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第一章
夢人 9
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『あなたのおかけになった電話番号は、電波の届かないところにいるか、電源が入っておりません』
だめだ。これで五回目……
「辻村さん。電話に出てくれないのですか?」
舞ちゃんが僕のスマホを心配そうにのぞき込む。
「いや、電源が入っていないらしい」
「入っていないのじゃなくて切っているのよ」
久保田さんがニヤニヤしながら言う。
人の不幸がそんなに嬉しいか。
「しつこいナンパ男から逃れるには、電源切っとくのが一番よ」
むか!
「僕は、そんなしつこくナンパしていません」
「水原君は、しつこくしたつもりはなくても、その女の子……辻村珠美という子はしつこいと思っていたのかもね」
「そんな」
「久保田先輩って、意地悪ですね」
そうだ! 舞ちゃんの言うとおり、久保田さんは意地悪で言っているだけだ。
「私は意地悪で言っているわけじゃないわ。正論を言っているのよ。しかし、その子もバカね。しつこいナンパから逃れたかったら、嘘の電話番号教えるのが一番いいのに」
「あの子は、そんな非道いことはしません」
「どうして、分かるのよ? 霊界で一度会っただけの子なのに」
「それは……」
霊界で久保田さんの事を話した時、珠美は僕に同情してくれた。優しい子なんだよ。
「久保田さん。質問」
「なあに? 未来ちゃん」
「久保田先輩はナンパされた時は、いつも嘘の電話番号教えちゃうのですか?」
未来ちゃんに質問された後、久保田さんしばらく押し黙っていた。
「ふふふふふふふ!」
黙っていたと思ったら、突然不敵な笑い声をあげる。
「あははははははは!」
ひとしきり笑った後……
「私がされたのよ」
え?
「私が逆ナンした時、嘘の電話番号教えられたのよ」
なんじゃい! そりゃあ!
「期待を込めて教えられた番号にかけた時、全然違う人が出たときの絶望感は半端なかったわ」
そりゃあお気の毒……
「あんた達にこの気持ち分からないでしよう……いや、水原君は分かるわよね?」
「分かりません」
「わからないはずないわよ。あんたが、今、現在進行形で味わっている気持ちよ」
「だから、僕は嘘の番号を教えられたのじゃなくて、スマホの電源が入っていないだけで……」
「いい加減現実を受け入れなさい」
こんな非現実的なクラブの部長の言葉とはとても思えない言葉だな。
だめだ。これで五回目……
「辻村さん。電話に出てくれないのですか?」
舞ちゃんが僕のスマホを心配そうにのぞき込む。
「いや、電源が入っていないらしい」
「入っていないのじゃなくて切っているのよ」
久保田さんがニヤニヤしながら言う。
人の不幸がそんなに嬉しいか。
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むか!
「僕は、そんなしつこくナンパしていません」
「水原君は、しつこくしたつもりはなくても、その女の子……辻村珠美という子はしつこいと思っていたのかもね」
「そんな」
「久保田先輩って、意地悪ですね」
そうだ! 舞ちゃんの言うとおり、久保田さんは意地悪で言っているだけだ。
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「あの子は、そんな非道いことはしません」
「どうして、分かるのよ? 霊界で一度会っただけの子なのに」
「それは……」
霊界で久保田さんの事を話した時、珠美は僕に同情してくれた。優しい子なんだよ。
「久保田さん。質問」
「なあに? 未来ちゃん」
「久保田先輩はナンパされた時は、いつも嘘の電話番号教えちゃうのですか?」
未来ちゃんに質問された後、久保田さんしばらく押し黙っていた。
「ふふふふふふふ!」
黙っていたと思ったら、突然不敵な笑い声をあげる。
「あははははははは!」
ひとしきり笑った後……
「私がされたのよ」
え?
「私が逆ナンした時、嘘の電話番号教えられたのよ」
なんじゃい! そりゃあ!
「期待を込めて教えられた番号にかけた時、全然違う人が出たときの絶望感は半端なかったわ」
そりゃあお気の毒……
「あんた達にこの気持ち分からないでしよう……いや、水原君は分かるわよね?」
「分かりません」
「わからないはずないわよ。あんたが、今、現在進行形で味わっている気持ちよ」
「だから、僕は嘘の番号を教えられたのじゃなくて、スマホの電源が入っていないだけで……」
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