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第十六章
球体機動兵器
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爆煙の中から現れた黒光りする球体は、転がりながら移動していた。
「香子。あれって、無人兵器なの?」
香子は首を横にふる。
『有人機よ』
「しかし、あんなにゴロゴロ転がっていたら、中の人間が……」
『球体機動兵器というのは、二重構造になっているものなのよ』
「二重構造?」
『あの大きな球体の中に、操縦者が乗る小さな球体があるの。内部の球体は、外部の球体がどんな動きをしようと静止しているのよ』
つまり、転がって移動する本体の中心部に、動かない操縦室があって、その中から無線でコントロールしているというわけか。
無線で操縦するなら、人を乗せないで外部からコントロールすればいいのに……あ! そうか!
それをやったらフーファイターと同じく、操縦者を叩かれて終わり。
イワンに同じ手は使えないな。
「香子。こいつはエネルギー源に、何を使っているか分かるかい?」
『推測だけど、超伝導バッテリーと言われているわ』
「対消滅とか、核融合は使っていないの?」
『イワンは、かなり激しい動きをしているわ。当然、本体はかなり激しく振動しているはず。核融合、対消滅などの反応炉だと、その振動で不具合が発生する危険が高いのよ。人を乗せた兵器に、そんな危ないものは使えないはず。一番可能性が高いのは、超伝導バッテリーよ』
ならば、電池切れを待つという手もあるが……
とりあえず、一度攻撃をかけて敵の出方を見る必要があるな。
香子との通信を切ってから、ゼロ部隊に特攻をかけさせた。
その結果……
「十機のゼロのうち、六機はレーザーで撃ち落とされました」
Pちゃんが戦況を説明している間、発令所のメインモニターに、十機のゼロから送られてきた映像が並んで再生されていた。
どの映像にも、黒い球体が映っていた。その球体が、映像の中でグングン大きくなっていく。
だが、途中で球体の一部がピカッと輝くと、その直後に映像が一つずつブラックアウトしていった。
そのまま六つの映像が、次々とブラックアウトしていく。
「撃墜されなかった四機のうち、二機は……」
まだ、四つの映像が球体に急接近していた。
そのうち、二つの映像からは球体が映像の範囲から外れて、地面が急接近してからブラックアウト。
「体当たりを避けられて、地面に激突。残りの二機は……」
残った二つの映像の中で球体はグングン大きくなり、画面一杯に広がってからブラックアウト。
「体当たり攻撃に成功しました」
「それでPちゃん。戦果は?」
「紫雲を接近させたところ、レーザーによる攻撃はなく、バルカン砲を撃ってきました。体当たり攻撃によって、レーザー砲を破壊出来た可能性があります」
あくまでも可能性か。
だけど……
「レーザー砲が壊れているなら、今がチャンスだ。ただちに、九九式と出撃可能な菊花全機を発進させて、イワンを攻撃しよう」
「北村さん。待って下さい。敵がレーザーを使わなかったのは、単に電力を節約したかっただけではないでしょうか?」
「芽依ちゃん。そう思う根拠は?」
「はい。イワンの充電設備は、格納庫の中にあったと思われます。格納庫を破壊したときにそれも破壊されたとしたら、イワンは今ある電力だけで戦う事になります」
「なるほど。しかし、他に充電設備がないという保証はないけど……」
「はい。もし、他に充電設備があるとしたら、地下施設だと思われます。そこに移動するまで、電力を節約したいのではないかと……」
「しかし、イワンの現在位置から地下施設まで、直線距離で三キロ。そんなに離れていないが……」
「でも、イワンの現在位置は海岸付近です。地下施設入り口は海抜二百メートル付近。あの巨体で、それだけの高さを登るにはかなりのエネルギーが必要かと」
「なるほど。そうだとすると、イワンは地下施設に向かうはず。その前に叩こう。もちろん、レーザー砲対策を立ててからだ」
僕と芽依ちゃんが九九式を装着して《海龍》から飛び立ってから数分後、《海龍》から離れた位置に浮上した《水龍》が、ベイス島に向かって八十ミリ電磁砲による艦砲射撃を開始した。
十発ほど撃ってから、《水龍》はすぐに潜行して姿を隠す。
放たれた砲弾は、僕たちを追い越してベイス島上空で炸裂して大量の金属箔をまき散らし、濃密なレーザー攪乱幕を形成した。
先行した菊花隊が、攪乱幕の中に突入していく。
「香子。あれって、無人兵器なの?」
香子は首を横にふる。
『有人機よ』
「しかし、あんなにゴロゴロ転がっていたら、中の人間が……」
『球体機動兵器というのは、二重構造になっているものなのよ』
「二重構造?」
『あの大きな球体の中に、操縦者が乗る小さな球体があるの。内部の球体は、外部の球体がどんな動きをしようと静止しているのよ』
つまり、転がって移動する本体の中心部に、動かない操縦室があって、その中から無線でコントロールしているというわけか。
無線で操縦するなら、人を乗せないで外部からコントロールすればいいのに……あ! そうか!
