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第十二章
誤訳
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「芽依ちゃん! 大丈夫か!?」
無線で呼びかけると、すぐに返事が返ってきた。
『私は大丈夫です。でも、機体機能の八十パーセントが喪失。これ以上の攻撃には……』
その次の攻撃を、今まさにエラがやろうとしていた。
芽衣ちゃんに向けたエラの掌が輝く。
芽依ちゃんの背後で扉が開いたのはその時……
中から出てきたのは、紫髪の美女。
カミラ・マイスキー!?
味方を巻き込むのを恐れてエラは攻撃を躊躇した。
「カミラ。そこをどけ!」
だが、カミラは前に進み出て芽依ちゃんを庇うように立ちはだかる。
「エラ。やめて。停戦命令よ」
「停戦だと? なぜだ?」
「この人達は、帝国軍ではないわ。帝国軍は昨夜のうちに逃げ出していたのよ」
「なに? では、こいつらは?」
「帝国艦隊を追撃してきたカルカ軍の人達よ。私たちの動きを見て、盗賊団が町を襲撃しようとしていると勘違いして、追撃を中止して町を守りにきたのよ」
まんざら、勘違いでもないだろう。
「カルカ軍だと? では、味方ではないか」
こいつを味方にしたくないのだけど……
「そうよ。危うく、敵に回すところだったわ」
エラはカミラの背後にいる芽依ちゃんに声をかける。
「それならそうと、なぜ言わない?」
「最初から、言っていましたけど……」
「え?」
「信じなかったのはあなたですよ。エラ・アレンスキーさん」
エラはしばし考え込んだ。
「いや、そういえば、そんな事を言っていたような……では、おまえコブチという奴ではないのか?」
「違います。そもそも私は女です」
「女だと? しかし、それならなぜ、私が『声が女みたい』と言った時に風邪を引いているなどと……」
「う……」
痛いところを突かれて芽依ちゃんは押し黙る。
エラを味方にしたくないから、停戦する前に片づけてしまおうとしていたなどとは絶対言えないし……
僕はエラの傍に降り立つ。
「それはだな。きっと、翻訳ディバイスの誤訳だ」
「誤訳?」
エラは怪訝な視線を僕に向けた。
「君は僕達の言葉を帝国語で聞いていると思うが、実際に僕達が話している言葉は日本語だ。それを機械が翻訳するときに間違えたのだよ」
「そうか。私たちは普通に会話しているようだが、実際は翻訳機を通していたのだな」
「そうなのですよ。誤訳です」
芽依ちゃんはエラに向かって翻訳ディバイスを差し出して見せた。
「この翻訳ソフトを作った相模原さんって、本当に仕事がいい加減で……」
「誰の仕事がいい加減ですって!?」
その声の方に視線を向けると、二十代後半ぐらいの髪の長い女の姿があった。相模原月菜? なぜここに……?
無線で呼びかけると、すぐに返事が返ってきた。
『私は大丈夫です。でも、機体機能の八十パーセントが喪失。これ以上の攻撃には……』
その次の攻撃を、今まさにエラがやろうとしていた。
芽衣ちゃんに向けたエラの掌が輝く。
芽依ちゃんの背後で扉が開いたのはその時……
中から出てきたのは、紫髪の美女。
カミラ・マイスキー!?
味方を巻き込むのを恐れてエラは攻撃を躊躇した。
「カミラ。そこをどけ!」
だが、カミラは前に進み出て芽依ちゃんを庇うように立ちはだかる。
「エラ。やめて。停戦命令よ」
「停戦だと? なぜだ?」
「この人達は、帝国軍ではないわ。帝国軍は昨夜のうちに逃げ出していたのよ」
「なに? では、こいつらは?」
「帝国艦隊を追撃してきたカルカ軍の人達よ。私たちの動きを見て、盗賊団が町を襲撃しようとしていると勘違いして、追撃を中止して町を守りにきたのよ」
まんざら、勘違いでもないだろう。
「カルカ軍だと? では、味方ではないか」
こいつを味方にしたくないのだけど……
「そうよ。危うく、敵に回すところだったわ」
エラはカミラの背後にいる芽依ちゃんに声をかける。
「それならそうと、なぜ言わない?」
「最初から、言っていましたけど……」
「え?」
「信じなかったのはあなたですよ。エラ・アレンスキーさん」
エラはしばし考え込んだ。
「いや、そういえば、そんな事を言っていたような……では、おまえコブチという奴ではないのか?」
「違います。そもそも私は女です」
「女だと? しかし、それならなぜ、私が『声が女みたい』と言った時に風邪を引いているなどと……」
「う……」
痛いところを突かれて芽依ちゃんは押し黙る。
エラを味方にしたくないから、停戦する前に片づけてしまおうとしていたなどとは絶対言えないし……
僕はエラの傍に降り立つ。
「それはだな。きっと、翻訳ディバイスの誤訳だ」
「誤訳?」
エラは怪訝な視線を僕に向けた。
「君は僕達の言葉を帝国語で聞いていると思うが、実際に僕達が話している言葉は日本語だ。それを機械が翻訳するときに間違えたのだよ」
「そうか。私たちは普通に会話しているようだが、実際は翻訳機を通していたのだな」
「そうなのですよ。誤訳です」
芽依ちゃんはエラに向かって翻訳ディバイスを差し出して見せた。
「この翻訳ソフトを作った相模原さんって、本当に仕事がいい加減で……」
「誰の仕事がいい加減ですって!?」
その声の方に視線を向けると、二十代後半ぐらいの髪の長い女の姿があった。相模原月菜? なぜここに……?
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