよしとする。他領地なら他領地の人間が何とかするはずだ。そうに決まっている」
「無責任」
「……わかってるよ。ちゃんと倒すから、そんなゴミを見るような目はやめてくれ」
ラークからの視線が痛い。カーマとラークとの約束は憶えている。
俺がトドメを刺してジャイランドに勝利し、この国の最強魔法使いに君臨する。
俺は魔法使いではないので、ものすごい詐欺になってしまうが仕方なし。
「では行くぞ。ジャイランドを撃退する!」
俺の号令と共に全員が決められた通り動き始める。
セバスチャンは広報として、フォルン領がジャイランドを撃退すると色々な領地に広める。
俺とカーマとラーク、そしてセンダイにライナさんが転移で迎撃場所の荒れ地についていた。
ドグルさんは結局戦ってくれないそうだ……悲しい。
レード山林地帯のほうを見ると、遠くにゆっくりとこちらに歩いてくるジャイランド。
報告ではジャイランドの傍には、大量のドラゴンなどがついてきているらしい。
そいつらも倒す必要があるのか……さらに負担が増えてしまった。
「……さてと、残念ながら戦力はこれだけだ。正直な話、本当に勝てるのか? と思ってる」
「そこは必ず勝てると言うべきでござろう」
「一般兵相手ならともかく、この面子に気休めを言う意味はないだろ」
酒瓶を口に含むセンダイ。こんな状況でも普段通りに飄々としていて頼りになる。
「コロス……ミナゴロシ……恨みを晴らす……!」
すでに狂戦士モードのライナさんが、地面を踏み鳴らしてひび割れさせている。
すでに準備万端なようで助かるな。
「お兄さん……期待してるからね!」
「よろしく」
「いやいや。どちらかというとお前たちのが主力だからな!?」
カーマとラークと冗談をかわす。
……何というか、皆普段通りだな。手汗まみれの俺が一番緊張してるらしい。
「この戦いに勝ったら、欲しい物なんでも用意してやる!」
「酒を!」
「アイス!」
「ケーキ!」
「カネェェェェェ!!」
各自の要望が叫ばれ、ライナさんのド直球な要求に思わず苦笑する。
こんな話をしている間にジャイランドは、すぐそばまで寄って来ていた。
巨人が荒れ地に足を踏み入れた瞬間、俺は地雷の起爆スイッチを押した。
「ドゥオオオオオオオオ!」
右足の地面が爆発し、ジャイランドは悲鳴をあげる。効果はあったようで、奴は右足を宙に上げて苦しんでいる。
ダメージは……少し足の裏がこげただけのようだ。
「氷の大腕、悲劇を唄え」
「炎の鉄槌! 激怒を叫べ!」
五メートルほどの巨大な氷の腕が地面から生え、同じくらいのサイズの炎で構成された鉄槌が空に出現する。
氷の腕と炎の鉄槌はジャイランドへと襲い掛かる。だが氷の腕はジャイランドの足もとにいるドラゴンたちに身をていして防がれる。
炎の鉄槌のほうも、ジャイランドの腕の振り払いでかき消される。
「うそっ!?」
「……計算外」
まじかよ。炎の鉄槌が簡単に防がれた上に、氷の腕は周りのドラゴンのせいで届きすらしない。
……周囲のドラゴンはジャイランドを守っているのか!?
ジャイランドから先行するように、ドラゴンの群れが俺たちに向かってくる。
幸いにも翼を持っていないので、飛んで襲ってはこないが……これはマズイ。
「アァァァァァァ!」
「少しばかりマズイでござるな……ここは拙者が」
ライナさんが空に咆哮。センダイが剣を鞘から抜き、ドラゴンの群れを迎撃するために前に出る。
俺も地雷を起動し、数体のドラゴンを吹き飛ばす。くそっ、対ジャイランド用の地雷なのに!
センダイやライナさんも次々とドラゴンを倒していくが……数が多すぎる。
最低でも三十体以上いる。こいつらに火力を使うと、ジャイランドへの余力がなくなってしまう!
