借金まみれの貴族ですが魔物を使ってチート内政します!

クロン

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都市アルダを復活せよ!

第9話 ユニコーン! 死の海を浄化せよ!

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「俺がアルダ領主ライジュールだ! お前たちは俺の言葉に従って忠義を尽くせ! その対価に希望を与えよう! 死の海を蘇らせる!」

 バルガスを倒した後、広場に集まってる領民たちに宣言した。

「やれやれ……世間知らずの嬢ちゃんだ……」
「前領主様がどれだけ手を尽くしたと思ってるんだ。アダムス教の大神官様や有名な薬師を呼んでもムダだった。もう何も打つ手なんてないんだよ」
「この港は滅ぶんだよ! 若い衆は皆出ていっちまった! 残ったのは故郷から離れられない死にぞこないだけだ!」

 だが彼らはため息をつくばかりで欠片も信じていない。

 まさに夢も希望もない捨て鉢だ。

 都市アルダの住民の生きる希望は、死の海によって溶かされてしまった。

 実際彼らが諦めるのも無理はない。海の浄化など人の力で行うのは不可能。

 だが……伝説の魔物すら召喚できる俺ならば可能だ。

 ここであっさりそれを見せつけてもよいのだが……せっかくなので領民たちを手駒にさせてもらおうか。

「何も打つ手がない? それは親父が出来なかっただけだろ。俺には手がある」
「はん。口先だけなら何でも言えるよ。やれるもんならやってみろ、どうせムダだから俺らは手伝いもしないぞ」
「そうか。なら俺がこの死の海を浄化したら領主と認めるか? 忠誠を尽くすか?」

 捨て鉢の領民たちを焚きつける。

 今の状態の彼らならばこんな売り言葉には……。

「こんな海どうなって綺麗にするってんだ、無理に決まってんだろ……海を元に戻せるってんなら忠誠でも何でも尽くしてやるよ」

 見事に買い言葉で答えてくれた。

 これで言質をとったので領民たちは俺の駒として働いてくれるだろう。

 目的は達したのでさっさと海を浄化するとしよう。

「ならついてこい。今から奇跡を見せてやる」

 俺は広場から海に向かって歩き出した。

「お、おい……どうするよ」
「はん、ガキがイキってるだけだ。何もできなくて無様さらすのを酒の肴にしてやる」
「いっそ偉そうにしたんだからと、晩の相手をさせるのはどうだ? 見た目は間違いなくいいんだし男でもかまわん」

 振り返るな! 最後の言葉を発した奴の顔が忘れられなくなるぞ!

