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第十五章

スリの少年

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 三人の男たちが去った後、僕はPちゃんと連絡を取って、アンドロイドたちの様子を確認したが、アンドロイドに手を出す者はいなかった。

 レムは、アンドロイドにだまされることなく、ピンポイントで本物のミクを拉致したのか?

 それとも、ミクを拉致したのはレムではなく盗賊団?

 いや、ただの盗賊ごときに、ミクを拉致できるわけがない。ミールの言う通り、アクロを召還してズタボロにするだけ……

旦那だんな

 三人の男たちが戻ってきたのは、十分ほど経ってからの事。

 十代前半ぐらいの帝国人の少年を連れていた。物乞ものごいのようだな。

 ボロをまとい、何年も洗った事のなさそうなボサボサな髪をしている。

 そのボサボサの頭に、この少年には不釣り合いな白い毛皮の帽子。

「旦那。こいつが、何か知っているみたいです」

 少年は、男たちに押さえつけられながらも、何とか逃れようともがいていた。

「知らねえよ! 俺は何もしてないよ」
「嘘付け! おまえが女の子から、財布をスったのは分かっているんだ」
「知らねえよ! 財布なんかってないよ」
「じゃあ、これは何だ!?」

 男の一人が、少年のポケットから何か抜き取る。

 これは!?
 
 人型に切り取られた紙の束……いや、紙のように見えるけど、その素材は単結晶モノクリスタルカーボナノチューブ。

 ミクが式神を出すときに使っている憑代よりしろ

 これがなかったら、ミクは式神を使えない。

「だから、それは財布じゃないだろう」
「女の子から、盗ったのには間違えないだろう」
「なんだよ! 盗って悪いかよ。あんたらだって、カツアゲやってるくせに」

 僕は少年の前に進み出た。

「な……なんだよ! おっさん。文句あんのかよ」

 おっさんなんて言われるのは初めてだな。

 僕は憑代の束を男から受け取ると、少年の眼前に突きつけた。

「ぼうや。正直に答えろ。なぜ、これを盗んだ?」
「なんだよ! 盗んで悪いかよ!」
「悪いに決まっているだろ」
「なんでだよ! 盗まなきゃ俺はどうやって食っていけば……痛て!」

 少年を押さえつけていた男の一人が、少年の頭を殴った。

「バカ野郎! 口の利き方に気をつけろ! 旦那。子供の言っている事ですから」
「ああ。子供に手荒な事をする気はない」

 もう一度、憑代の束を突きつけた。

「もう一度聞く。なんのために、これを盗んだ?」
「だから、食うため……」
「これは、君にとってはなんの価値もない物だ。金に換えることもできない。これを盗っても、君は何も食べる事はできない。それにも関わらず、なぜ盗んだ?」
「いや……財布だと思って……」
「これが皮袋の中にでも入っていたというならそういう勘違いもあるが、むき出しになっているな。金目の物じゃないと、見て分からなかったのか?」
「そりゃ、金目の物じゃないことは、すぐに分かったけど、逃げるのに夢中で……」

 僕は男たちの方を向いた。

「スリの事はよく分からないのだが、盗った物が無価値だと分かったら、普通はどうするのだ?」
「その場で捨てます」

 なるほど、価値のない物を持って逃げ回るなんて無駄だし危険だからな。

 再び、少年の方を向いた。

「金目の物じゃないと分かった時点で、なぜ捨てなかった?」
「それは……」
 
 少年は口ごもる。

「では、質問を変えよう。誰に頼まれて、こんな事をやった?」

 少年の顔がひきつった。やはり、そうか。

 レムの手下が、この少年を雇ってミクの憑代を盗ませたのだな。

「知らない! 誰にも頼まれてなんかいない!」
「もういい。君が素直に話す気がないという事はよく分かった。別の方法で聞き出す事にする」

 と言っても、拷問じゃないけどね。

 だけど、男たちは拷問だと思ったようだ。

「旦那。ここは、あっしらに任せてくだせえ。旦那のパンチじゃ、こんなガキ、喋る前に死んでしまいますから」

 男の一人が、少年の胸倉を掴み、殴ろうとするのを僕は制止した。

「殴らなくてもいい。それより、この子を地面に横たえて押さえつけていてくれないか」
「へえ。それだけでいいんで?」

 石畳の上に少年は仰向けに寝かされ、四肢を男たちに押さえつけられた。

「なんだよ!? 俺に何をするんだよ!?」
「じっとしていてくれ。すぐに済む。じゃあ、ミール頼んだよ」
「はーい」

 ミールは、少年の胸に木札を置いて呪文を唱えた。

「うわわ!」「なんだ! こりゃ!」

 少年の身体から、分身体が起きあがるのを見て男たちは驚く。

 その隙に少年は逃げようとするが、すぐに捕まった。

 ん? 少年の分身体の方には、白い帽子がないぞ。

 なんで、帽子も一緒に…… あ! これ、帽子じゃない。

 ミクの式神、赤目じゃないか!
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