31 / 31
決戦! グモブ公爵!
最終話 魔物の都市へようこそ!
しおりを挟むグモブ公爵を成敗してから二年が経った。
奴は色々と非道なことをするので有名だったのもあって、それを成敗した俺達は国中から英雄だともてはやされた。
都市アルダがドラゴンの呪いから救われたことも、その英雄譚と共に加速度的に広まっていく。
結果として今のうちはドラゴンが落ちるよりも人口が増えている。
しかも公爵家の領地も全て奪ったので、今のアルダ家は全盛期の記録を更新中だ。
「はっはっは! 笑いが止まらんなぁ! もう向かうところ敵なしだ!」
「ライ、調子乗り過ぎ」
俺は屋敷の私室で豪華な椅子に座って、無駄に高いワインを飲んで豪遊している。
横にはドレス姿のサーニャ。彼女とは先日結婚したのだ。
元々義理の妹だったので生物学上も問題はない! 倫理的にもセーフだろう!
公爵を倒して右手うちわ状態なので、我が道を好きに生きることに決めたのだ。
「ところでライ。ドラゴンさんがもっとお酒欲しいって」
「……どんだけ食うんだあいつは!?」
都市アルダは超金持ちになった結果、今までは食費の関係で養えなかった魔物も召喚している。
ドラゴンも一頭だけだが呼んでしまった。空を飛べるので航空便として使える上に、戦争時には超強力なコマとなるからな。
それにドラゴンってすごくロマンあるからつい……。
まあ呼び出したドラゴンがものすごくがめつくて、人間よりもかなり経済に詳しいのは驚いたが。
しかも契約に超うるさい。なんか以前に他の人間に仕えていたことがあって、その時と比べて待遇が悪いだとか言ってくる……。
なんか以前はドラゴン専用の厩舎をいくつもあったとか、毎月一度は酒飲み放題があったとか……どんなVIPだそれは。
「それとデュラハンさんがまた伝説の鎧が欲しいって。もう普通の鎧じゃ満足できないの」
デュラハンはグモブ公爵の切り札、竜殺しのヴァーダルを殺した英雄として祭り上げられた。
だがその時に使った鎧や剣は倉庫にしまっている。
理由は簡単だ、普段から使っていると劣化していくからである。
ここぞの時に使い物にならないと困るので、普段はしっかりと手入れだけして封印しているのだが……デュラハンはすごい鎧に心を奪われてしまった。
あいつからすれば伝説の鎧は、世界トップクラスの豪邸のようなものだからな。
「大金を得た成金が生活基準落とせなくなったやつだな」
「どうするの?」
「放っておけ、いつか慣れる」
あの鎧レベルのものはそうそう作れない。
あれだってドラゴンの骨や鱗を大量に使って製造した逸品だ。
そんな物を何度も要求されても困るので、デュラハンにはあの鎧の存在を忘れてもらおう。
他にもすごい魔物は大勢呼んだ。海のチート魔物であるリヴァイアサン、神に近い獣である麒麟など。
今の都市アルダは空にドラゴン、海にリヴァイアサン、陸に麒麟という最強態勢だ。
もううちにちょっかいをかけてくる奴はいない。
迂闊に手を出して来たら完膚なきまでに粉砕すると宣言してるしな。
「それとアダムス教会がペガサス様を一頭、譲り受けられないかって言ってるよ」
「……ちゃんと環境を整えるなら献上するって言っておいて」
それでもアダムス教会には頭が上がらないままだが。
あそこは大陸中に強い影響を持つからなあ……。
残念ながら全て思い通りにとはいかないが、大抵のことは望むように進められる。
もう俺に怖いものは魔物しかいない!
