【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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イレイザー最終決戦編

第200話 地獄の消耗戦

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 イレイザーに対して魔法と戦艦の砲撃が絶え間なく撃たれ続ける。

 やつは障壁の色を桃と白に点滅させて、魔法と物理の両方無効障壁にし続けてそれを防ぐ。

 だが障壁を点滅させることによって、身動きが取れなくなっている。

 つまりこれは消耗戦だ。イレイザーは人間の精神的な何かを吸わないと、障壁がいずれ維持できなくなる。

 対して俺達は魔法使いの魔力が減っていくので、互いに消耗しあって……。

「おーっほっほっほ! これくらいならいくらでも撃ち続けられますわよぉ!」

 うわきつBBAが身体を空に浮かせて、ひたすらうわきつBBAの女神像をイレイザーに落としまくっている。

 かなり調子に乗っているがだいぶ魔力に余裕があるのだろう。

 もうあいつひとりでいいんじゃないかな状態なので、カーマやラークたちはすでに船内に戻っている。

 彼女らは魔力回復のために睡眠をとってるのだ。

 こうして休憩して交替していけばこちらは魔力回復もできる。

 戦艦砲撃の弾はフォルン領通貨で【異世界ショップ】購入。

 つまり無限なのでまったく心配していない。船員たちも交代で休ませて戦えば、文字通り永遠に戦えるぞ!

 だがこれは勝ったのでは? とは思うまい。

 だってそれでさっき、イレイザーが物理無効障壁なんて張ってきたし……。

 俺だって学習するんだよ! フラグは立てないようにする!

 そう思っていたら俺の乗っている船が大きく揺れ出した。

 甲板に立っていた俺も少し揺らめいてしまう。

「おっとっと……なんだ? 少し大きな波でも発生したか?」

 俺の横で微動だにせず立っているセンダイに尋ねる。

 ……なんでこいついつも酔っぱらってフラフラなのに、船の揺れに対して全く足をとられないんだ。

 あれか? 酔っ払いの揺れと船の揺れが合わさって中和でもされてるのか?

「イレイザーを中心として波が起きているでござるな」

 センダイの言う通り、イレイザーから少し高い波が発生していた。

 それが戦艦の艦底部分に当たって船も揺れていると。

 でもイレイザーは障壁を張るため身動きがとれていない。

 波をどうやって発生させているのだろうか。

「なるほど。物理無効障壁の出現時に僅かな衝撃波が発生している。それに指向性を持たせて波を出している。魔法無効障壁と物理無効障壁に切り替え続けながらなら合理的だ」

 セサルが感心したように呟いた。

 まあこの程度の攻撃で戦艦が沈むとは思えない。

 ……いや待て、今の波なら大丈夫だがもっと大きくなったらヤバイのでは?

「セサル、その衝撃ってもっと大きくなったりする?」
「いや無理だろう。流石に障壁発生時の衝撃波は強くならない。障壁の力がいくら増しても一定のはず」

 それなら安心だ。つまりイレイザーのやってることは破れかぶれか。

 もう奴を手の打ちようのない状態に追い詰めた。

 少しだけそう思ってしまった……なんかすごく嫌な予感がしてきたぞ。

 そんな嫌な予感は的中するようで、青い顔をした船員が船内から甲板に急いで出てきた。

「うおおおおええええぇぇぇぇ!」

 そしてそのまま海に吐きだした。

 いやひとりだけではない、さらに続いて何人も甲板に出て来ては戻し始める。

「……あれ? もしかしてこの揺れ攻撃、結構効果的だったりする……?」
「……うちの船に不慣れな者たち相手なら、下手な攻撃より効果的かもでござるな」

 他の戦艦の甲板にも視線を向けると、同じように船員が戻し始めている。

 いかん、これでは本当の意味で地獄の消耗戦になるぞ!?

 しかもダメージを受けているのは船員だけではない。

 船に乗っているフォルン領の魔法部隊たちも、みんな真っ青な顔でもうお陀仏状態だ!

 ……まああいつらは別にいいか。どうせ電池切れてるし、そもそも切れてなくても使い道ないし。

 対してベフォメットの船の乗員や魔法使いたちはわりとマシな顔だ。

 たぶん海兵を連れてきたんだろうなぁ……いいなぁ、うらやましいなぁ。

「おーっほっほ! おーっほっほ! おーっほっほっほっほっほ!」

 うわきつBBAは空中に浮いて高笑いしている。

 空飛んでいれば波など関係ないのでひたすら魔法を撃っている。

 いやはや……やっぱり陸兵を海で使うべきじゃないな!

 しかしどうしよう、もう酔い止め薬は事前に渡しているが……。

 これで全員船酔いで航行不能なんてなったら目も当てられんぞ……。

 そんなことを心配していると、センダイが大きく息を吸った。

「何をやっているでござる! お主らはあの地獄の訓練を忘れたか! 我らフォルン領兵士、酔っても戦えるように鍛えたはず! 吐きながらでも戦えと!」

 それは酔うの意味が違うのではなかろうか。

 だが船員たちはセンダイの言葉が心にしみてしまったようで。

「た、確かにそうだ……! 俺達は酔いと友達だったはずだ!」
「今こそ戦うべきだ! ここでやらなきゃ俺らただのただ酒飲みだぜ!」

 甲板に出ていた兵士たちは、青い顔しながら使命感に駆られている。

 俺からすれば普通にただ酒飲みだと思うのだが……なんか彼らの中で謎の誇りがあったようだ。

「行くでござる! どんな状態でも戦いを放棄すれば死! その訓練はこの時のためにあった! 酒を飲みまくるのもこんな時のため!」

 センダイの号令に従って、兵士たちが船内に戻っていく。

 ……船内が地獄になりそうなんだけど考えないようにしよう。 

 そんなことを考えていると、カーマとラークが甲板に出てきた。

 二人ともすごく嫌そうな顔をしている。

「どうした? もう魔力回復したのか?」
「まだだけど……」
「すごく嫌な予感がした」

 すごい危機察知能力だ。俺も見習いたい。

 二人とも魔力切れでしんどそうな上に、船酔いもしているようで完全にグロッキーだ。

「とりあえず甲板で寝たらどうだ? 魔力回復するまで」
「う、うん……」

 俺が床に敷くビニールシートを渡すと、彼女らはそれを下にひいて眠り始めた。

 ……海軍ってすごく重要だなぁ。次に海戦挑む時は船で戦えるように船員鍛えないと……。

「おーっほっほ! おーっほっほ! おー……ごっほごっほ」

 高笑いし過ぎて声が枯れてきているうわきつ女王を見つつ、イレイザーが早く力尽きるのを祈るのだった。
 
 そうして三時間ほど経った後に、イレイザーを包み込む障壁が消え去った。
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