Dear my...

E.L.L

文字の大きさ
上 下
58 / 68

57章

しおりを挟む
俺は知っていたんだ
俺も君に言えなかったんだ

あの電話を聞いてから、ふとした瞬間に結子が消えてしまいそうな気がした

どうしたらいいのか分からなかった
照史さんに相談した
結子が誰に相談しているのかも分からなくて、曖昧になってしまったけれど
そんな口下手な俺をよく分かっている照史さんはアドバイスをしてくれた

「お前がそばにいるってことをちゃんと伝えたらいいんじゃないか?」

俺ができることは結子のそばにいること
それを伝えられたら…

でもその夜、また俺は結子が電話しているのを聞いてしまった

「もしかしたら…私、英司から離れた方がいいのかな…」

嫌だと思った
例え俺のためを思ってくれて選んだことだとしても

君が離れていくのが嫌でおれは君にプロポーズしようとしたんだ
俺は多分君が思ってるほどいい人間じゃない
何をしてでも失いたくなかったんだ



「照史さん、俺知ってたみたいなんです…」

「は?」

「結子が病気なの…知ってて、結子がもしかしたら離れるかもしれないって…思ったから…だから俺…」

「だからって離れるなんてそんな…」

「電話で…話してるの…聞いちゃって…離れた方が…って…俺、すごく嫌で…でも今回結子が黙っていたのも、俺のためって…分かったんです、やっと…その、多分、本当の意味で」

照史さんが呆然としている

「それを押し切って、俺は…」

だからこそ俺はしっかりしなくてはならない
彼女が俺といることを選択したのが正しいと証明するために
きっとそんなことはまた言い訳に過ぎないんだろうけど

「照史さん」

「…なんだ?」

「俺はやっぱり結子から離れるつもりないです」

「…おう」

「結子は…俺が、結子をどれだけ好きか分かっていないです」

「おまっ
ちょっと
何でいつもは言葉にするの苦手なのに唐突に異常にストレートなこと言うの!」

何故か照史さんの方が照れている

「…お前、記憶戻ったのか」

「多分…です
デートの細かいこととかは…ちょっと自信ないですけど…多分大事な事は…大分…
それから…あの…」

俺は少し躊躇ったけど言うのをやめた

「やっぱり、いいです」

「おい、気になるだろう」

「あら、今日来てたの?」

その時小笠原先輩が花を抱えてきた
病室に生け花などは良くないからと造花のようだ

「造花がいいか分からないけど、少しでも部屋を明るく出来たら…
結子綺麗なもの好きでしょ
英司くん、飾ってくれる?」

確かにすごく綺麗だ
早く結子に見せてあげたい
小笠原先輩から受け取ると俺は急いで飾りに行った
しおりを挟む

処理中です...