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第一章
夢人 4
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「別に、怪しい者じゃないわ」
これは、予想外の答え……という事は式神じゃなくて、本当に他の霊と出会ったのか? そんな事ってあるのか?
「遠くに光の玉が見えたから、ここまで泳いできたのよ。そしたら君がいたの」
光の玉? そう言えば、彼女も光の玉に包まれていた。暗穴道では、他の霊は光の玉に見えるのだろうか?
「そうか。ここでは遠くから見ると、僕は光の玉に見えるのか?」
この事を知ったら、久保田さんは喜ぶだろうな。
「こりゃあ帰ったら報告しないと」
そうしたら、久保田さんも僕に感謝して『今までゴメンネ。もう君を実験台にはしないわ』と……いや、ありえない。むしろ嬉々として僕をここへ送りまくるだろう。
「『帰ったら』って……ここがどこだか分かっているの?」
うん、彼女の疑問ももっともだな。必ずしも、帰れるわけじゃないのだから……
「分かっているよ。死後の世界へ続くむ道さ」
さも、当然のごとく言ってみた。
「だったら、どうして『帰ったら』なんて、さも当然のように言えちゃうわけ? そりゃあ、三途の川を越えるまでは、生き返れるらしいけど、そんなのほんの一部でしょ」
もっともな事だ。
「うん。でも、僕の場合、仮死状態だから、蘇生に失敗しない限り戻れるんだ。自慢じゃないけど、ここを通るのは五回目だよ」
「五……!? いったい、何をやっているのよ? 五回も死ぬなんて……」
ううん……かなりあきれられているな。
「部活だよ」
「ぶ……部活? いったい、なんのクラブ?」
「『超科学研究会』略して『超研』。ようするに、心霊現象とか超能力とか不思議な事を研究するクラブ。今ぼくは臨死体験の研究をしているんだ」
正確にはさせられているのだけど……
「そのために仮死状態になったわけ?」
「そうだよ」
「それって、学校の部活程度でできる事なの?」
「意外と簡単なんだ。その代りちょっと危険だけど」
いや、ちょっとどころの騒ぎじゃないな。下手すると死ぬ。
そりゃあ、僕だってこんなクラブに入るくらいだから心霊現象とか超常現象とか興味あるし好きだけど、そのために命までかけたいとは思わないのだけどね……
「柔道に絞め技ってあるの知っている?」
「相手の首を絞める技でしょ。それがどうしたの?」
「フツーは、ああいう事をすると死ぬと思わないかい」
「そりゃあ思うけど、柔道の試合とかみているとわりと普通に使っているわね。ああ! でもあたしが見たのは漫画だけど……」
「人間は呼吸が止まっても、すぐに死ぬわけじゃないんだ。もちろん、そのまま放置しておけば死ぬけど、早めに蘇生術を施せば、たいていは生き返る」
「そっか! ブールで溺れた人も、早めに人工呼吸すれば助かるわね」
「この前、柔道の先生が、絞め技をかけられた時の話をしたんだ。その時に先生は臨死体験をしたという話をしてね、超研の部長がそれ聞いて『実験しましょう』という事に……」
「それで君は、実験台にされたんだ」
「まあ、そんなところかな」
「それって、イジメじゃないの?」
「いや……そんな事は……」
僕はイジメられていたのか? いや、久保田さんは僕を実験台にはするけど、それ以外は優しい人だし……
「じゃあ、君以外に実験台になった人はいるの?」
「いや、僕だけ……」
「なんで君だけが、そんな危険な事させられるの? やっぱりイジメじゃない」
「いや……僕は超研で唯一の男性部員で……危険な事は男の仕事と……」
「そういうの、逆セクハラって言うのよ。そのクラブやめた方がいいわ」
「やめないよ」
「なんで? こんなところに送り込まれているのに」
「そりゃあ、臨死体験の実験は嫌だけど……僕は好きで超研に入ったんだし……」
「やっぱり、嫌なんじゃなんじゃない」
「いや……超研の活動自体は楽しいし……」
「それで死んだら意味がないじゃない!」
「それはそうだけど……そういう君こそ、なんでこんなところにいるの? ここにいるという事は、君も死んだわけだろ? 何か危険な事をやったのじゃないのか?」
あれ? なんか彼女急に押し黙った。
怒らせたのかな?
