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元凶
しおりを挟む少し時間がかかるだろうと思っていたものの、アタッシュケースのロックは思いのほか簡単に壊す事が出来、内心ロギア自身もビックリしていた。墜落の影響で相当ボロが出ていたとしてももう少し時間がかかると踏んでいたのだ。
「わざわざ別行動をとる必要も無かったか……まぁ、この短時間でも一人で生きていけない様ならこの先無理だろうからなぁ」
ロギアはそんな感想を漏らしつつ蓋を開けると、黒色の発泡スチロールが四本の注射器を守るかの様に敷き詰めてあり、既に中には濃い翠色の薬品がセットされている。
“何だ……この気色悪い色は……薬品、なのか……それに――”
その隣には何重にも厳重に密封された袋が目に入った。
“恐らくこれが……”
ロギアは厳重に密封された袋を取り出し、袋を引き裂くと中からは縦十八・二センチ、横幅二十五・七センチの分厚い封筒が出て来た。
封筒を開けると何枚もの紙の資料と共に、実験に関する記録写真と思われる物が複数枚入っており、そこにはグロテスクな物ばかりが写されていてそれだけでも気分が悪くなる。
とてもじゃないが出来ればアリアには見せにくい写真だった。自分自身の無惨にされた身体がこんな形で残っている、それだけでも頭がどうかなりそうだ。
ロギアは資料を手に取ると一枚目、【新人計画】とだけ記載されたページをめくる。
「うわっ――何だ、これ……」
ページの一枚目から小さい字で埋まりつくされていた。
中には【写真①】と書かれている付箋が張り付けてあり、先程の記録写真にも裏側に同じ様な幾つかの番号が記載されている。
「まさかとは思うが……全部こんな感じか?」
数枚分ページをめくってみるがどれもこれも予想通り同じ様な感じだった。非常に見にくく全体的に整理出来ていない、そんな印象だった。
「――はぁ……」流石に溜息が漏れる。
「これはとてもじゃないが資料って言う程の……情報がきちんとまとめ上げられた物じゃ無いな……これじゃあ殆どメモ帳としか思えんが――ッ!!」
ロギアは呆れながらも資料をひっくり返し、隅に記載されている資料を制作した人物の名前を確認すると途端頭が真っ白になった。
【セルゲイ・オルバース】
「親――父……」
そこには自分が尊敬している人物であり、てっきりアウトブレイクの際に死んでしまったと思っていた名前があった。
「どうして……親父の名前が……」
アタッシュケース内にある注射器とその傍に置いてある写真に視線を移す。
「親父がこの実験に直接的に関わっていた――って事か……」
自分の事を気遣いながらも研究に熱中していた父親の姿が頭に浮かぶ。そして自分の名前を知った時のアリアの表情にもようやく合点がついた。
「そうゆう事か――――確かに……あんな顔にもなるな……」
“この資料を持っていた奴があの墜落事故に巻き込まれたって事は――親父もそのヘリに乗っていて巻き込まれたって言う可能性がある――”
決めつける事は出来ないが、もしそうだとしたらロギアにとっては更に曖昧な気持ちにならざるをえなかった。最後に一度でも話したい、自分が唯一尊敬する人物だからこそ、そんな思考が頭をかすめる。
親父が作った資料。名前がこの資料に記載されているのさえも、信じたくもない事だった。けれど、作成した人物が父親だとそう思い資料を再度見返すとそのメモ帳っぽい物にも所々懐かしさを覚えたものの、その感情は直ぐに消えて無くなった。
理由は簡単でこの実験には何人もの被検体が使われているからだった。男女関係なく、幼子からお年寄り、挙げ句の果てには死体まで殆ど見境が無い。
“この事は、親父が俺に知られたくなかった事、かもしれないな……”
けれど自分の父親である【セルゲイ・オルバース】がアリアの現状に関わっていると知ってしまった以上、このままアリアをコロニーに置いて行くと言うのは余にも酷い話ではないのか? その考えが頭を過る。最初アリアと遭遇した時も親友に会わせる顔が無い、だから助ける。そんな身勝手な理由を付けていた。
そして今も、アリアに追手が掛かる可能性を知りながらも安全と言う言葉を使い、コロニーに連れて行き厄介払いをしようとしている。もしくはこの場で危険と判断したならばそれなりの事を考えていた。ロギアはそんな自分に嫌気がさした。
“余にも残酷で――最悪な――偽善者だ”
ロギアは額を手で押さえ、自らの人間性に呆れ、大きく溜息をついた。
「これじゃあ……駄目だよな……」
ロギアは目頭を押さえ少し首を振る。
アリアの事については見過ごせる事では無く、親が仕出かした事とは言え、いやだからこそ何かしらの責任を果たさなくてはならない。
“……そうなると少しでも安全を得る為にもアリアの情報や感染者に関する資料をより多くを自分の頭に読み込んでいかなければこの先助かる見込みすらなさそうだな“
そう考えるとまた大きく溜息をついた。今からこの資料を読むとなると相当な時間と神経が削られる。だが外にいた鳥について嫌な予感がする為そんなに時間はかけられない。
ただ後回しは不味いのでは? そんな事を考え、億劫になりつつも急ぎ資料に視線を落とす。
「読むしかない、か……」
今更考えた所でどうしようもなく、ロギアは諦め手元の資料を読み始めた。
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