64 / 91
🌹『翠玉のケエス:芽吹』🌹 本編 💎 The EMPRESS:R 💎
Drop.020『 The EMPRESS:R〈Ⅱ〉』【3】
しおりを挟む
「――………………。――アタシには……、過去に……、――そう思うきっかけになった……、――オオカミ族の恋人が居たんです……」
「――………………」
「――なので、アタシ……、――“その男”を最後に、――恋愛そのものも、長い間、避けてきました……」
そう紡ぐ法雨に、雷は幾度か緩く頷くと、静かに言った。
「――つまり……、――法雨さんは、その男に、――“そう思うほどの事”を、されたのですね……」
法雨は、それにゆっくりと頷くと、ティーカップで煌めく夕陽色の水面を、ぼうっと見つめた。
「――そう……ですね……。――酷い事は……、されも、言われも、――沢山、しましたわね……」
その当時――、法雨は大学生であった。
そして、“その男”は、法雨よりやや年上のオオカミ族で、年齢にそぐわぬほど心が幼稚である上に、酷く荒い性格をしており、男を知るほとんどの人々が嫌煙するような男であった――のだが、希望を失い、平凡な日々に飽き、新鮮な刺激が欲しくなっていた当時の法雨の曇った瞳には、災難にも、その男が、酷く魅力的に映ってしまったのであった。
「――“あの男”は、アタシが人生で出会った中でも、――群を抜いて最低最悪の男でした……」
始めのうちこそ、法雨を貶すような事を言いながら、好きなように法雨で“処理をする”程度に留まっていたものの――、そんな扱いを受けながらも従順に己を慕い、命令通りにすべてを受け入れる法雨に、嗜虐心が煽られたのか――、男は、法雨を“使った”過激な処理をさらにエスカレートさせてゆき、最終的には、単なる暴力をも振るうようになっていった。
「――でも、それに耐えられなくなった頃には、アタシも一人では逃げられなくなっていたので……、――幸いにも、アタシの状況を察した友人たちが、協力して助けてくれたお蔭で、――無事、その男とは完全に縁を切る事ができたんです……」
「――そうだったのですね……。――では、つまり、その様な経験があったから、――“オオカミは嫌い”だと……」
雷の言葉に、法雨は、またゆっくりと頷く。
「――もちろん、――その前から、オオカミ族の人との恋は、何故か悪い思い出ばかりだったものですから、――特別、オオカミ族の男性を警戒するようになってしまったのは、その男の事だけが原因というわけではないのですけれど……、――でも、これだけ長い時間が経っても、つい、身構えてしまうようになってしまったのは、――やっぱり、あの男の事が大きいのだと思います……」
しかし、その悪夢の様な経験をした後も、法雨は、とある“心地”が忘れられず、愛無き色の纏う日々までは、終わらせる事ができなかった――。
Next → Drop.021『 The EMPRESS:R〈Ⅲ〉』
「――………………」
「――なので、アタシ……、――“その男”を最後に、――恋愛そのものも、長い間、避けてきました……」
そう紡ぐ法雨に、雷は幾度か緩く頷くと、静かに言った。
「――つまり……、――法雨さんは、その男に、――“そう思うほどの事”を、されたのですね……」
法雨は、それにゆっくりと頷くと、ティーカップで煌めく夕陽色の水面を、ぼうっと見つめた。
「――そう……ですね……。――酷い事は……、されも、言われも、――沢山、しましたわね……」
その当時――、法雨は大学生であった。
そして、“その男”は、法雨よりやや年上のオオカミ族で、年齢にそぐわぬほど心が幼稚である上に、酷く荒い性格をしており、男を知るほとんどの人々が嫌煙するような男であった――のだが、希望を失い、平凡な日々に飽き、新鮮な刺激が欲しくなっていた当時の法雨の曇った瞳には、災難にも、その男が、酷く魅力的に映ってしまったのであった。
「――“あの男”は、アタシが人生で出会った中でも、――群を抜いて最低最悪の男でした……」
始めのうちこそ、法雨を貶すような事を言いながら、好きなように法雨で“処理をする”程度に留まっていたものの――、そんな扱いを受けながらも従順に己を慕い、命令通りにすべてを受け入れる法雨に、嗜虐心が煽られたのか――、男は、法雨を“使った”過激な処理をさらにエスカレートさせてゆき、最終的には、単なる暴力をも振るうようになっていった。
「――でも、それに耐えられなくなった頃には、アタシも一人では逃げられなくなっていたので……、――幸いにも、アタシの状況を察した友人たちが、協力して助けてくれたお蔭で、――無事、その男とは完全に縁を切る事ができたんです……」
「――そうだったのですね……。――では、つまり、その様な経験があったから、――“オオカミは嫌い”だと……」
雷の言葉に、法雨は、またゆっくりと頷く。
「――もちろん、――その前から、オオカミ族の人との恋は、何故か悪い思い出ばかりだったものですから、――特別、オオカミ族の男性を警戒するようになってしまったのは、その男の事だけが原因というわけではないのですけれど……、――でも、これだけ長い時間が経っても、つい、身構えてしまうようになってしまったのは、――やっぱり、あの男の事が大きいのだと思います……」
しかし、その悪夢の様な経験をした後も、法雨は、とある“心地”が忘れられず、愛無き色の纏う日々までは、終わらせる事ができなかった――。
Next → Drop.021『 The EMPRESS:R〈Ⅲ〉』
0
あなたにおすすめの小説
僕のポラリス
璃々丸
BL
陰キャでオタクなボクにも遂に春が来た!?
先生からだけで無く、クラスカースト上位の陽キャ達も、近隣に幅を効かせる不良達からも一目置かれるまるで頭上の星のようなひとだ。
しかも、オタクにまで優しい。たまたま読んでいたボクの大好きなコミック「恋色なな色どろっぷす」を指差して、「あ、ソレ面白いよね」なんて話しかけられて以来、何かと話しかけられるようになっていった。
これだけだとたまたまかな?と思うけど距離も何かと近くて・・・・・・コレ、ってボクの勘違い?それとも?
・・・・・・なぁーんて、ボクの自意識過剰かな。
なんて、ボクの片思いから始まる甘酸っぱいお話。
みたいなBSS未満なお話。
たとえ運命じゃなくても、僕は
mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。
たとえ運命から背を背けようとも」
音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。
努力家の先輩αと、
運命の番だと告げられた天才α。
運命か、愛情か――
選ぶのは、僕自身だ。
※直接的な描写はありません。
役を降りる夜
相沢蒼依
BL
ワンナイトから始まった関係は、恋じゃなくて契約だった――
大学時代の先輩・高瀬と、警備員の三好。再会の夜に交わしたのは、感情を持たないはずの関係だった。
けれど高瀬は、無自覚に条件を破り続ける。三好は、契約を守るために嘘をついた。
本命と会った夜、それでも高瀬が向かったのは――三好の部屋だった。そこからふたりの関係が揺らいでいく。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
君が僕を好きなことを知ってる
大天使ミコエル
BL
【完結】
ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。
けど、話してみると違和感がある。
これは、嫌っているっていうより……。
どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。
ほのぼの青春BLです。
◇◇◇◇◇
全100話+あとがき
◇◇◇◇◇
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる