治療と称していただきます

茜菫

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第一部

そばにいるから(10)*

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「エレノーラ」

「レイモンドは耳、嫌だった?」

「嫌じゃないけど……その、不思議な感じが……」

「嫌じゃないのね」

 エレノーラがにやりと笑うと、レイモンドは喉を鳴らした。戸惑いが強そうだが、本気で止める気はなさそうだ。しっかり股間も張りつめていることだし、興味はあるのかもしれない。

「じゃあ、もうちょっと……」

「やっぱり、まて! 耳は……っ」

「大丈夫、大丈夫、きっと気持ちよくなれるから……ね、ちょっとだけ。先だけだから!」

 エレノーラの言葉にレイモンドは半眼になる。下半身をぎんぎんに勃たせておきながら、この表情。どこかで見た気がした。

「それ、普通……男女逆じゃないか?」

 冷めた目をしたレイモンドの言葉を聞いて、エレノーラは思い出す。妖精の森で、はじめて彼を食べた時のやり取りと同じだ。

(あの頃に比べて……私、本当に、欲深くなったわね)

 あの時、一回だけでいいと本気で思っていた。けれどいまでは一回だけじゃ足りない、だれにも譲らない、そう思っている。

(私がこんなことを思うようになっているなんて……あの頃はまったく想像もできなかったわね)

 諦めていたレイモンドとの未来が、すぐそこにある。エレノーラがその未来を手にできるようになったのは、ほかでもないレイモンドのおかげだ。レイモンドが諦めずに手を差し伸べたから、エレノーラはその手を取れた。

「いいじゃない、男だ女だなんて関係ないわレイモンド。二人で一緒に気持ちよくなって、しあわせになるんだから」

「それは……そう……」

「でしょう?」

「まあ……って、いやでも、先だけって……なにを」

「んっふっふ……こういうこと」

 エレノーラは耳元でささやきながらふっと息を吐きつけると、レイモンドは小さくうなった。耳の溝に舌先を差し入れるとレイモンドは大袈裟に体を震わせたが、息を吐くだけで抵抗しなかった。

「うぅ……っ」

 エレノーラはわざと音を立てながら舌を差し入れ、耳の裏をなめ、息を吹きかけながら、胸や腹筋を指先で弄る。

「っ、は……っ……エレノーラ……っ」

 レイモンドはびくびくと反応しながら小さく声をもらし、そのさまにエレノーラはぞくぞくした。このようにもだえるレイモンドの姿はエレノーラだけが知っていて、これから先、だれにも譲る気はなかった。

「ふふ、いまのを覚えたら、私にもしてね?」

 耳元でささやくと、レイモンドは喉を鳴らして小さくうなずいた。

「好き……愛しているわ、レイモンド……」

 エレノーラはレイモンドに抱きぴったりと体を寄せ、耳にキスをする。レイモンドは応えるように背に腕を回して抱き返した。そのまま唇を首筋に伝わせ、ゆっくりと胸へと向かい、手は胸から腹へ、そのまま太腿にはわせる。胸の頂きを唇で食んで舌でちろちろとなめると、レイモンドは小さく声をもらして名を呼んだ。

「うっ、……エレノーラ……っ」

 下着がテントを張っているが、エレノーラはあえてそこには触れなかった。

「レイモンド……ここを許すのは、私だけにしてね?」

 エレノーラは胸に頭をすり寄せ、レイモンドを見上げる。この胸に抱かれることも、なめるのも、自分だけだ。エレノーラの言葉にレイモンドは大きく息を吐いて刺激にこらえながら、うなずく。

 そのまましばらく焦らすように胸を攻め、太腿をなで続けていると、レイモンドは耐えがたくなったのか自分の手をそこに伸ばそうとした。

「自分で触ったら、触ってあげないんだから」

「……っ」

 レイモンドはすんでのところで手を引っ込め、顔を覆う。もう少し焦らそうと考えていたが、触れられたくてがまんしたレイモンドがかわいくて、期待に応えようと気合いを入れた。

 エレノーラはぬれた下着の上から陰茎に手を重ねる。布越しにそこがびくびくと震えているのがわかり、下着を引きずり下ろした。勢いよく飛び出した陰茎に手を添えると、レイモンドが声をもらす。

「あ……っ、ぁ……」

 散々焦らされたからか、ちょっとした刺激にも敏感に反応している。手でその形をなぞり、舌先をはわせると、レイモンドの腰がびくりと揺れた。エレノーラがゆるゆると根元を扱きながら、先を咥えて鈴口をなめると、レイモンドは小さく喘いで息を吐く。