それをやったらフーファイターと同じく、操縦者を叩かれて終わり。
イワンに同じ手は使えないな。
「香子。こいつはエネルギー源に、何を使っているか分かるかい?」
『推測だけど、超伝導バッテリーと言われているわ』
「対消滅とか、核融合は使っていないの?」
『イワンは、かなり激しい動きをしているわ。当然、本体はかなり激しく振動しているはず。核融合、対消滅などの反応炉だと、その振動で不具合が発生する危険が高いのよ。人を乗せた兵器に、そんな危ないものは使えないはず。一番可能性が高いのは、超伝導バッテリーよ』
ならば、電池切れを待つという手もあるが……
とりあえず、一度攻撃をかけて敵の出方を見る必要があるな。
香子との通信を切ってから、ゼロ部隊に特攻をかけさせた。
その結果……
「十機のゼロのうち、六機はレーザーで撃ち落とされました」
Pちゃんが戦況を説明している間、発令所のメインモニターに、十機のゼロから送られてきた映像が並んで再生されていた。
どの映像にも、黒い球体が映っていた。その球体が、映像の中でグングン大きくなっていく。
だが、途中で球体の一部がピカッと輝くと、その直後に映像が一つずつブラックアウトしていった。
そのまま六つの映像が、次々とブラックアウトしていく。
「撃墜されなかった四機のうち、二機は……」
まだ、四つの映像が球体に急接近していた。
そのうち、二つの映像からは球体が映像の範囲から外れて、地面が急接近してからブラックアウト。
「体当たりを避けられて、地面に激突。残りの二機は……」
残った二つの映像の中で球体はグングン大きくなり、画面一杯に広がってからブラックアウト。
「体当たり攻撃に成功しました」
「それでPちゃん。戦果は?」
「紫雲を接近させたところ、レーザーによる攻撃はなく、バルカン砲を撃ってきました。体当たり攻撃によって、レーザー砲を破壊出来た可能性があります」
あくまでも可能性か。
だけど……
「レーザー砲が壊れているなら、今がチャンスだ。ただちに、九九式と出撃可能な菊花全機を発進させて、イワンを攻撃しよう」
「北村さん。待って下さい。敵がレーザーを使わなかったのは、単に電力を節約したかっただけではないでしょうか?」
「芽依ちゃん。そう思う根拠は?」
「はい。イワンの充電設備は、格納庫の中にあったと思われます。格納庫を破壊したときにそれも破壊されたとしたら、イワンは今ある電力だけで戦う事になります」
「なるほど。しかし、他に充電設備がないという保証はないけど……」
「はい。もし、他に充電設備があるとしたら、地下施設だと思われます。そこに移動するまで、電力を節約したいのではないかと……」
「しかし、イワンの現在位置から地下施設まで、直線距離で三キロ。そんなに離れていないが……」
「でも、イワンの現在位置は海岸付近です。地下施設入り口は海抜二百メートル付近。あの巨体で、それだけの高さを登るにはかなりのエネルギーが必要かと」
「なるほど。そうだとすると、イワンは地下施設に向かうはず。その前に叩こう。もちろん、レーザー砲対策を立ててからだ」
僕と芽依ちゃんが九九式を装着して《海龍》から飛び立ってから数分後、《海龍》から離れた位置に浮上した《水龍》が、ベイス島に向かって八十ミリ電磁砲による艦砲射撃を開始した。
十発ほど撃ってから、《水龍》はすぐに潜行して姿を隠す。
放たれた砲弾は、僕たちを追い越してベイス島上空で炸裂して大量の金属箔をまき散らし、濃密なレーザー攪乱幕を形成した。
先行した菊花隊が、攪乱幕の中に突入していく。
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