62 / 91
🌹『翠玉のケエス:芽吹』🌹 本編 💎 The EMPRESS:R 💎
Drop.020『 The EMPRESS:R〈Ⅱ〉』【1】
しおりを挟む雷は、自身を悩ます恋の成就を真摯に願っているらしい法雨に、優しげな声で言う。
「法雨さんの言葉は、いつもお優しいですね。――……ところで、――法雨さんは、“普通の恋愛らしいモノをあまり経験していない”、との事でしたが、――そんな法雨さんの恋は、波乱万丈な恋が多かったのですか?」
法雨は、それに苦笑すると、言った。
― Drop.020『 The EMPRESS:R〈Ⅱ〉』―
「ふふ。――えぇ。そうですねぇ……。――波乱万丈と云えば、そうかもしれません。――清く美しい恋ができた経験は、ほとんどありませんでしたので……」
雷は、その返答に、法雨を案じる様な面持ちで言う。
「なるほど……。――因みに、その過去のご経験については……、――俺がお聞きしても?」
そんな雷の問いに、法雨は苦笑を深めると、手元のティーカップに視線を落としながら言った。
「そうですね……。――アタシは、構いませんけれど……。――でも、本当に、聞いて楽しい話じゃないんですよ? ――まぁ、“こういう恋愛はされない方が良い”という参考には、なるかもしれませんけど……。――そんな話でも、お聞きになってくださいます?」
雷は、それに穏やかに笑むと、その身を改めて法雨に向ける様にして、ゆっくりと頷いた。
「はい。是非」
法雨は、それに、ふ、と苦く笑むと、承諾の意を示し、そして――、己の記憶に刻まれた、“穢れ荒んだ悪しき恋物語”を、ゆっくりと紡ぎ出した。
「――……何と言いましょうか、――別に、ひとつずつ語るようなモノでもないので、まとめて言ってしまいますけれど……。――アタシのしてきた恋愛は、そのほとんどが……、――“相愛でない”モノが、ほとんどだったんです……」
紡ぎながら、当時の事を思い出した法雨は、ひとつ溜め息をつく。
「――アタシは……、求められる事が好きだったんです……。――例え、それが“どのような形であれ”、――自分を必要としてもらえる事、自分を欲してもらえる事、――アタシをアタシとして見てくれて、他の誰でもない、“アタシ”を求めてもらえる事を、心から欲していたんです。――ですから、“何をするにも”、第一にアタシを選び、アタシという存在を真っ先に求めてくれる人に、悉く、恋をしてしまったんです。――でも……」
法雨はそこで、しばし呆れた様に、ふ、と息を吐くと、美しい装飾が描かれたカップの淵を、物悲し気に親指で撫でた。
「――でも……、――今思えば、それは、――“恋”なんかじゃなかった……。――それは、“求められている”という充足感への、――ただの“依存”だったんです……。――とは云え、最初はそんな事にも気付けず、“これが恋というものなんだ”と思い込んでいました。――ですから、身体を求められる事も、それほどアタシを愛してくれている証だと、思い込んでしまったんです」
そして、そんな当時の法雨は、最初こそ、“特定の誰か”と恋仲である事が多かったのだが――、次第に、その“一般的な形態”は崩れていった。
だが――、遅かったのだ――。
0
あなたにおすすめの小説
僕のポラリス
璃々丸
BL
陰キャでオタクなボクにも遂に春が来た!?
先生からだけで無く、クラスカースト上位の陽キャ達も、近隣に幅を効かせる不良達からも一目置かれるまるで頭上の星のようなひとだ。
しかも、オタクにまで優しい。たまたま読んでいたボクの大好きなコミック「恋色なな色どろっぷす」を指差して、「あ、ソレ面白いよね」なんて話しかけられて以来、何かと話しかけられるようになっていった。
これだけだとたまたまかな?と思うけど距離も何かと近くて・・・・・・コレ、ってボクの勘違い?それとも?
・・・・・・なぁーんて、ボクの自意識過剰かな。
なんて、ボクの片思いから始まる甘酸っぱいお話。
みたいなBSS未満なお話。
たとえ運命じゃなくても、僕は
mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。
たとえ運命から背を背けようとも」
音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。
努力家の先輩αと、
運命の番だと告げられた天才α。
運命か、愛情か――
選ぶのは、僕自身だ。
※直接的な描写はありません。
役を降りる夜
相沢蒼依
BL
ワンナイトから始まった関係は、恋じゃなくて契約だった――
大学時代の先輩・高瀬と、警備員の三好。再会の夜に交わしたのは、感情を持たないはずの関係だった。
けれど高瀬は、無自覚に条件を破り続ける。三好は、契約を守るために嘘をついた。
本命と会った夜、それでも高瀬が向かったのは――三好の部屋だった。そこからふたりの関係が揺らいでいく。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
カーマン・ライン
マン太
BL
辺境の惑星にある整備工場で働くソル。
ある日、その整備工場に所属不明の戦闘機が不時着する。乗っていたのは美しい容姿の青年、アレク。彼の戦闘機の修理が終わるまで共に過ごすことに。
そこから、二人の運命が動き出す。
※余り濃い絡みはありません(多分)。
※宇宙を舞台にしていますが、スター○レック、スター・○ォーズ等は大好きでも、正直、詳しくありません。
雰囲気だけでも伝われば…と思っております。その辺の突っ込みはご容赦を。
※エブリスタ、小説家になろうにも掲載しております。
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
君が僕を好きなことを知ってる
大天使ミコエル
BL
【完結】
ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。
けど、話してみると違和感がある。
これは、嫌っているっていうより……。
どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。
ほのぼの青春BLです。
◇◇◇◇◇
全100話+あとがき
◇◇◇◇◇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる