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第十六章

触手大魔王

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 しかし、ここならプシトロンパルスも届くから、ミクは《海龍》から出ることなく式神を操れるわけだが……

 いや、ミクが式神を出してきたら、こいつは芽依ちゃんを抱えたまま地下施設へ逃げるのかもしれない。

 そうなると、ミクも芽依ちゃんを助けるために地下施設へ……

『ミクちゃんが、出るまでもないわ』

 唐突に通信機から、アーニャの声が流れた。

 アーニャの通信には、暗号などかけていないようだ。これではカルルにも聞こえてしまうが……

 いや、アーニャはカルルに聞かせるためにやっているようだ。

 なんのつもりだろう?

 アーニャはさらに話し続けた。

『そんなイヤらしい変態触手。私たちが断ち切ってやるわよ』
『こら! イヤらしいとか変態とか言うな! 誤解を招くだろ。それから、これは触手じゃなくて、連続体マニピュレーターだ』
『ふっ! カルル・エステスさん。そんな言い訳。世間に通用すると思って?』
『なに!?』
『あなたが、この戦いに勝利して、帝都に凱旋がいせんしたとしても、きっと近所の奥様達からはこうささやかれるわ。『見てください奥様。触手男のカルルざますわよ』『まあ! 戦闘のどさくさに紛れて、女の子を触手で陵辱りょうじょくしたという』『なんてイヤらしい』』
『やめろう!』
『若い女の子たちは、あなたを指さしてこう言うでしょうね。『やだ! 変態カルルよ』『ええ!? 触手大魔王カルル! キモーイ!』『きっと今も、背中から触手を出して、女の子にエッチな事しようと企んでいるのだわ。こわーい』『お巡りさん。こっちです』それがあなたの未来よ』
『やめろおぉぉぉ! これは触手ではなくて、連続体マニピュレーターだあぁぁぁぁ!』
 
 カルルの絶叫が電波に乗って流れる。

 その時、触手に絡まれていた芽依ちゃんが、イワンの方へふり向いて言った。

「カルルさん。私に何をする気ですか? 私……まだ処女なのですけど……」
「いや、何もしないから……」
「嘘です。きっと、この粘液にまみれた、ぬとぬとした触手で、私にイヤらしい事をするのですね」
「いや、粘液なんかないし、ぬとぬとしてないし……て言うか、誤解を招くような脚色するな!」
「そんな事を言っても、騙されません。よこしまな欲望の詰まった触手を、私のロボットスーツに潜入させようと企んでいますね?」
「企んでないし……それからこれは触手じゃなくて、連続体マニピュレーターと言って……」
「そして、潜入した変態触手が、私の肌をはい回るのですね」
「だから、触手じゃなくて、連続体マニピュレーターだと言っているだろう!」
「そして、私は、処女を奪われてしまうのですね」
「やらないと言っているだろ!」
「でも、そんな事はさせません。私はその前に舌をみます」
「わああ!! 舌を噛むのはよせ!」
『そうよ、芽依ちゃん。舌を噛むことはないわ。なぜなら私たちがあなたを助けるからよ』
『アーニャさん……』
『行くわよ! みんな』

 アーニャの号令と同時に、上空で待機していた菊花隊が一斉に急降下を開始した
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