だが何もしなければ、ライナさんやセンダイが囲まれて殺されてしまう。
「くそっ! ジャイランド用の大砲だがやむをえないか!」
大砲を【異世界ショップ】から購入し、目の前へ出現させてドラゴンの群れへと向ける。
「ダメでござる! ジャイランドへの手を使っては!」
俺の様子に気づいたセンダイが、戦いながらこちらに向けて警告してくる。
センダイの言葉はわかる。先ほどの炎の鉄槌を防いだことからも、ジャイランドは恐ろしい耐久力を持っている。
火力担当である俺達の力を全て投入し、倒せるかという相手だ。
「お兄さん! どうする!? センダイさんたちの援護!? ジャイランド!?」
「くっ…………」
カーマから次の行動を急かされながら、周囲の状況を確認する。
ジャイランドは少し後方で、俺達を警戒してか立ち止まっている。
センダイとライナさんは少しずつドラゴンに囲まれ始めている。
それにライナさんの右腕が動いていない。折れてしまっているのだろうか。
放置していたらやられてしまう! くそ、完全に後手に回っている……!
「ドラゴンを先に倒す! ジャイランドはその後だ!」
二人に指示を出して、ドラゴンの群れに向けて大砲の照準をつける。
ここで力を浪費してしまってはジャイランドを倒せるか怪しい。そう思いながらも、彼らを放置はできない。
意を決して撃とうとした瞬間。
「センダイ隊長の支援に入れ!」
後ろからそんな叫び声と共に、大勢の足音が聞こえる。
振り向くとフォルン領の兵士たちが、七色の槍を持ってドラゴンの群れに向かって行くのが見えた。
なっ!? なんで兵士たちがここに!? フォルン領で待機を命じたはず……!?
そんな俺の様子を察したのか、兵士の一人が俺の元へやって来て。
「命令を無視し、申し訳ありません! 後でいかなる処罰も受けます! これよりフォルン領兵士一同、アトラス様を援護いたします!」
「領主や隊長が戦ってるのに、見てるだけなんて御免ですぜ!」
「俺ら、これでも命張る覚悟はあります!」
兵士たちの叫びが聞こえる。
だが彼らではドラゴンにすら歯が立たない! 犬死になってしまう!
だが俺の懸念を兵士たちは吹き飛ばしていた。
兵士たちの七色の槍がドラゴンの手足を、首を跳ね飛ばしていく。
バカな!? フォルン領の兵士があんなに強いわけがないぞ!? 偽物か!?
フォルン領兵士? は七色の槍で、ドラゴンの身体をバターのように切り裂いていく。
ん? 七色の槍……まさか!?
「報告します! セサル様から伝言です! ミーは天才さ! 竜殺しの槍、求められたから作ったサッ! とのことです!」
「セサル!? あいつ何してんの!?」
「わかりません! 竜の鱗に対してのみ、極めて有効な刃を魔法で作ったと! 竜以外にはまともに刺さらないとのこと!」
竜殺しの槍だと? そんな槍があるならば、確かに兵士たちがドラゴンを倒しているのにも納得ができる。
そんな中で一体のドラゴンが兵士たちを突破して、俺達に向かってくる。
「防壁!」
バズーカを構えて迎撃しようとすると、ドラゴンの目の前に光の壁が出現した。
奴は壁にぶち当たって足が止まり、その隙に兵士に槍を突かれて絶命する。
叫び声のほうに目を向けると、ぽっちゃり気味の男が杖を構えていた。
……どこかで見覚えがあるような男は、俺達にドヤ顔を向けてくる。
「待たせたなっ! 切り札は最後にやってくるものだっ!」
「「「……どなた?」」」
俺とラークとカーマは声を揃えて尋ねる。
男は地団太を踏み鳴らした後に、大きく口を開いて。
「私だっ! 元カール領との戦いでお前を苦しめた、魔法使いのっ!」
「ああ……あの人かぁ」
「思い出した! 俺に瞬殺された魔法使いじゃないか! よく来たな! いないよりマシだ!」
「……誰?」
「ぐぎぎ……! この私を忘れるとは!」
元カール領との戦いで捕縛して、最終的に王都に引き渡した魔法使いか! そういやいたな!
ラークは元カール領との戦いにいなかったので、今も首をかしげている。
何故か分からないが援護に来てくれたらしい。腐っている魔法使いだ、一人力くらいにはなる!
「アトラス殿!」
「アァァァァァ!」
センダイとライナさんが俺達の元へ戻ってくる。
兵士たちのおかげでドラゴンの包囲から抜けられたようだ。
「好機でござる! 今の間にジャイランドを!」
「わかっている!」
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