Dear my...

E.L.L

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番外編 memory2

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だって今日は

「え?
何かあったっけ?」

女の子とこんなに普通に話せるのは君だけだと君はきっと知らない
高梨先輩の写真展からこれが3回目のデート
言おう言おうと毎回決めて家を出るのにずっと言えない
このまんまではダメだ!
最初デートに誘うのだって君に言わせてしまったんだ
今回言えなかったら、カメラを捨てるんだ!
と言う決死の思い出挑んだのに
そうなったら帰り道に売ってやるぞというために持ってきたカメラに夢中になるなんて何て本末転倒な…

「いや…あの…」

「…?」

キョトンとしている表情も可愛いなと思う
なんだろう結子ちゃんの周りは何かすごく綺麗な気がする
空気が勝手に洗浄されている気がする
…なんか俺気持ち悪いかもしれない

「英司くん、髪の毛濡れちゃってるよ
さっきカメラ抱えていたからかな」

結子ちゃんはハッと気づいたように言うとカバンからハンカチを取り出して渡してくれる

「あ…ありがとう…」

「…雨、上がらないね」

結子ちゃんがベンチに座って空を見上げている
通り雨かと思ったけど中々長い気がする
このままだと風邪引いちゃうかもしれないけど、雨の中走るともっと冷えてしまわないだろうか?

「でも、私も今日の雨はいつもより嫌いじゃない…かも…」

結子ちゃんが機嫌良さそうに足をぶらぶらさせる

「…」

正面からより横から見た顔の方が何となく大人っぽい気がする
こんな素敵な人のそばに居たいだなんてそんな贅沢俺に許されるのか?
俺の片思いの可能性だって…むしろその可能性の方が…でもデートに3回も行ってくれているし、もしかしたら…いや、でも…
考えてはダメだ
男だろ!
俺は覚悟を決めて口を開―

「あの…」

「んぇ?」

思わず変な声が出る
舌噛みそうだった
顔から火が出そうだ
結子ちゃんが俺を見てビックリしたような顔をしてから微笑んだ
それから息をゆっくり吐き出す

「何か…ちょっとリラックスしちゃった」

「…え…」

「英司くん!」

突然大きな声で呼ばれる

「はい!」

「好き!私と、付き合ってください!」

「ええ!!」

「…」

俺たちは自分の驚いた顔を相手の瞳の中に見た

「…あ…ダメ?」

先に結子ちゃんが目を逸らして俯いた

「ちょ、違っ…待っ…俺…!」

軽くパニックになっている
俺は深呼吸をする

「あの、結子ちゃん」

「…」

結子ちゃんがこっちを向いてくれた
ちょっと泣きそうになっている
何してんだ俺

「あの、やり直させて…欲しい…」

「え?」

俺の大事なものを、迷わず大事にしてくれる所も、俺が言葉にするのを待ってくれるところも全部全部

「好きなんだ」

顔が熱くなる
まだ夏には早いのに

「お、俺、ずっと…言おうとしてて…言えなくて…本当は…今日絶対、言うって思ってて…言えなかったら、カメラを手放そうってくらい決めてて…でも…あの…」

いつも君に先を越されてばかりの情けない俺でいいのなら

「付き合ってください!!」

頭を下げる
頭がクラクラする気がする

「お、お願いします」

頭をあげると結子ちゃんも頭を下げていた
俺も慌てて再び下げる

「え、英司くん、もう頭上げて!」

結子ちゃんが焦ったように言う
顔を上げると頬がほんのり染っている結子ちゃんがいた

「ありがとう」

微笑んだ彼女はさっき撮っていた紫陽花が霞むくらい綺麗だった
カメラしまってしまったのが残念だ

「あ、」

「え?どうしたの?」

「先に…言わせてしまったから…カメラ売らなきゃ…」

「そんな事しなくていいよ」

結子ちゃんがクスクス笑う

「でも…」

「やり直したから!大丈夫!」

可笑しそうに笑う

「雨ね、今日のは嫌いじゃないのは英司くんがいるからだよ」

「え?」

「英司くんの優しいところ、やっぱり好きだなって…思ったから」

結子ちゃんが俺の上着をちょっとつまんで言った
優しいのは君の方だと思う
残念だがそれは譲れない
ほんのり染っている頬にそっと触れる
パチパチと瞬きした結子ちゃんが俺を見上げた

「…好きだよ」

俺はもう一度言うと、結子ちゃんの桜色の唇にそっと口付けた

やっと結子ちゃんに先越されなかったかな
たまには少しくらいかっこつけたい

顔を上げると結子ちゃんが真っ赤な顔をしていた

「…私の方が好きだもん…」

前言撤回しよう
俺は多分きっと永遠に結子ちゃんに勝てない
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