86 / 174
第一部
そばにいるから(21)
しおりを挟む
(こんなところまで再現しなくていいのに…)
二年も拉致監禁されただけあって、魔女のエレノーラへの執着は非常に強かった。魔女の目はレイモンドに目が向けられているが、その目が自分に向けられるのが怖くて、彼女は俯く。すると、レイモンドが片腕で彼女を引き寄せ、抱きしめた。
「エレノーラは、お前のものじゃない」
「…へえ。じゃあ、お前のものだってか?」
「違う」
魔女を睨みつけながら静かに言い放った彼に、魔女は同じように睨みつけ、低い声を出す。
(そこは僕のものだと言ってくれても良かったのだけれど)
それを言わないのが、彼女が好きになったレイモンドだ。
「エレノーラは、彼女自身のものだ。誰に心を許すのかは、彼女が決めることだ!」
ありありと憎しみの念を浮かべた目に怖気付くことなく、レイモンドは言葉を続けた。エレノーラはその言葉に顔を上げ、まっすぐ前を見据えるレイモンドの横顔を見つめる。言い淀むことなく、はっきりと言い放った彼に、彼女の胸が高鳴った。
(…レイモンドはいつだって、私の気持ちを優先してくれる)
エレノーラは強引にされても、何をされてもレイモンドなら許せるのに、彼は決して、そんなことをしない。
「エレノーラは、僕を選んでくれた」
「…は、ずっと選ばれ続けるとでも?女の心なんて、すぐ移り変わるだろ」
「いいや、僕がずっと選ばれ続ける…選ばれ続けるために、僕は心を尽くす。…お前みたいに、無理に奪ったりしない!」
エレノーラは少し声を荒らげて魔女を威圧するレイモンドに胸が高鳴り、頬が熱くなるのを感じる。彼女の目には、レイモンドしか映っていなかった。エレノーラは魔女の幻がどうでもよくなり、最早、レイモンドしか見えなくなっている。
「レイモンドぉ…っ」
「ちょっ、エレノーラ…む、胸がっ」
「あてているのよ」
「っ…この状況で?!」
エレノーラはレイモンドのことしか考えられない、今はその気持ちに全て委ねてしまうことにした。
「ね、レイモンド。キスして、キス!」
彼女はレイモンドの胸にしがみつき、甘えた声で見上げる。彼は小さく唸りながら頬を赤らめらちらりと彼女を見たが、我に返ったように直ぐ前を向く。
「いや、駄目だろ今はっ、魔女の幻が…えっ?!」
エレノーラは驚いた様子でに前を見ているレイモンドの頬に手を伸ばす。視線を前と彼女と交互に向けた彼は、戸惑っているようだ。
「っくそ…おい、エレノーラ!」
「エレノーラ、これは一体…」
「今、私の頭はレイモンドのことでいっぱいなの!ね、だから、もっといっぱいにして」
レイモンドはエレノーラを見て目を見開き、顔を赤くして動揺したが、直ぐに何か察したようで、彼女の唇にキスをした。
二年も拉致監禁されただけあって、魔女のエレノーラへの執着は非常に強かった。魔女の目はレイモンドに目が向けられているが、その目が自分に向けられるのが怖くて、彼女は俯く。すると、レイモンドが片腕で彼女を引き寄せ、抱きしめた。
「エレノーラは、お前のものじゃない」
「…へえ。じゃあ、お前のものだってか?」
「違う」
魔女を睨みつけながら静かに言い放った彼に、魔女は同じように睨みつけ、低い声を出す。
(そこは僕のものだと言ってくれても良かったのだけれど)
それを言わないのが、彼女が好きになったレイモンドだ。
「エレノーラは、彼女自身のものだ。誰に心を許すのかは、彼女が決めることだ!」
ありありと憎しみの念を浮かべた目に怖気付くことなく、レイモンドは言葉を続けた。エレノーラはその言葉に顔を上げ、まっすぐ前を見据えるレイモンドの横顔を見つめる。言い淀むことなく、はっきりと言い放った彼に、彼女の胸が高鳴った。
(…レイモンドはいつだって、私の気持ちを優先してくれる)
エレノーラは強引にされても、何をされてもレイモンドなら許せるのに、彼は決して、そんなことをしない。
「エレノーラは、僕を選んでくれた」
「…は、ずっと選ばれ続けるとでも?女の心なんて、すぐ移り変わるだろ」
「いいや、僕がずっと選ばれ続ける…選ばれ続けるために、僕は心を尽くす。…お前みたいに、無理に奪ったりしない!」
エレノーラは少し声を荒らげて魔女を威圧するレイモンドに胸が高鳴り、頬が熱くなるのを感じる。彼女の目には、レイモンドしか映っていなかった。エレノーラは魔女の幻がどうでもよくなり、最早、レイモンドしか見えなくなっている。
「レイモンドぉ…っ」
「ちょっ、エレノーラ…む、胸がっ」
「あてているのよ」
「っ…この状況で?!」
エレノーラはレイモンドのことしか考えられない、今はその気持ちに全て委ねてしまうことにした。
「ね、レイモンド。キスして、キス!」
彼女はレイモンドの胸にしがみつき、甘えた声で見上げる。彼は小さく唸りながら頬を赤らめらちらりと彼女を見たが、我に返ったように直ぐ前を向く。
「いや、駄目だろ今はっ、魔女の幻が…えっ?!」
エレノーラは驚いた様子でに前を見ているレイモンドの頬に手を伸ばす。視線を前と彼女と交互に向けた彼は、戸惑っているようだ。
「っくそ…おい、エレノーラ!」
「エレノーラ、これは一体…」
「今、私の頭はレイモンドのことでいっぱいなの!ね、だから、もっといっぱいにして」
レイモンドはエレノーラを見て目を見開き、顔を赤くして動揺したが、直ぐに何か察したようで、彼女の唇にキスをした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
984
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる