Dear my...

E.L.L

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番外編 memory1

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今日は結子ちゃんとのデート、のはずが俺がカメラを取り出してしまったからに気づけば夢中になってしまっていた
結子ちゃんは少し離れたところや俺の隣で紫陽花を見ている
紫陽花が綺麗なことで有名な場所なのだが、なかなか天気に恵まれずやっと晴れたのだ

「同じ土なのに、なんで花の色が違うんだろう…?」

「生命の神秘だね」

とか話してるまでは良かったんだ
しかもハッと気づいたきっかけが、鼻の頭に落ちてきた水だったのだ
しかも落ちてきたのは1粒だったはずなのにいきなり土砂降りのように激しく降ってくる

「英司くん!」

結子ちゃんが慌てて隣まで走ってきてカーディガンを脱いで俺のカメラに被せた
俺は急いでキョロキョロ見渡して、目に入った屋根のあるベンチのところまで結子ちゃんと走った
まだ少し肌寒いから羽織ってきたのに、俺の大事なもののために躊躇いなく被せてくれる
俺はカメラのレンズだけ先に手早くしまうと結子に俺の羽織っていた上着を被せた
少し濡れてしまってるけどないよりはマシだろう
それからカメラをしっかり確認してからカバンにしまう

「天気予報、今日は晴れだったのに」

結子ちゃんが口をとがらせる
髪が纏まりにくいから雨は嫌いだと言っていた

「通り雨、かな」

「うーん…
あ!ねぇ、寒くない?」

「大丈夫だよ
あの…カーディガン、ありがとう…」

「ううん
カメラ壊れてなくてよかった」

結子ちゃんが嬉しそうに笑う

「あの…ごめん…」

「え?」

「カメラばっかりで…」

結子ちゃんはびっくりしたような顔をしている

「なんで?」

「なんでって…紫陽花、楽しみにしてた…よね?」

「うん
英司くんと見たら楽しいだろうなって思ったけど、楽しかったよ
雨、降ってきたのはちょっとだけど…」

最後にいたずらっぽく笑う

「あーあ
髪巻いてきたのに取れちゃった」

結子ちゃんが少し残念そうに言った
小笠原先輩に教えてもらった巻き方をしたんだとさっき話してたっけ

「…俺は、今の雨は…嫌いじゃない」

「そうなの?」

「だって、雨降らなかったら…気づかずに…ずっと写真、撮っていたかも…」

「いいんだよそれは!」

「良くないよ
だって、今日は…あの…」
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