一分ほどして彼女は口を開いた。
「実は、その事で悩んでいるの。あたし、死んだ記憶がないのよ」
そして彼女は経緯を話始めた。
これは、予想外の答え……という事は式神じゃなくて、本当に他の霊と出会ったのか? そんな事ってあるのか?
「遠くに光の玉が見えたから、ここまで泳いできたのよ。そしたら君がいたの」
光の玉? そう言えば、彼女も光の玉に包まれていた。暗穴道では、他の霊は光の玉に見えるのだろうか?
「そうか。ここでは遠くから見ると、僕は光の玉に見えるのか?」
この事を知ったら、久保田さんは喜ぶだろうな。
「こりゃあ帰ったら報告しないと」
そうしたら、久保田さんも僕に感謝して『今までゴメンネ。もう君を実験台にはしないわ』と……いや、ありえない。むしろ嬉々として僕をここへ送りまくるだろう。
「『帰ったら』って……ここがどこだか分かっているの?」
うん、彼女の疑問ももっともだな。必ずしも、帰れるわけじゃないのだから……
「分かっているよ。死後の世界へ続くむ道さ」
さも、当然のごとく言ってみた。
「だったら、どうして『帰ったら』なんて、さも当然のように言えちゃうわけ? そりゃあ、三途の川を越えるまでは、生き返れるらしいけど、そんなのほんの一部でしょ」
もっともな事だ。
「うん。でも、僕の場合、仮死状態だから、蘇生に失敗しない限り戻れるんだ。自慢じゃないけど、ここを通るのは五回目だよ」
「五……!? いったい、何をやっているのよ? 五回も死ぬなんて……」
ううん……かなりあきれられているな。
「部活だよ」
「ぶ……部活? いったい、なんのクラブ?」
「『超科学研究会』略して『超研』。ようするに、心霊現象とか超能力とか不思議な事を研究するクラブ。今ぼくは臨死体験の研究をしているんだ」
正確にはさせられているのだけど……
「そのために仮死状態になったわけ?」
「そうだよ」
「それって、学校の部活程度でできる事なの?」
「意外と簡単なんだ。その代りちょっと危険だけど」
いや、ちょっとどころの騒ぎじゃないな。下手すると死ぬ。
そりゃあ、僕だってこんなクラブに入るくらいだから心霊現象とか超常現象とか興味あるし好きだけど、そのために命までかけたいとは思わないのだけどね……
「柔道に絞め技ってあるの知っている?」
「相手の首を絞める技でしょ。それがどうしたの?」
「フツーは、ああいう事をすると死ぬと思わないかい」
「そりゃあ思うけど、柔道の試合とかみているとわりと普通に使っているわね。ああ! でもあたしが見たのは漫画だけど……」
「人間は呼吸が止まっても、すぐに死ぬわけじゃないんだ。もちろん、そのまま放置しておけば死ぬけど、早めに蘇生術を施せば、たいていは生き返る」
「そっか! ブールで溺れた人も、早めに人工呼吸すれば助かるわね」
「この前、柔道の先生が、絞め技をかけられた時の話をしたんだ。その時に先生は臨死体験をしたという話をしてね、超研の部長がそれ聞いて『実験しましょう』という事に……」
「それで君は、実験台にされたんだ」
「まあ、そんなところかな」
「それって、イジメじゃないの?」
「いや……そんな事は……」
僕はイジメられていたのか? いや、久保田さんは僕を実験台にはするけど、それ以外は優しい人だし……
「じゃあ、君以外に実験台になった人はいるの?」
「いや、僕だけ……」
「なんで君だけが、そんな危険な事させられるの? やっぱりイジメじゃない」
「いや……僕は超研で唯一の男性部員で……危険な事は男の仕事と……」
「そういうの、逆セクハラって言うのよ。そのクラブやめた方がいいわ」
「やめないよ」
「なんで? こんなところに送り込まれているのに」
「そりゃあ、臨死体験の実験は嫌だけど……僕は好きで超研に入ったんだし……」
「やっぱり、嫌なんじゃなんじゃない」
「いや……超研の活動自体は楽しいし……」
「それで死んだら意味がないじゃない!」
「それはそうだけど……そういう君こそ、なんでこんなところにいるの? ここにいるという事は、君も死んだわけだろ? 何か危険な事をやったのじゃないのか?」
あれ? なんか彼女急に押し黙った。
怒らせたのかな?
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「実は、その事で悩んでいるの。あたし、死んだ記憶がないのよ」
そして彼女は経緯を話始めた。
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