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事故物件

降霊術

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 優樹が霊界から霊を呼び出すには、特殊な降霊術を使います。

 その降霊方法は極秘事項のためお見せする事はできませんが、今回も霊の呼び出しに成功しました。

 え? 手抜き描写? 違います。降霊術はとても危険なのでお見せできないのです。
☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

「わしを呼んだか?」

 そこに現れたのは、九十近いお爺さん。

 もう死んでいるけどね。

「お久しぶりです。霊界には、無事にけたようですね」

 爺さんは僕の姿をしげしげと見つめた。

「おお! あの時の霊能少年か。仮死状態のわしを、安楽死させるように息子を説得してくれたのじゃな。礼を言うぞ」
「仕事ですから」
「ん?」

 爺さんの視線が樒の方に向いた。

「な!? なぜこの女がここにいるんじゃ!」

 あ! そういえば、このお爺さん、樒にヒドいことをされたと言っていたな。

「大丈夫です。彼女も、反省していますから……」
「本当かあ? それで、わしを霊界から呼び出して、何用じゃ?」
「はい。この方に呼び出すように頼まれまして……」

 千尋さんを指さした。

「ん? 誰じゃ? この女性は?」

 千尋さんは慌てて帽子とメガネ、マスクを外した。

「お爺ちゃん!?」
「おお! チイちゃんではないか」

 チイちゃん? そうか! 千尋さんって、家族からそう呼ばれているんだ。

 千尋さんは僕を睨みつけてきた。

「社さん! なんでお爺ちゃんを呼び出すのよ?」
「霊ならなんでもいいって、言ったじゃないですか」
「だけど……」
「呼び出す前に、僕は危険が伴うかもしれないと忠告しましたよ」
「いや……こういう危険とは……」

 そう。僕は霊障があって危険と言ったのではない。

 お爺さんに説教される危険があるという意味で言ったのだ。

「でも……勝手にお爺ちゃんをテレビに出したりしたら、叔父さんに怒られちゃうじゃないの」

 他人の霊ならいいのか。

「他の霊を呼び出して……」
「ええ! 僕もう疲れちゃったから、他の霊なんて呼び出せないしぃ……」

 嘘です。まだ、余力はあります。

 千尋さんは救いを求めるような視線を、樒に向けた。

「それじゃあ、あなたが……」
「ごめん。私はいろんな術が使えるけど、降霊術だけはできないの」
「そんなあ……」

 さあ、あきらめてお爺さんに説教されて下さい。
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