Ninfea

蠍ノ 丘

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夜襲

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 グリーンエリア  自宅  午前一時半 



 アリアはなかなか寝付けず天井を眺める。

 市場から帰って来たアリア達は桐ケ谷尊信(きりがやたかのぶ)と今後の予定について話し合い、その後はロギアと共に周辺の散策をし、夜は手軽な食事をとり、この一日をリラックスして過ごす事が出来た。

 今日一日起こった出来事を頭の中で何度も想像し、つい口元が少しだけ吊り上がる。

 ”楽しかった”

 布団の中で足をパタパタと動かし、少しだけリズムをとる様に首を左右に動かす。

 こんな事をしているから寝れないでいると言う事は自身でも理解はしていた。

 数秒間そうして時間が過ぎていたが、少しでも興奮状態を落ち着ける為上体を起こし大きく息を吸う。

 カーテンの隙間から漏れる月の光を眺めていると、唐突に喉の渇きを覚えた。

 気分展開も兼ねてアリアはベッドから脚を下すと物音を立てないように扉を開け一階へと降りていく。ロギアが起きない様に慎重に。一階に辿り着くとキッチンの明かりを付けコップに水を注ぐ。

 コップを口につけ、水を体内に流し込むと、不意にリビング内の空気に違和感を感じ取り、それと同時にアリアの背後から影が覆い被さる様に現れ――


「だ、誰――――ッ!?」
 アリアは反射的に振り返る。

「アリアさん……」
 
 暗闇の中キッチンの明かりに照らされその侵入者の正体が露わになった。見覚えのある男。

「い、石井さん……」
 アリアの視線が運転手の腫れた顔へと止まる。昼間ではそれ程異常が見当たらなかったのに今では顔色も悪く肌も大部分が赤くなっている。

「……あ、どうして石井さん――――」

「た、助けてください――アリアさん…………」
 
 その言葉を聞きアリアの顔が真剣なものに変わり、運転手に駆け寄ろうとし――――その後ろにゾロゾロと家に入って来る男達が視界に映る。

「此処では出来ない事なので、アリアさんにご足労いただきたいのですが」
 運転手の息が荒く、目も血走って見える。

「これは、どういう事……ですか…………?」


 ジリジリと近付く男達にアリアは後退り、睨みつける。

「……ロギっ!! 急いで此処か――――――っ!!」
 ロギアの元迄駆け出そうとした瞬間、アリアの口元に布きれが押し当てられ甘い匂いが鼻腔を突き途端にアリアの意識が遠のいていく。

「ろ、ロギッ…………逃げ――――て……」
 意識を朦朧とさせぐったりと身体から力が抜けて、大きな音と共に椅子ごと倒れ込んだ。

 意識が失う間際、アリアの視界が階段を捉え、微かに口がロギアを呼ぼうと動くが音が出ない。

 ”ロ…………ギ……”

 言葉にならず、その小さな呟きは近くに居た男達でさえ聞き取る事が出来ないほど小さかった。





 物音でロギアは目を覚ました。自然と時刻を確認する。

 午前二時

「――――チィッ!!」

 時間帯、状況を把握すると舌打ちが出てしまう。ロギアは急いでアリアの所在を確認する為アリアが使っている寝室へと脚を運ぶ。寝室は荒らされてはいなかったがアリアの姿が見えない。少なくとも二階には人影は無い。

  階段を降りて行く際、耳を研ぎ澄ませ、素早く辺りを見回す。

「今から確認に向かう、お前たちは直ぐにあの女を運び出せ」

  遠ざかって行く足音とこちらに接近する物。

 男の足音が階段に差し掛かった時、ロギアは階段の手摺から飛び降り――――「なぁっ!?」油断していたのかロギアの奇襲に驚いた男は目を見開く事しか出来なかった。

 その落下する勢いで一階にいる男の首筋に蹴りを入れそのまま圧し掛かる形で男の身体を床に叩き付ける。

「がぁ!」
 突然の事で男は何も反撃すら出来ず肺から大量の空気を吹き出し気を失い、物音を聞きつけた数人の足音が向かってくる。

「糞、奴だ捕まえ――――――っ」
 一気に駆け、飛び出すと膝蹴りをお見舞いし、男は後ろにいた他の仲間も巻き込み転がっていく。

  暗闇のせいもあり、何が起きたのか男達が思考を巡らせる前にロギアは前進し男たちの意識を地に落としていく。迎撃しようと構える男に急接近し、腕を捻り上げ体重を乗せ叩き付ける。短い悲鳴と共に場が静まり返る。

 次から次へと足跡が家に侵入して来るのを察しロギアは咄嗟にテーブルの上にあるフォークを掴むと障害物の間を縫う様に駆けリビングに侵入した男の懐へと潜り込むとそれを男の銃を持つ手に突立てた。

「うがぁ!」
 男が悲鳴を上げ銃を落とすとロギアはそれを拾い上げ、痛みで屈んでいた男を盾にし銃口を武装した連中へと向ける。

「誰だ? お前ら、アリアは何処だ!?」

 男たちはロギアの動きに初めは抵抗しようとしたが、無言で後ろへと合図を送る。

 その合図で男達の間から出て来た男は――

「お前は――――」緑色に近い土気色といった表情で「彼女の事を助けたいでしょ? なら大人しく付いて来て欲しい……」運転手はそう言うと脂汗が出ている顔をロギアに向ける。

「感染……しているのか?」
 昼間の運転手の言葉と体調の悪さを思い出し、目の前に居る症状が酷い運転手を睨み付けた。

 運転手は顔を上げロギアを睨み付ける。

「ごちゃごちゃ五月蠅いよッ! 良いから黙って付いて来て下さいよ! っじゃなきゃ俺――――」

 運転手はそう必死に懇願すると自らの裾を慎重に捲り上げた。

 その腕は赤く酷く荒れ、よく見たら腕だけじゃ無く首元等、痛々しく腫れあがった個所が幾つも見え傷口の周りが若干青白い。

「こっちには時間が無いんだよ……言う事さえ訊いてくれれば助けて貰えるし君も彼女に会えるからっ……」

 ロギアは何も言わず運転手を見据える。その様子に焦ったのか動揺は激しくなっていく。

「良いから言う事訊けよぉ!!」

 ロギアはその発狂する様子を見てそれから部屋を振り返る。かなり荒れている、先程倒した男達も数人程よろよろと立ち上がり既にこちらに銃口をこちらに向けていた。

 だがそれで十分だった。自分達に発信機が取り付けられている事がこんなにも感謝した事は無かった。後はアリアの安全を確認し、今は時間稼ぎをするだけでいい。此処で無茶をし、アリアを奪われこの場で致命的な怪我を負う訳にはいかない。

「……判った、従おう」

 この状況を直ぐマザーも察するだろうと思いロギアは銃を置き、両手を頭上へと上げた。

 ロギアが無力になった事を警戒しながらも判断した男たちはロギアを縛り目隠しをし車に乗り込んでいった。



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