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🌹『翠玉のケエス:芽吹』🌹 本編 💎 The EMPRESS:R 💎
Drop.021『 The EMPRESS:R〈Ⅲ〉』【2】
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「それほどの事をしたのですから、何を感じてもらえなくても、当然です。――それに、お聞きした以外にも、多くの悪行を働いたらしい、とは云え……、――法雨さんの件だけであっても、その程度の罰では足りてはいないでしょうから、――“彼方”に渡ってからも、引き続き、罰を受け続けているはずです」
「えぇ、そうですね。――きっと、そうだと思います」
法雨は、雷に頷きながらそう言うと、しばしの間を置いてから、気分を変える様にしてひとつ息を吐いては言った。
「――さてと、――それでは、アタシの“恋愛講座”は、これで終わりです。――と、云うより、――すっかりアタシの自分語りを聞かせてしまいましたわね。ごめんなさい」
雷は、そうして苦笑する法雨に優しく微笑むと、礼を告げながら、軽く頭を下げた。
「いえ、こちらこそ。――嫌な思い出でしたでしょうから、お辛い想いをさせてしまいましたが、――それでも、様々お話し頂き、ありがとうございました」
「ふふ。恐れ入ります。――アタシの方こそ、こんなお話でも、真摯に聞いてくださって、本当にありがとうございました」
そして、しばし礼を贈り合ったところで、法雨はひとつ笑むと、言った。
「――でも……、実らせるのが難しいとしても、――雷さんの様な方に恋をしてもらえるなんて、――誰もがその方を羨むでしょうね」
それに、雷は苦笑して言う。
「それは、どうでしょうか。――法雨さんは、俺を高く見過ぎておられるかと」
法雨は、そんな雷に、にこりと笑んで応じる。
「そんな事ありませんわ。――こうしてお話を聞いて頂いた中だけでも、雷さんの優しさや誠実さを痛いほど感じましたもの。――きっと、誰に尋いても、“その通りだ”って頷いてくれます」
「――………………。――そう、でしょうか……」
「もちろんです。――雷さんが、どうして、その方にお気持ちを伝えられないのかは、流石に不躾なので、お尋ねしませんけれども……。――ただ、どのような状況であれ、――雷さんの様な方に恋をされたら、誰もが嬉しく思うはずです」
「――“嬉しく”……」
雷は、そう微笑みながら断言する法雨を、しばし遠くを見やる様にして見つめた。
「えぇ。――そうです」
雷の瞳には、そう紡ぐ法雨の笑顔が映る。
眩し気にその笑顔に目を細めた雷は、何かを思う様にしてひとつ瞬きをすると、視線を反らし、冷め始めたコーヒーに口をつけた。
そして、ひとつ間を置き、意を決したように短く息を吸うと、ゆっくりと顔を上げ、雷は言った。
「――法雨さん……」
「はい」
法雨は、それに、首を傾げながら柔らかく笑んで応じる。
雷は、その法雨の微笑みを真っ直ぐに見つめると、ゆっくりと続けた。
「法雨さんは、先ほど、――俺に恋をされたら、――“その人は嬉しく思うはず”と、仰ってくださいましたね」
「えぇ」
法雨は、その問いに、一切の迷いなく頷く。
雷は、その法雨に、慎重に言葉を重ねてゆく。
「――では……、――法雨さんが、そう仰ったのは……、――それが……、――法雨さんご自身の」
その中――。
「――あ˝ぁ˝め˝ッ!! ――ゆ˝る˝すま˝ぁ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝じッ!!!!!」
不意に事務所の扉が勢いよく開け放たれたかと思うと、続いてその場に吹き放たれた濁音を伴う荒んだ暴風により、雷が慎重に紡ぎ重ねていた言の葉たちは、無残にかき散らされてしまった。
そして、雷のとある決意をも流してしまいそうなほどの大量の雨水で滝行をしてきたらしい京は、その大声と共に、ずぶ濡れで帰還した。
「えぇ、そうですね。――きっと、そうだと思います」
法雨は、雷に頷きながらそう言うと、しばしの間を置いてから、気分を変える様にしてひとつ息を吐いては言った。
「――さてと、――それでは、アタシの“恋愛講座”は、これで終わりです。――と、云うより、――すっかりアタシの自分語りを聞かせてしまいましたわね。ごめんなさい」
雷は、そうして苦笑する法雨に優しく微笑むと、礼を告げながら、軽く頭を下げた。
「いえ、こちらこそ。――嫌な思い出でしたでしょうから、お辛い想いをさせてしまいましたが、――それでも、様々お話し頂き、ありがとうございました」
「ふふ。恐れ入ります。――アタシの方こそ、こんなお話でも、真摯に聞いてくださって、本当にありがとうございました」
そして、しばし礼を贈り合ったところで、法雨はひとつ笑むと、言った。
「――でも……、実らせるのが難しいとしても、――雷さんの様な方に恋をしてもらえるなんて、――誰もがその方を羨むでしょうね」
それに、雷は苦笑して言う。
「それは、どうでしょうか。――法雨さんは、俺を高く見過ぎておられるかと」
法雨は、そんな雷に、にこりと笑んで応じる。
「そんな事ありませんわ。――こうしてお話を聞いて頂いた中だけでも、雷さんの優しさや誠実さを痛いほど感じましたもの。――きっと、誰に尋いても、“その通りだ”って頷いてくれます」
「――………………。――そう、でしょうか……」
「もちろんです。――雷さんが、どうして、その方にお気持ちを伝えられないのかは、流石に不躾なので、お尋ねしませんけれども……。――ただ、どのような状況であれ、――雷さんの様な方に恋をされたら、誰もが嬉しく思うはずです」
「――“嬉しく”……」
雷は、そう微笑みながら断言する法雨を、しばし遠くを見やる様にして見つめた。
「えぇ。――そうです」
雷の瞳には、そう紡ぐ法雨の笑顔が映る。
眩し気にその笑顔に目を細めた雷は、何かを思う様にしてひとつ瞬きをすると、視線を反らし、冷め始めたコーヒーに口をつけた。
そして、ひとつ間を置き、意を決したように短く息を吸うと、ゆっくりと顔を上げ、雷は言った。
「――法雨さん……」
「はい」
法雨は、それに、首を傾げながら柔らかく笑んで応じる。
雷は、その法雨の微笑みを真っ直ぐに見つめると、ゆっくりと続けた。
「法雨さんは、先ほど、――俺に恋をされたら、――“その人は嬉しく思うはず”と、仰ってくださいましたね」
「えぇ」
法雨は、その問いに、一切の迷いなく頷く。
雷は、その法雨に、慎重に言葉を重ねてゆく。
「――では……、――法雨さんが、そう仰ったのは……、――それが……、――法雨さんご自身の」
その中――。
「――あ˝ぁ˝め˝ッ!! ――ゆ˝る˝すま˝ぁ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝じッ!!!!!」
不意に事務所の扉が勢いよく開け放たれたかと思うと、続いてその場に吹き放たれた濁音を伴う荒んだ暴風により、雷が慎重に紡ぎ重ねていた言の葉たちは、無残にかき散らされてしまった。
そして、雷のとある決意をも流してしまいそうなほどの大量の雨水で滝行をしてきたらしい京は、その大声と共に、ずぶ濡れで帰還した。
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