【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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イレイザー最終決戦編

第201話 勝利のカギは……

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 イレイザーを守って来た障壁が消えた。

 これでもう奴は俺達の攻撃を防げない! つまり倒せる!

「総員! 一斉に砲撃を……」

 そう叫ぼうとした瞬間、イレイザーが空に向けて咆哮した。

「ルオオオオオオオォォォォォォ!」

 それと共に俺の……いやここにいる全ての人間から謎の桃色の煙が出だした。

 その煙はイレイザーに吸い込まれていき……身体が妙にしんどくなってきた。

「なんだ!? セサル!」
「これは……イレイザーが人の意思を吸い取る吸引力を上げている! ここにいる人間全部、廃人にするつもりだ!」
「そんなのできるのか!?」
「できてるんだからできてるんだよ!」

 そりゃそうなんだけども! そんなのできるなんて聞いてないぞ!?

 周囲の人間から多少吸うくらいしか……いやこれやばくない?

 俺は自分の身体から流れていく

「セサル! 何とかこの煙止められないのか!?」
「吸い込まれる前に倒すしかない!」

 セサルと俺がそんなやり取りをしている間に、うちの軍にも被害が出始めている。

「アトラス殿! レスタンブルク国魔法部隊、再び全滅でござる! 気絶しもうした!」
「あいつらまたかよ!? もう常時全滅でいい! どうせ戦力にならないんだから!」

 なにがレスタンブルク国魔法部隊か! あほう部隊の間違いだろう!

「撃て撃て! 一斉砲撃!」

 だが命令を拡声器で周囲に響かせるが、艦隊からの砲撃もだいぶ少なくなっている。

 あの煙のせいで船員の動きが明らかに悪くなっていた。

 まずい……このままだと最悪逃がすのでは……。

 そう思っていた矢先、イレイザーに向けてすごく大きなドス黒い煙が向かって行く。

 なんておぞましい色だ、見ているだけで吐き気がしてくるかのようだ。

 その煙の元は……レザイ領民の乗った船か! すごく納得できてしまう!

 その煙もイレイザーに飲み込まれた瞬間。

「ルオオオオオオオォォォォォォォォォォ!?!?!?!?!?!?」

 イレイザーは悲痛な叫びをあげて、海面をのたうち回り始めた。

 それと同時に俺達から流れる煙も消える。

「なんだ!? なにがどうなっている!? もう何もかもわからないんだが!?」

 意味わからな過ぎて解説員セサルに視線を向けると、彼は少し考え込んだ後に手をポンと叩いた。

「そうか! レザイ領民はカスだからだ!」
「そんな天下万民が知ってる情報がどうした! 世界の常識だろうが!」
「違う! この場合のカスは絞りカスというか……レザイ領民は以前からイレイザーに意思を吸われ続けてきた! つまりもう廃棄物なんだよ! 自ら出した廃棄物を、更に吸い上げた結果だ!」

 ……うっわ。つまりイレイザーは自分の廃棄物を吸って苦しんでいると。

 …………いいぞレザイ領民! お前らが存在してよかったと、生まれて初めて思ったぞ! 

 お前らにお似合いの役目だぞ! 酷いこと言ってる自覚はあるが、今までにされた仕打ちを考えればいいだろ!

「よし勝機! 全員一斉攻撃だ!」

 のたうち回るイレイザーに向けて戦艦たちの砲撃が浴びせられ、今度はやつに直撃を食らわせている。

 更にうわキツBBAの像なども当たっているのだが……思ったよりも効いていない。

 どうやら障壁が消えても身体は丈夫なようだ。

 先ほどまで甲板で休んでいたカーマたちもまた空から魔法を撃ち続けているが、イレイザーは苦しんでのたうちまわっている。

 ……攻撃に苦しんでいるのか、レザイ領民の意思がきついのか分からんな。

 そんなことを考えているとカーマが俺の横に降りてきた。

 どうしたのだろうか、また魔力切れか?

「ねえねえ、ちょっと思いついたことがあるんだけど」
「なに? イレイザーの弱点でも見つけたか?」
「そういうわけじゃないんだけどね。あのイレイザーすごく硬いから、普通の魔法攻撃じゃ効果が薄いと思うんだ」

 確かにカーマの言う通りである。

 障壁を破ってなおイレイザーの身体は頑強であった。物理攻撃も魔法攻撃も、致命傷を与えられているとは思えない。

「言っておくけど俺のタンカー落としも微妙だと思うぞ。質量攻撃ならうわきつBBAが散々やってるし……てかここでやると津波がやばい」

 俺の実質最大火力に近いタンカー落としは、海という戦場のせいで使用不可能だ。

 俺は波の専門家じゃないからわからないが、大質量が海に落ちたら津波起きそうだしなぁ……。

 ちなみにうわきつBBAの女神像はイレイザーに当たったら消えている。

 津波を心配して海に入る前に消しているのだろう。

「そうじゃなくてね……すごく遺憾なんだけど……ボクさ、転移魔法使えるじゃない?」
「違うだろ、あれは種も仕掛けもない人体断切マジックだろ」

 カーマの転移魔法、それは送りたい対象の身体の半分だけを転送する出来損ない魔法だ。

 もちろん身体の半分だけ送られるので転移対象は死ぬ。

 正直なところ、俺は最凶最悪の攻撃魔法だと思う……ま、まさか……。

「イレイザーをボクの転移魔法で送れば死ぬんじゃない?」

 確かにカーマの言うことは間違ってない気がする。

 今のあいつは魔法障壁も貼れないので、カーマの転移魔法から防御する術がない。

 いや転移魔法って防御するものなのか怪しいけど……。

 だがちょっとなんかこう……。

「それがトドメでいいのだろうか……たぶん俺の人生最大の強敵だろあれ」
「妙なところ気にしないでよ。ボク、戦闘の時に毎回活躍出来てなかったし……こんな時くらいね? いいでしょ?」

 カーマは俺に両手で拝んでお願いして来る。

 ……確かにこいつは戦闘時はだいたい不遇だった。

 攻撃時に敵の被害の拡大を避けるために炎を使わせなかったため、カーマは毎回縛りプレイしてるようなものだった。

 結果として戦闘でも政治でもラークのほうが優秀、そうフォルン領民にも見られている。

 確かに政治では転移魔法を使えるラークのほうが役に立つ。

 だが本来ならば戦闘ではカーマのほうが有用なはずなのだ。

 火とは敵の被害を簡単に拡大させられるのだから。彼女が本気で魔法を撃てば、攻撃対象を火の海にできる。

 それを毎回禁止したのは俺だし……ここぞの場面でくらい活躍させるべきだろう。

「よし! じゃあカーマ! 地上にイレイザーを転送しろ! ラークは転送先に俺を送ってくれ! エフィルンはイレイザーの動きを止めろ!」
「「わかった」」

 俺の指示にカーマが甲板から飛び立ち、空を飛んでいるラークとエフィルンも返事をする。

 さあラストアタックだ! 無駄に耐久があってゲームなら嫌がられるタイプのラスボスめ!

 そろそろ本当に終わりにしようぜ!
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