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第八章

戦闘開始

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 夜明けを待って、僕達はドームの手前まで来た。
 当然の事ながら、帝国兵が僕らの前に立ちふさがる。
 ちなみに途中に仕掛けてあった爆弾はすでに爆破処理した。
 ドローンが見つけた狙撃兵もすべて片付けてある。

 さてと、敵の戦力は?

 歩兵百人、騎兵七人、砲兵五人と青銅砲一門。
 歩兵の武器は、フリントロック銃ばかりではなかった。自動小銃AK47を持っている者が五人いる。
 バリケードの向こうには携帯対戦車擲弾発射器RPG-7らしき武器があるのを確認。
 たぶん、隠しているつもりだろうけど、こっちは上空のドローンからお見通しだ。

 こっちの戦力は僕のロボットスーツ一機。分身達ミールズが十二。それにミクの式神アクロ。芽衣ちゃんのロボットスーツは、まだ修理が終わっていないが、携帯対戦車擲弾発射器RPG-7にさえ気を付ければ、こっちに負ける要素はない。
 車の運転は芽衣ちゃんに任せて、安全なところに待機させてある。
 
 傍らにいる分身達ミールズの一人に声をかけた。

「キラに退去勧告を頼んでいいかい?」
「構いません。キラは亡命する事が決定したので」

 昨夜の通信の時にキラの亡命の事を話してみたところ、リトル東京は受け入れOKという事になったのだ。
 
「それより、退去でいいのですか? 降伏じゃなくて」
「あんな大勢の捕虜を抱えるのは面倒だ」
「分かりました」

 程なくして、キラの声がスピーカーから流れた。ちなみに本人は車の中で待機している。

『帝国軍に告ぐ。ただちにドーム前から退去する事を命ずる。退去するなら攻撃はしないが、あくまでもそこに留まるなら命の保証はできない』

 これで、逃げてくれれば楽なのだが……

「その声は、キラ・ガルキナだな!」

 え? 帝国軍からの返事に、僕は少し驚いた。

「また、キラの知り合い?」
「カイトさん。この声、あたしも聞き覚えがあります」
 
 ミールも? いや、そういえば僕も、どこかで聞いたような……

 映像を拡大してみた。あいつは!?

「ダサエフ……まだ生きていたのか?」
「生きてはいると思いましたが、今頃は懲罰房だと思っていました」

「キラ・ガルキナ! どういうつもりだ? 帝国を裏切る気か?」

 映像をさらに拡大してみると、ダサエフの階級章は少尉だった。
 二階級降格で済んだのか?
 しかし、少尉だと小隊長だろ。
 見たところ、あいつが指揮を執っているみたいだが……

『なんとでも言うがいい。帝国は私が忠義を尽くす価値もない国と判断した。よって帝国を捨てる事にしたのだ。貴様こそなんだ? あれだけの大失態をして置いて、よく軍の指揮なんかできるな』
「俺の事はどうでもいい。俺が指揮を執っているのは、昨日の戦いで中隊長が戦死したからだ。何も、問題はない」
『そうか。では、改めて聞くが、退去する気はあるか?』

 突然、銃声が鳴り響いた。
 銃弾は僕のアーマーに当たる。
 
「答えはこれだ」

 そして、戦闘は始まった。

「Pちゃん。奴らがRPG-7を使おうとしたら、すぐにドローンから爆撃してくれ」
『了解しました』

 Pちゃんの返事を通信機で確認すると、僕はICパックで浮上した。
 そのまま、突進してくる騎兵たちに正面から向かう。
 騎兵たちはフリントロック銃を一斉に撃ってきた。

『銃撃を受けました。貫通なし』

「どりゃああああ!」

 先頭にいた騎兵を、ウエスタンラリアットで吹っ飛ばした。
 さらに、剣を抜いてきた騎兵の腕を掴み、隣の騎兵に投げつける。
 次の騎兵は……
 残りの騎兵は、すでにアクロに捕まり空中に放り投げられていた。

『お兄ちゃん。お馬さんは殺さないんでしょ?』

 通信機からミクの声が流れた。

「ああ。馬は見逃してやってくれ」

 突然、僕の横を熱い何が通過した。

 RPG-7? いや、青銅砲だ。
 百メートルほど先で五人の砲兵が、次弾を装填している。

「イナーシャルコントロール、プロモーション二G」

 ショットガンを構えて、砲兵隊に肉薄……

 え? 砲兵隊は女の子ばかり?

「きゃあ! 来たー!」
「早く装填して!」
「ダメ! 間に合わない!」
「神様!」

 女子高生ぐらいの年頃の娘ばかり……可愛い娘もいる。
 今からこの娘たちを、コンバットショットガンでズタズタにするのは……ううん……

 僕はショットガンを背中に戻すと大砲を持ち上げた。

「きゃあ!」「化け物!」

 女の子達から浴びせられる恐怖の視線が痛い。

「死にたくなければ、さっさと逃げろ!」

 僕の言葉を翻訳機が訳すと、彼女たちは一目散に逃げ出す。
 持ち上げていた大砲は、銃撃してきた歩兵たちに投げつけた。
 五~六人潰れたけど男だから問題ないな。

『カイトさん!』『ご主人様!』

 ギク! 通信機からミールとPちゃんの声が……

『『なんで見逃すのですかあ!?』』
「い……いやあ、弾を節約しようと思って……」
『お兄ちゃん。前のお兄ちゃんも、そうやって女を見逃すから、しょっちゅう怪我をしたんだよ』

 ミクが通信に割り込んできた。

「そ……そうなの? わかった。今度から気を付けるよ」

 あまり、自信はないけど……
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