「う、ぁっ」

 エレノーラが吸いついくと、レイモンドは腰を揺らして喘いだ。

「っ、なめなくて、いいから……もうっ」

 しばらくそれを続けられ、レイモンドはもう耐えられないといったように声を上げた。エレノーラは口を離し、上体を起こす。するとすぐさまレイモンドがエレノーラの肩をつかんでベッドに押し倒した。余裕なく、いつもより荒々しく求めるレイモンドの姿に、エレノーラは胸が高鳴りつつ両手を広げて受け入れた。

「ん……きて、レイモンド……」

 エレノーラの言葉に目を見開いたレイモンドは、一度唇に唇を重ねてすぐに離した。両脚をつかんで大きく開かせると、秘裂に自身を押し当てる。エレノーラはそのまま一気に奥まで穿たれ、身を仰け反らせた。

「あっ……は……っ」

 エレノーラは挿入されただけで達してしまった。散々焦らされて余裕がなくなっていたのは、エレノーラも同じだったようだ。エレノーラはびくりと体を震わせ、それに気づいているのかいないのか、レイモンドが腰をつかんでがつがつと抽送する。

「ん、っあ、レイモンドぉ……っ」

「はっ、……エレ、ノーラ……っ」

 エレノーラが甘く名を呼ぶと、レイモンドは荒い息の合間に名を呼び返した。

(ああ、しあわせ……)

 エレノーラはなにもかもどうでもよくなった。いま、この二人の時間がずっと続けばいいと思う。レイモンドは低く声をもらし、エレノーラの最奥で果てる。エレノーラは吐き出された精に、体が満たされていくような気がした。

「はぁ……」

 レイモンドは荒く息を交えながら彼女にキスをすると、横にごろりと寝転がる。対してエレノーラは身を起こし、力をなくした彼の陰茎をなめた。

「エレノーラ……」

 なめてきれいにすると、それは再び勃ちあがった。にやりと笑ったエレノーラは嬉々として跨り、陰茎に手を添え、秘裂にあてがってゆらゆら腰を揺らすと、レイモンドは期待するような目で彼女を眺める。

「ん……っ」

 エレノーラは声をもらし、ゆっくりと腰を下ろしていく。自身が飲み込まれていく様子を食い入るように見つめるレイモンドの姿にいたずら心が湧いて、先だけで止めた。

「エレノーラ……」

 レイモンドの催促するような声にエレノーラはほほ笑み、その目を見ながら一気に咥えこむ。熱い息を吐き出したレイモンドに満足しながら腰を揺らすと、彼はエレノーラの腰をつかんで下から突き上げた。

「あぁ、気持ちいい……っ」

 そのまま求め合い、エレノーラが奥深くまで咥えこみ、搾り取るように締めつけながら達すると、レイモンドは低くうなって吐精した。

「好き、レイモンド」

 エレノーラが体を寄せると、レイモンドは彼女の髪に指を差し入れて頭をなで、耳元に軽くキスをする。

「……僕も、愛している……、あっ……私もだ」

「レイモンド……!」

「へぁっ」

 レイモンドが顔を赤くしながら耳元でささやくと、その言葉に胸を高鳴らせたエレノーラが抜かずのままの中をきゅっと締めつけた。レイモンドは変な声を出してもだえ、その声が恥ずかしかったらしく、片手で顔を覆う。

「別に、僕でいいじゃない?」

「……嫌だ」

 嫌だという割には、結構、自分を僕と呼んでいる。なにかこだわりでもあるのだろうかとエレノーラが不思議に首をかしげると、レイモンドは少しそっぽを向いた。

「ただでさえ、年下なのに……子どもみたいだろ……」

「子どもだと思っていたら、こんなことしないわよ」

 エレノーラはレイモンドを年下だとは思っているが、子どもだと思ったことはない。年齢に関わらず、いつだってレイモンドはエレノーラの王子さまであり、騎士さまだ。

「そう、だけどさ、ぁ!?」

 エレノーラは腰を上げ、力をなくしている陰茎を手でやさしく包んでこすると、レイモンドは声を上げる。

「まだまだ終わりじゃないわよね? ……大人なんだから、大丈夫よねえ?」

「ちょっとまて、エレ……っ、うあっ」

 エレノーラはそのまましっかりと、レイモンドに男を見せてもらうことにした。
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