Dear my...

E.L.L

文字の大きさ
66 / 68

番外編 afterstory

しおりを挟む
今日は前に行きそびれたショートケーキを食べに行く
念入りに化粧をして、変なところがないか何度も鏡の前で確認する
何回見てもそわそわしてしまう
落ち着かなきゃ
早めに着くように家を出ると玄関のすぐ横に人影があってビックリする

「駅で待ち合わせだったでしょ?!
な、何で?」

「悪い…何か、ちょっと、待ちきれなくて…」

昔付き合ってた時は、待ち合わせ時間に来ない時もあったし連絡が付かなくて何してるかと思えば写真を撮りに行っていたのことが後からわかる時もあった
写真を撮るのは一瞬を切り取ることだから、その時でないといけないのは分かるけど…
連絡が欲しかったし、やっぱり何度もあるのは辛かった
そんな時ばかりではなかったけど終わりの方はそんな記憶ばかりが降り積もっていた


連れてきてくれたカフェは木目調で木の香りがほんのり漂っていた
落ち着く

「ここ、ちょっと前にできたんだけどクリームが美味しいんだよ
甘すぎなくてさ」

「本当にスイーツのお店詳しいわよね」

照史はブラックコーヒーといちごタルトを注文する
私は紅茶とショートケーキを選んだ
照史は取り皿を頼んでいて、タルトが来ると半分に切って私にくれた

「いちご、好きだよな?」

「…ありがとう」

そういえば

「ねぇ、甘いもの苦手?」

「え?」

「いつもブラックコーヒーだし…」

一緒に行く時以外は甘いものを食べてるのを見たことがあまりなかった気がする

「…」

照史が目を泳がせる

「…もしかして、私のため?」

「…」

言ったあとで恥ずかしくなる
だって照史は『おいしかった』ところに連れて行ってくれていたんだから、自発的に甘いもの食べてるに決まっている
え、私自意識過剰じゃない?

「…凛花が、美味しそうに食べるから…」

顔を上げると照史はまだ俯いている

「…いちご食べてる時幸せそうだから
知り合いがうまいって言ってた所の店の雰囲気とか飲み物とか行ってみないと分かんないじゃん…」

そのために下見して連れて行ってくれていたの?
何で教えてくれなかったの?
って言おうとして辞めた
私も聞こうとしなかったから
照史が私のこと想ってくれていたという欠片があったのに見逃してきてしまっていた
きっとまだまだ沢山あるかもしれない
優しいところが好きだと思っていたくせに、全然分かってなかったのかも
私たちはもっと話すべきだったのかもしれない
時間は有限だけど、これは時間をかけるべきところだ

「ねぇ照史」

「ん?」

「このケーキ、本当に美味しい」

「おう」

「あのね」

「うん」

「友達がね、美味しいコーヒー豆をお土産にくれたの
飲みに来ない?」

あなたともっと話したいの
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

雪とともに消えた記憶~冬に起きた奇跡~

梅雨の人
恋愛
記憶が戻らないままだったら…そうつぶやく私にあなたは 「忘れるだけ忘れてしまったままでいい。君は私の指のごつごつした指の感触だけは思い出してくれた。それがすべてだ。」 そういって抱きしめてくれた暖かなあなたのぬくもりが好きよ。 雪と共に、私の夫だった人の記憶も、全て溶けて消えてしまった私はあなたと共に生きていく。

処理中です...