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第三章

「どうして?」

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 ポールの手を逃れたリアルがあたしの方へ駆けてくる。
「瑠璃華!!」
 あたしはリアルを抱きしめた。
「おい……瑠理華。ちょっと苦しいよ」
「どうして?」
「だから苦しいって」
「どうして、蛍公園に来てくれなかったの?」
「え?」
「真君……真君なんでしょ?」
 リアルは宝石の様な目で、あたしを無言で見つめていた。
「真君……」
「違う」
 リアルは首を横にふった。
「違う。俺はリアルだ!!」
「え?」
「田崎真という人間はもう死んだ。俺は黒猫のリアルだ!!」
「真君?」
「その名前で俺を呼ぶな!! 確かに俺は真の記憶を持っている。でも、俺はもう人間には戻れないんだ!!」
「どうして、そんなこと言うの?」
 ひどいよ、真君。あたしがどれほどあなたに会いたかったと思ってるの。
「どうしてって? それが現実だから……受け入れるしかないんだよ。もう、元には戻れないんだ」
 真君……
 辛かったのね。戻したくても、戻せない現実を目の前にして……
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