治療と称していただきます

茜菫

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第一部

いまだからできること(6)*

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 二人は人目を避けて足早に、人が少ない道を選んでエレノーラの部屋に向かう。だれにも遭遇せずに部屋にたどり着き、レイモンドはほっと胸をなで下ろした。

「レイモンドったら、……ふふっ、ずっと前かがみで……ふふっ」

「だれのせいだと……」

 レイモンドが少し恨めしげに目を向ければ、エレノーラは舌を出していたずらっぽく笑う。部屋に入ると、レイモンドはすぐにエレノーラを抱きしめた。

「レイモンド、すてきね」

 エレノーラは大袈裟によろこび、じっと期待するような眼差しでレイモンドを見つめる。その期待に応えるように口づけると、エレノーラは目を閉じて首に腕を回し、鼻を鳴らした。

「ん……」

 エレノーラは甘い声をもらし、何度も口づけ、舌を交わらせた。レイモンドが扉に押しつけるような形で深く口づけると、唇を離したエレノーラは目をうるませ、うっとりと惚けた表情を浮かべる。

(今日は……いける気がする……!)

 レイモンドがこのままの流れでと思ったところで、そんな考えなどお見通しだと言わんばかりにエレノーラの手が彼の股間に伸びた。

「う……っ」

 そのまますりすりとなでられて思わず声をもらすと、エレノーラはにやりと笑う。わざとこのタイミングを狙っていたに違いない。

「いい子、いい子」

「っ、エレノーラ……」

 しゃがみ込んだエレノーラは少し窮屈になったそこに、ちゅっと音を立てながら何度も口づける。レイモンドは上目遣いで見上げられ、自分の唇をぺろりとなめた舌を見て、いままで何度もそれに与えられた快感を思い出して息を呑んだ。

「レイモンド?」

 目を細めたエレノーラに名を呼ばれて、彼は観念してベルトに手を伸ばす。先ほどの流れであれば、確実にレイモンドが主導権を握れたはずだろう。

(いや、僕は……)

 レイモンドはそれを、しなかったのかもしれない。どこかでそれを認めたくなくて、できなかった理由を必死でひねり出していいわけするが、この展開を望んでいたのかもしれない。

「っ、エレノーラ……」

 レイモンドが前をくつろげると、エレノーラがふくらんだ下着の上から形を確かめるように手をはわせた。エレノーラはどこをどうすればレイモンドがよろこぶのかを熟知している。唇が寄せられ、そこからのぞいた舌先が触れそうで触れずに焦らされ、レイモンドはうめく。

「ねえ……いい?」

 甘えるような声にうなずくと、エレノーラは嬉々として下着を引きずり下ろし、陰茎に唇を寄せた。すでに先走りを垂らしたそれに舌先つっとはわせ、唇で柔らかく食む。陰嚢に手が添えられ、むずむずするような刺激に息を吐くと、エレノーラは舌を裏筋に伝わせ、鈴口にたどり着くと咥えこんだ。

「は……っ……」

 レイモンドは舌をはわされ、時折吸われて声がもれる。反応を上目遣いで確認しながら、エレノーラは楽しそうに笑っていた。

「ふ……あっ」

 奥まで咥えこまれて喘ぎ、レイモンドは慌てて自分の口を塞ぐ。エレノーラはその反応に気を良くしたようで、そのまま攻め立てた。小さく息を吐きながら必死で声を抑えるが、時折声がもれてしまい、エレノーラがよろこんで目を細める。

 レイモンドがそろそろまずいと思っていると、それを感じとったらしいエレノーラはきゅっと根元をつかんだ。その刺激に、レイモンドはうわっと情けない声を上げてしまう。

「っ、エレノーラ!」

「だって、ダメじゃない」

 口を離したエレノーラは唇を尖らせた。なにがと不満げな目で問えば、にやりと笑ったエレノーラは立ち上がり、レイモンドの手を引く。レイモンドが大人しく従うと、ベッドの縁に座らされてそのまま上体を押し倒された。

「よいしょっ」

 エレノーラはスカートを抱えてレイモンドに跨る。自分のスカートを下ろし、その中に手を突っ込んで下着を脱いだ。

「今日は、ぜーんぶ私の中に出してくれないとね?」

「……っ」

 レイモンドはスカートで隠されたまま陰茎に手を添えられ、エレノーラに咥え込まれた。小さくうめき、深く息を吐きながらエレノーラの腰をつかんで支える。エレノーラはゆるゆると腰を振ってたまらないといったように甘い声をもらし、熱っぽい目でレイモンドを見つめた。

「はぁ、レイモンド……」

 エレノーラは上体を倒してぴったりと体を寄せ、胸を押しつけながらレイモンドに口づける。レイモンドはそれに応え、おたがいに舌を差し出し交わって共に快楽に酔った。

「あぁっ……はあ、気持ち、いいの……レイモンドっ」

「っ、僕も……もう……っ」

 レイモンドはエレノーラにぎゅっとしがみつくように抱きつかれ、彼女の最奥に果てる。エレノーラは恍惚とした表情で、レイモンドが果てるさまをじっと見つめていた。彼女の中は最後の一滴までほしがっているように、びくびくと震えている。レイモンドがそれに抗えずに体を震わせると、エレノーラはうれしそうに笑った。

「レイモンド……」

 レイモンドはいつも主導権を握られてばかりだが、エレノーラにしあわせそうにほほ笑まれると悪くないと思ってしまう。

「ふふ……まだまだこれから、よね?」

「あっ……ちょっと待て、エレノーラ、うあっ!?」

 思うが、少しくらいはとも思う。だがこの様子だと一生、このままなのかもしれない。
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