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第八章
タトゥ
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「お兄ちゃん」
ミクが駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん。あたしに、名案があるのだけど」
「なんだ?」
「あんな面倒くさい女たちなんか、ふっちゃって、あたしと付き合おうよ」
ダメだ……こいつじゃ助けにならん……
ミールと香子の方を見ると、二人は無言で睨み合っていた。
先に口を開いたのはミール。
「カトリさん、一つお聞きしたいのですけど」
「なんでしょう?」
「カイトさんは、プリンターという機械で再生されたのですよね?」
「そうですけど」
「もう一人、再生できないのですか?」
え?
「そう言えば……その手があった」
「ご主人様。それは甘いです」
Pちゃんは首を横にふっていた。
「甘いの?」
「一つの惑星上で、同じ人間を再生する事は、プリンター使用ガイドラインで禁止されています」
「禁止? だって矢納課長は、三人再生したって……」
「だから、あの人がやった事は違法行為です」
「しかし、僕は二人目だろ?」
「それは、前のご主人様がお亡くなりになったからです。同時に存在しなければ問題ありませんが、同時に存在する事は許されません」
タイムパラドックスみたいだな……
「まって。できるわ」
そう言ったのは香子。
「一つの惑星上で同じ人間を作ってはならないのは、犯罪防止のため。海斗のコピーを新たに作ったとしても、それが今のカイトと肉眼で識別可能なら許可されるはずよ」
「本当か? でも、どうやって識別するんだ?」
「例えば、海斗の身体に入れ墨を入れるとか」
入れ墨! 痛そうだな……やだな……
「入れ墨ですか。任せて下さい。あたし入れ墨掘るの、得意ですから」
「ちょっと! ミール! 僕はまだタトゥーなんて」
「大丈夫です。痛くないように、やってあげますから」
「いや、絶対痛いだろう!」
「大丈夫ですよ。なんでしたら……」
ミールは袖をまくり上げた。そこには花の入れ墨が彫ってある。
「あたしとお揃いにしますか?」
僕は香子の方を向いた。
「香子。入れ墨なんかしなくても、新たに再生される僕にICタグを入れれば……」
「ダメ。肉眼で識別可能にしないと。ICタグが肉眼で見えるの」
「無理だ」
「入れ墨を入れるのが嫌なら、私かミールさんか、この場ではっきりして」
「う……それは……」
「香子姉。それは無理だよ」
そう言ったのはミク。
「ミクちゃん!? あなたも再生されたの?」
「お兄ちゃんに、メッセージを届けるためにね。だけど、母船のマテリアルカートリッジが残り少なくて、人間を再生するのは、あたしで最後だって」
「え?」
「だから、お兄ちゃんを、もう一人作る事は無理」
「そんなあ、せっかくカイトさんに、あたしとお揃いの入れ墨を入れられると思ったのに」
だから、それは嫌だって……
「マテリアルカートリッジならあるわ」
え? 僕は香子に目を向けた。
「三十年前に《天竜》がこの砂漠に不時着したわ。その後で、帝国の核攻撃でブリンターが破壊されたけど、マテリアルカートリッジは丸丸残っているの」
「なんだって?」
「カイトさん。早速、複製をつくりましょう! あ! その前に入れ墨でしたね」
「いやだあ!」
「なんで、そんなに嫌なのですか? 入れ墨ぐらい……」
「待って、ミールさん。海斗の持ってきたプリンターでは人間の複製は出来ないわ」
ミールは香子の方を振り向く。
「どうしてですか?」
「人間など、内部に流体がある物体を再生するには、無重力状態である必要があるの。つまり、人間を再生するには、ここにあるカートリッジを衛星軌道上の母船に送り届ける必要があるのよ」
「よく、分かりませんが、すぐには無理という事ですか?」
「そう。それに、カートリッジは《天竜》の人たちの財産。まずは交渉して譲ってもらわないと。その後で、母船にカートリッジを届ける方法を考えないとね」
「という事は、時間はかかるけど、カイトさんの複製は作れるという事ですね。では、入れ墨だけでも、先に……」
「嫌だあ!」
ミクが駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん。あたしに、名案があるのだけど」
「なんだ?」
「あんな面倒くさい女たちなんか、ふっちゃって、あたしと付き合おうよ」
ダメだ……こいつじゃ助けにならん……
ミールと香子の方を見ると、二人は無言で睨み合っていた。
先に口を開いたのはミール。
「カトリさん、一つお聞きしたいのですけど」
「なんでしょう?」
「カイトさんは、プリンターという機械で再生されたのですよね?」
「そうですけど」
「もう一人、再生できないのですか?」
え?