 背筋をゾっとさせながらしばらく無人街を歩く。

 ……本当にこの街は無惨となった。誰も住んでなくてボロボロの家や店。

 埃をかぶった出店、土が積もった道……だが逆に言えば少し掃除や修理をするだけで人の住む場所やインフラを整えられる。

 死の海さえ何とかなれば、都市アルダはすぐに蘇る土壌があるのだ。

 そうして海岸へと到着した。

 砂浜の一部は死の海を吸って赤く染まっていて不気味である。

 振り返ると領民たちは全員ついてきていた。やはり彼らも諦めきれないのだろう。

 心の中で葛藤があるのだ。もしかつての青いきれいな海を、盛況だった都市アルダを取り戻せるならと。

「古の契約を遵守せよ。我が血と言葉を以て応ぜよ。求めるは清純たる獣、一角をもつ穢れなき命……」

 紅い砂浜に魔法陣が描かれて、そこから召喚されたのは純白の馬。

 額に一本の長い角を持った駿馬にして伝説の存在――ユニコーン。

「な、なんだ……っ!? ペガサス様かっ!?」
「違う! 翼がない……だが何か神々しさを感じるような……」

 領民たちもユニコーンを見て感嘆の意を表している。

 俺もその姿には少し圧倒されていた。

 なんというかすごく聖属性というか……はっきり言って魔物のジャンルの類にするのは失礼にあたる。

 神様とかそちらの方のカテゴリ……そう思ってしまう。

 そんなユニコーンは死の海に顔を向けた。

「この海を浄化すればよいのだな?」
「「「「しゃ、しゃべった!?」」」」

 領民たちが驚きの声をあげる。

 どうやらユニコーンは喋れるようだ。すごいな……伝説の獣は伊達ではないか。

「その通りです。どうかこの死の海をお清めください」
「よいだろう。そこの少女、我が背に乗れ」

 ユニコーンはサーニャに顔を向けて呟くと、背を低くするためしゃがみこんだ。

 困惑しながらも彼女が背に乗ったのを確認すると、ユニコーンは立ち上がって海へとゆっくり歩いていく。

 その歩みで踏まれた砂浜は、血のような赤色が土色に変わっていく。

 ……すごく神聖な光景だが、本当にユニコーンって処女が好きなんだなぁ。

 サーニャは何で自分が乗せられているのか困惑しているが、理由は黙っておくことにしよう。

「竜の血で穢れたか。くだらぬな」

 ユニコーンが死の海に頭の角をいれた。

 その瞬間に海全体が発光し始めて、血の色が消えて青が戻っていく。

 そして光が消えた後……目の前に広がるのはもはや死の海ではなかった。

「……も、戻って来た。俺達の海が……戻って来たぁ!」
「ワシは夢でも見ているのか!? おいちょっとお前のハゲ頭を叩かせろ!」
「自分の頬でもつねってろ! 夢でも何でもいい! 海だ! また漁に出れる! あの華々しい海洋都市が蘇るんだ!」

 テンション上がり切った領民たちは、海へと向かって走り出した。

 みんな涙を流しながら服を脱ぎ捨て、勢いよく青き水面に飛びこんだ!

「おい。止めなくていいのか?」
 
 感慨深くそれを見ていると、ユニコーンがそんなことを告げてくる。

「なんで止める必要が? そりゃ感傷と海にひたりたくもなるだろ」

 十年前は赤子だったので、俺はそこまでこの海を覚えていない。

 だが今ここにいる者たちは海と共に生きた奴らだ。

「何故って……我は海を浄化したが、集まって来た魔物はそのままだぞ」
「ぎゃーサメだぁ!?」
「魚人が出たぞぉ!?」
「大クラゲだぁ!?」
「それ先に言えよ!? 撤退撤退! お前らすぐ海から上がれえぇ!」

 か、完全に忘れてた……まだ海には魔物がいっぱいいるんだった……。

 ま、まあこの問題は何とかなるだろ。俺も魔物を扱えるのだからなっ!

 それとだ、俺がユニコーンを呼んだ理由はもうひとつある。

「あー、それともうひとつお願いがあるのですが」
「わかっておる。この背中の少女のことだろう」

 ユニコーンも察してくれたようで、角が輝きだしてサーニャの身体が光に包まれた。

 この白き聖なる獣には浄化の他に、毒などの癒しの力も持っている。

 サーニャが喋れないことも治せるのはと期待していた。

「もう喋れるはずだ。言葉を発してみよ、幼子」

 サーニャはすごく不安そうな顔をしながら、小さく口を開けて……。

「……あ、あ……」
 
 恐る恐る言葉を発した。発せたのだ。

「しゃ、べ、れる。しゃべ、れる!」
「まだ喉が強張っておるが直に流暢に話せるだろう」
「ありがと、う、ございます!」
「礼ならこの男だが女だかに言え。我は呼ばれただけのこと」

 サーニャはユニコーンの背から飛び降りて、俺に抱き着いてきた。

「ありがと! ライ!」

 どうやら今日は湿っぽい日だ。どれだけ塩を含んだ水が流れたのやら。

 だが……新たな門出とする前に、全部流してしまうのがよいのかもな。

 そうして海復活の宴が開催されて、領民たちは死ぬほど笑って踊っていた。

「貴様近づくな! この穢れた女が!」
「黙れ処女厨! 何が清き馬よ! 処女なんてだいたい幼いんだからあんたの性欲対象は幼女よ、このロリコン!」

 なお宴でユニコーンとサキュバスが大喧嘩をしていた。

 処女厨とビッチ……どう考えても相性最悪だ。まさに水と油……。
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