魔物? あいつらは未だに俺の思うようにならないよ……今日も魔女が新鮮な人間が数体欲しいとか言ってきたよ。どうしろと。
「他の魔物の要求も全部言うね。ドワーフが超高級なお酒いっぱい、ケルベロスはお菓子いっぱい、サキュバスは男性ホルモンムンムンのいい男」
「最後どうしろと」
「レイスは幼女の身体、ケンタウロスは絶世の美馬、ユニコーンと吸血鬼は処女いっぱい」
「少しは要求を自嘲しろよ!? 幼女の身体って何するつもりだ!? 絶世の美馬とかお前らの美醜分からん! ユニコーンと吸血鬼は性癖丸出しじゃねーか!」
本当に魔物たちも少しはこう手心を……都市アルダが発展していくにつれて、彼らの要求もエスカレートしていくのだ。
そのうち女体盛りとか言われそう……辛い。そんなの俺が欲しいわ。
「それでどうするの?」
「レイスには幼女の人形、ケンタウロスは近くにあるの雌馬いっぱいの牧場に連れてけ、ユニコーンと吸血鬼には結婚してない熟女……いや殺されそうだからやめとこ……犯罪者の女をあてがってやれ。処女かは知らん」
「酷い」
「こんなの真面目に対応できるわけないだろ! サキュバスはなんか性欲強そうな男を紹介してやれ!」
「わかった」
まったく……人類蔑みの令にも限界はあるんだぞ。
いくら魔物様と言っても、何の罪もない人間を犠牲にはできない。
それをしたら民衆が逃げて行ってしまうからなぁ……人権? そんなの知らないよ。
「アルダ様、国王がいらっしゃいましたね。お出迎えして欲しいね」
オバンドーが部屋に入ってきて来客を知らせてくれた。
国王は何度も俺に王宮に来るように言ってきたのだが、散々無視していたらとうとう出向いてきた。
彼は俺に対して恨みを持っている。公爵は国王の親族で仲が良かったからな……。
なので下手に王宮に行くと暗殺の危険があるので、ずっと上洛を拒否していたのだ。
だが今の都市アルダはこの国にとって凄まじく影響力のある存在だ。
もはや経済の中心と言っても過言ではなく、王であろうとも軽視できるような存在ではない。
領主である俺が王と会うのを拒否していると、国としても物凄く困ってしまう。
他国への外聞があるからな。国王と俺の不仲説が広まると、周辺諸国が俺にすり寄ってきて独立などを促しかねない。
だが俺が王宮に行くのを完全に拒否しているので、とうとう王が仕方なく面会しに来たというわけだ。
俺としても国が割れて騒動が起きるのも面倒なので、アピールとして会ってやることにした。
そして都市アルダの入り口に出向くと、王の豪華な馬車が止まっていた。
「……来たか。遅いぞ! この余を待たせるとは!」
王は馬車から出ずに窓から顔を覗かせて叱責の声をあげてくる。
なるほど、随分と偉そうな態度だ。ならば立場を教えて差し上げなければならない。
「失礼しました。もてなしの準備をしていましてね」
俺が指を鳴らすと、周囲から一斉に魔物たちが現れた。
空からドラゴンやペガサスの大軍が飛来してきて、陸には大量のケンタウロスが走り寄ってくる。
更に俺が指さした先の海からは、クラーケンが海面から現れてその巨体を晒していた。
「なっ、なっ……!」
王はパクパクと口をあけて金魚のような馬鹿面を晒している。
ここで舐められたらまた公爵みたいに、下手にちょっかいをかけてこられないからな。
俺は王に対して勝ち誇った笑みを浮かべていた。
これでもう公爵の再来はないだろう。国王も公爵ばりに評判が悪い人間だが、やったらどうなるかわかってるよね?
そんなことを考えながら俺は大きく息を吸った。
「魔物の都市へようこそ!」
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
えー終わっちゃうの?
まだまだ見たかった。続編が見たいです。
面白かったのにもう完結で残念。
しかし、最後はもう魔王でしたねw
国王様も眷属にされて裏で国を操る………って展開も面白かったかも
フードを取らず、人間と勘違いさせて首を狙いに来た時に空振りからのカウンターで倒すと思ってた。
首を刎ねたらスキができるはずだから。