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第十五章
死ぬな! これは命令だ
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廃工場を出た僕は、新たに捕らえた捕虜三人を引きずって、ミールの前に連れて行った。
「ミール。やはり、君の分身魔法が必要だ。だけど、ジジイから情報を聞き出す必要もある。そこで今から僕だけ《海龍》へ戻って、ジジイの分身体から必要な事を聞き出そうと思う。それを済ませてから、こいつらの分身体を作ってほしい」
「分かりました。でもカイトさん、急いで下さい。お爺さんの分身体、もう長くもちません」
「北村さん」
芽依ちゃんが、駆け寄ってきた。
「《海龍》に戻るなら、私も連れていって下さい。私のロボットスーツも稼働させれば、いろいろとお役に立てると思います」
なるほど。戦うにしろ、物を運ぶにしろ、ロボットスーツがもう一機いた方がいいな。
ん? 僕は周囲を見回した。
「ところで、ミクはどうした? さっきから、姿が見あたらないが……」
僕の質問にミールが答える。
「ミクちゃんなら、《海龍》に戻りましたよ。早くシャワーを浴びたいって。それとあの落書き女も連れて行きました。《海龍》で、ゆっくり仕返しするとか」
ゆっくり仕返しって……何をするんだ?
とにかく急いだ方がいいな。
「ミール。ジジイの分身体は、今どこにいる?」
「《海龍》の倉庫にいます」
「分かった」
僕は、芽依ちゃんを抱き上げて飛び立った。
アーテミス川の上を飛行中、僕は芽依ちゃんに艦隊内にレムと接続されたスパイがいた事を話す。
「それじゃあ、さっき北村さんが、私とレイホーさんの前に降りてきたのは、私たちが接続されていないかを確認するためだったのですね?」
「そうなんだ。疑ってすまない」
「いいのです。北村さんがやった事は当然です。私だって、同じ事をやります」
「その事だけど、芽依ちゃん。あれは止めてくれないか」
「あれとは?」
「Pちゃんに、自分を殺せと命令するなんて」
「あ! 分かっちゃいました」
「たとえ、レムに接続されたとしても、僕が必ず芽依ちゃんを解放する。だから、自殺は禁止」
「だけど、私が死んでも、誰も悲しみませんよ」
「艦隊のみんなが悲しむ。君のお父さんだって悲しむ。なにより僕が悲しい」
「私が死んだら、北村さんは悲しいですか?」
「当たり前だ。だから、死ぬな! これは命令だ」
「じゃ……じゃあ、その命令に従ったら……」
ん? 芽依ちゃん、顔を赤らめてどうしたのだ。
「命令に従ったら……私と……その……け……け……」
け?
「すみません! なんでも無いです! 忘れて下さい!」
何を言いたかったのだろう? いや、ここは忘れた方がいいな。聞くとなぜか、面倒な事になりそうな気がする。
「ところで、北村さん。私にこの事を話したという事は、もう誰がレムと接続されているのかが分かったという事ですよね?」
「ああ。ただ、本人もそのことに気が付いていない可能性がある」
「そんな事が、あるのですか?」
「それを確認したい。そのために、ジジイの分身体に会いに行くんだ」
そんな話をしている間に、《海龍》が眼下に見えてきた。
「ミール。やはり、君の分身魔法が必要だ。だけど、ジジイから情報を聞き出す必要もある。そこで今から僕だけ《海龍》へ戻って、ジジイの分身体から必要な事を聞き出そうと思う。それを済ませてから、こいつらの分身体を作ってほしい」
「分かりました。でもカイトさん、急いで下さい。お爺さんの分身体、もう長くもちません」
「北村さん」
芽依ちゃんが、駆け寄ってきた。
「《海龍》に戻るなら、私も連れていって下さい。私のロボットスーツも稼働させれば、いろいろとお役に立てると思います」
なるほど。戦うにしろ、物を運ぶにしろ、ロボットスーツがもう一機いた方がいいな。
ん? 僕は周囲を見回した。
「ところで、ミクはどうした? さっきから、姿が見あたらないが……」
僕の質問にミールが答える。
「ミクちゃんなら、《海龍》に戻りましたよ。早くシャワーを浴びたいって。それとあの落書き女も連れて行きました。《海龍》で、ゆっくり仕返しするとか」
ゆっくり仕返しって……何をするんだ?
とにかく急いだ方がいいな。
「ミール。ジジイの分身体は、今どこにいる?」
「《海龍》の倉庫にいます」
「分かった」
僕は、芽依ちゃんを抱き上げて飛び立った。
アーテミス川の上を飛行中、僕は芽依ちゃんに艦隊内にレムと接続されたスパイがいた事を話す。
「それじゃあ、さっき北村さんが、私とレイホーさんの前に降りてきたのは、私たちが接続されていないかを確認するためだったのですね?」
「そうなんだ。疑ってすまない」
「いいのです。北村さんがやった事は当然です。私だって、同じ事をやります」
「その事だけど、芽依ちゃん。あれは止めてくれないか」
「あれとは?」
「Pちゃんに、自分を殺せと命令するなんて」
「あ! 分かっちゃいました」
「たとえ、レムに接続されたとしても、僕が必ず芽依ちゃんを解放する。だから、自殺は禁止」
「だけど、私が死んでも、誰も悲しみませんよ」
「艦隊のみんなが悲しむ。君のお父さんだって悲しむ。なにより僕が悲しい」
「私が死んだら、北村さんは悲しいですか?」
「当たり前だ。だから、死ぬな! これは命令だ」
「じゃ……じゃあ、その命令に従ったら……」
ん? 芽依ちゃん、顔を赤らめてどうしたのだ。
「命令に従ったら……私と……その……け……け……」
け?
「すみません! なんでも無いです! 忘れて下さい!」
何を言いたかったのだろう? いや、ここは忘れた方がいいな。聞くとなぜか、面倒な事になりそうな気がする。
「ところで、北村さん。私にこの事を話したという事は、もう誰がレムと接続されているのかが分かったという事ですよね?」
「ああ。ただ、本人もそのことに気が付いていない可能性がある」
「そんな事が、あるのですか?」
「それを確認したい。そのために、ジジイの分身体に会いに行くんだ」
そんな話をしている間に、《海龍》が眼下に見えてきた。
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