借金まみれの貴族ですが魔物を使ってチート内政します!

クロン

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決戦! グモブ公爵!

第29話 グモブ公爵の切り札

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「止まれ! 貴様ら、誰の許可を得て好きに歩いている!」

 港町ダーシュを闊歩していた俺達の前に、豪華な服を着たおっさんと壮年の男が割って入ってきた。

 おっさんは服装などから考えてもグモブ公爵だろう。顔を真っ赤にして激怒している。

 壮年の男はよくわからないが護衛だろう。何故か腰に剣の鞘があるのに、それとは別に鞘に入った大剣を小脇に抱えていた。

「誰の許可って……アダムス教だけど? 都市アルダを汚染させた犯人の町だから認められて反撃してるだけだが?」
「ふざけるな! ここはこのグモブ公爵の領地だぞ! そんな言い訳は通さぬ!」
「え? じゃあここの領地はアダムス教会に逆らうってことでOK? 今の言葉をしっかり伝えておくよ」
「ま、待て! アダムス教会に逆らうつもりはない!」

 俺の言葉にグモブ公爵は歯ぎしりする。 

 公爵だろうが国王だろうがアダムス教会には迂闊に逆らえない。

 強すぎる権力とは考え物ではあるが、味方にすればこんなに頼もしいものはないな!

「じゃあどけよ。それとあんたは捕縛する」
「ふざけるな! ドラゴンが落ちたのはワシらのせいというのは濡れ衣だ! それは貴様がアダムス教会を騙しているだけ! だからワシらはお前たちを成敗して、真実を明るみにせねばならぬ!」

 ……はぁ? この期に及んでグモブ公爵は何を言っているのだろうか?

 アダムス教会は正式に俺達が正しいと認めている。それは正しい調査をして結論づけたものだ。

 それを俺達に騙されているというのは、アダムス教会は嘘も見抜けない無能であると宣言したに等しい。

「おやおや。海に落ちたドラゴンにグモブ公爵家の家紋のついた豪華な剣が刺さっていて、全く関係がないと言い張ると?」
「そうだ! その刺さっていた大剣は盗まれた物で、私に罪をなすりつけるために!」
「誰も大剣なんて言ってないんだけどなぁ? それにそんな豪華な剣が盗まれたら、普通は国に報告するはずだが?」

 家紋のついた大事な剣が盗まれたら国などに報告しておく。

 それは当たり前のことだ。そうしないと暗殺などに使われて罪をなすりつけられてしまうためである。

 もちろん報告したからと言って、仮にその剣が使われた暗殺事件が起きたら容疑者にはなるわけだが。

 でも事前に報告していなかったら犯人と判断されてしまう。

 そのような重要な剣が盗まれたのを何故黙っていたのかと。何か隠しているに違いないと。

 ……そもそも家紋のついた剣で暗殺するなんて、罪をその家に押し付けるくらいでしか使わないと思うけどな!

 でもこの世界ではそういうルールなんだ。家紋つきの道具は地球で言うと印鑑以上に本人証明になるものだから。

「ええい黙れ! ヴァーダル、こいつらを斬れ!」
「へいへい。やっとですかい」

 グモブ公爵に控えていた壮年の男が前に出てくる。

 そいつは無精ひげを生やしながら、鼻歌交じりに腰につけた鞘からロングソードをひきぬく。

 そして元々小脇に抱えていたの大剣は地面に丁寧に置いた。

 構えはだらしがないが……すごく強そうな感じがする。

「どうも、ヴァーダルっていうしがない傭兵です」
「しがない傭兵なら帰れよ。今なら見逃してやるぞ」
「いやあ傭兵は信用が売りの商売なんで。ただ多少は自慢できることもあるんですよ。人間やドラゴン殺すのが得意で」

 ヴァーダルは獰猛な笑みで俺達を見続ける。

 ドラゴン殺すのが得意……暗に都市アルダに落ちたドラゴンは自分が殺害したと言っているのだろう。

「さてと……じゃあちょっくら遊ばせてもらいますか」

 ヴァーダルはゴーレムの元へと走って接近する。

 対してゴーレムは迎撃のパンチを繰り出すが簡単に回避。

 そしてそのまま奴はゴーレムの右腕を剣で切り裂いた。

 ごとりと岩の腕が地面に落ちる。

「なっ……!?」

 バカな!? 岩の腕をただの剣で斬り落とした!?

 普通はゴーレム相手なら鉄のハンマーとかで叩き割るものだぞ!? それを肉を切り裂くようにスパッとやりやがった!?

「あー……やっぱり普通の剣で大岩を斬るようなもんじゃねぇな。刃が欠けちまった」

 ヴァーダルは剣の刃を見てボヤいた後、チラッとグモブ公爵を見る。

「あー、これだとそのうち剣が使えなくなるなー。並みの剣じゃ勝てないなー」
「ええい、やかましい! わかった、我が公爵家の剣の使用を許可する!」
「あざっす! いやぁこれ使わせてもらうの、それこそ十年振りだなぁ」

 ヴァーダルは先ほど地面に置いた大剣を手に取って鞘から引き抜いた。

 その剣は……ドラゴンに刺さっていたものと同じだった。

「さてと……魔物ども。ドラゴンを一振りで殺す剣を味わっていきな。お代は血と命で結構だ」
「むう。あの剣、それなりに上物じゃな。あ奴の技量があればドラゴンを一太刀で殺せるのも過言ではない」

 ドワーフのブロックが嫌なお墨付きをくれた。 

 つまり俺達の目の前にいるのは、ドラゴンを瞬殺できる剣士ということだ。

 対して我が軍はゴーレム三体、ペガサス八頭、ドワーフ四人、レイスにケルベロスに。

 後は魔女とサトリにユニコーン……ドラゴンを相手に無双できそうな者はいない。

 かろうじて魔女がワンチャンくらいだろうか? 

 どちらにしてもこの剣士を相手取るには犠牲が出てしまう。

 だが……俺達には切り札がいる。

 このドラゴン殺しに圧勝するために用意した、正真正銘のとっておきが。

「デュラハン先生! お願いします!」

 全身をフードつきマントで隠しているデュラハンが前に出た。

 それを見てヴァーダルは腹を抱えて笑い出す。

「おいおい! これだけ魔物がいるのに見ずぼらしい人間が俺の相手!? ……やめてくれよ、せっかく魔物を大量に斬れるってのに……人は後で都市アルダでいくらでも斬れるからなぁ!」
「いやいや、こいつは正真正銘の魔物だぞ? だが……」

 デュラハンはマントを脱ぎ捨てる。

 そこにあるのは黄金の輝きを放った鎧だった。

 更にデュラハンが腰から引き抜いた剣の柄も黄金でできている。

「その見ずぼらしい剣で斬れるかな?」
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