「そう言えば……その手があった」
「ご主人様。それは甘いです」
Pちゃんは首を横にふっていた。
「甘いの?」
「一つの惑星上で、同じ人間を再生する事は、プリンター使用ガイドラインで禁止されています」
「禁止? だって矢納課長は、三人再生したって……」
「だから、あの人がやった事は違法行為です」
「しかし、僕は二人目だろ?」
「それは、前のご主人様がお亡くなりになったからです。同時に存在しなければ問題ありませんが、同時に存在する事は許されません」
タイムパラドックスみたいだな……
「まって。できるわ」
そう言ったのは香子。
「一つの惑星上で同じ人間を作ってはならないのは、犯罪防止のため。海斗のコピーを新たに作ったとしても、それが今のカイトと肉眼で識別可能なら許可されるはずよ」
「本当か? でも、どうやって識別するんだ?」
「例えば、海斗の身体に入れ墨を入れるとか」
入れ墨! 痛そうだな……やだな……
「入れ墨ですか。任せて下さい。あたし入れ墨掘るの、得意ですから」
「ちょっと! ミール! 僕はまだタトゥーなんて」
「大丈夫です。痛くないように、やってあげますから」
「いや、絶対痛いだろう!」
「大丈夫ですよ。なんでしたら……」
ミールは袖をまくり上げた。そこには花の入れ墨が彫ってある。
「あたしとお揃いにしますか?」
僕は香子の方を向いた。
「香子。入れ墨なんかしなくても、新たに再生される僕にICタグを入れれば……」
「ダメ。肉眼で識別可能にしないと。ICタグが肉眼で見えるの」
「無理だ」
「入れ墨を入れるのが嫌なら、私かミールさんか、この場ではっきりして」
「う……それは……」
「香子姉。それは無理だよ」
そう言ったのはミク。
「ミクちゃん!? あなたも再生されたの?」
「お兄ちゃんに、メッセージを届けるためにね。だけど、母船のマテリアルカートリッジが残り少なくて、人間を再生するのは、あたしで最後だって」
「え?」
「だから、お兄ちゃんを、もう一人作る事は無理」
「そんなあ、せっかくカイトさんに、あたしとお揃いの入れ墨を入れられると思ったのに」
だから、それは嫌だって……
「マテリアルカートリッジならあるわ」
え? 僕は香子に目を向けた。
「三十年前に《天竜》がこの砂漠に不時着したわ。その後で、帝国の核攻撃でブリンターが破壊されたけど、マテリアルカートリッジは丸丸残っているの」
「なんだって?」
「カイトさん。早速、複製をつくりましょう! あ! その前に入れ墨でしたね」
「いやだあ!」
「なんで、そんなに嫌なのですか? 入れ墨ぐらい……」
「待って、ミールさん。海斗の持ってきたプリンターでは人間の複製は出来ないわ」
ミールは香子の方を振り向く。
「どうしてですか?」
「人間など、内部に流体がある物体を再生するには、無重力状態である必要があるの。つまり、人間を再生するには、ここにあるカートリッジを衛星軌道上の母船に送り届ける必要があるのよ」
「よく、分かりませんが、すぐには無理という事ですか?」
「そう。それに、カートリッジは《天竜》の人たちの財産。まずは交渉して譲ってもらわないと。その後で、母船にカートリッジを届ける方法を考えないとね」
「という事は、時間はかかるけど、カイトさんの複製は作れるという事ですね。では、入れ墨だけでも、先に……」
「嫌だあ!」
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