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対峙
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イエローエリア外周 マザー管轄地域 大型貨物倉庫
「ここは……廃墟、なのか……?」
手首に拘束具を取り付けられ古く荒廃した場所に迄連れて来られていた。此処に来る迄検問は一度超えていなかったのでロギアの脳裏に疑問が浮かぶ。
”ここはグリーンエリア……いや――――”
周りの余りにも荒れた景色からその可能性を消す。
建物内には数十人程の武装した兵士が見える。此処までの間、乱暴な兵士に道案内され、何やら怪しげな音がする部屋の前を通り過ぎ、部屋ともいえる様な大きな場所へと連れて来られて来ていた。
部屋の中央にはアリアが自分と同じ様に手首を拘束具で固定され座らされている。
「ロギ!」
何も外傷が見当たらない事にロギアはホッと胸を撫でおろす。それと同時に周囲の荒れた様子から先程脳裏に浮かんだ疑問を再度考え、此処を脱出出来た場合の道筋を考える。
”グリーンエリアだった場合はとは思っていたが……この荒れ方を考えると――――レッドエリアに迄来ているのかもしれないな……”
周囲へと目を走らせるロギアに、部屋の奥に座る金髪の男が腰を上げる。
「いや此処は一件レッドエリアに見えるだろうがれっきとしたイエローエリアの建物ですよ」
二人が到着するのを待っていたかの様に口元を歪ませ声を掛け歩いて来る。
「……」
状況がどんどん悪化して行くこの状況にロギアの額に汗が流れる。幸いに男の言う通りだとすれば今はまだイエローエリア内と言う事もあり、この状況を把握したマザー達が救援に来るのに左程時間がかからない可能性が高い。
ただそれは内通者がいなければの話だ。此処がグリーンエリアではなくイエローエリアだった以上検問では当然内通者が居る。此処での情報がマザー達に伝わるのは最速でも朝。それまでに目の前に居る連中が何をするのか見当すらつかない。
一刻も早くこの建物からの脱出を試みなければならない。急ぎこの兵士達から身を守れる場所を探し、マザーからの救援を待ちたい所だが。
ロギアはこの出来事の指揮をとっているであろう人物へと睨み付ける。お互い無駄な挙動はする事無く、眼前にいる相手にだけ注視し身構えていた。
男は二人を一瞥すると懐かしそうにアリアを眺める。
「アリア・イェリネック・エンシェント……」
男がそう声を発するとアリアは顔を上げ不快そうに声がした方へと視線を向けた。
「身に覚えが無い、それとも忘れてしまったかな? まぁ、だとしても何ら感じる物も無いのですが……俺の方もあれからかなり老けたからなぁ――」
アリアには男の顔が思い出せない。ただ、何処か心に引っ掛かる不気味な物を感じる。
「ほら、前に君の精神面でケアしていた頃を覚えているだろう――?」
男の言葉にアリアの眉間に皺が、ロギアは男を睨む。
「こう言えば分かりやすいか……先生の研究で疲れ切った君の話し相手になっていた」
先生、研究。その単語だけで男が所属している場所が把握出来、ロギアは咄嗟にアリアの元へと飛び出そうと足掻くが拘束が固く失敗に終わり、アリアの表情も真っ青に固まる。
「一応精神科医で君のメンタルケアをしていた……まぁ現在はその時とは状況が一変してしまってね……今は戦わざる負えない状況でね、俺も今や『термит(サーマイト)(白蟻)』に所属している、名前でも聞けば判るかな? ケビン・コーフィンだ」
アリアは実験の合間に話をしていた男の事を思い出し目が見開かれ、背筋が凍り付く。
『термит(サーマイト)(白蟻)』その名前を聞きロギアも表情が強張る。焦りで何とか拘束具を解こうとするアリアだが、手枷はびくともせずにただ悪戯に息を乱し、体力を消耗するだけだった。
「それ外れないよ、鍵も此処に在る」
ケビンは懐から鍵を取り出しアリアの前でぶら下げる。そして視線を二人から外し先程から点滅している無線へと手を伸ばす。
『ボス、マザーとその鎮圧部隊、並びに中央政府機関の連中にも動きがありました』
「思ったより早くないかい? まぁ、もう少し余裕があると思ったけど若干ズレがあるにしろ一応想定内だ……その為に此処迄大胆に騒いだのだからな。――報道機関の連中は?」
『はい、ボスが命じた通りマザーの不正を公表するって情報は十分に流しましたし、それに釣られて目的地付近に集まっています』
「確認しとくが他の地区からの動きは?」
『ええ、どうやら何も手を出すつもりは無い様で今は平然と見ているだけです』
「……そうですか、まぁそれだけでも上出来でしょう」
ケビンは無線を切るとロギア達へと視線を戻す。
「大変な騒ぎになってしまいました……」
ケビンは窓の景色を眺め眉間に皺を寄せながらワザとらしく呟いた。
「お前が言うのか?」
「だが余りにも雑な作戦……いや余りにも酷い失敗をしたな」
皮肉を込めロギアが言う。
「ええ、それは俺にも判りますよ。本来ならばマザーの信頼を得、もっと組織内部へと人間を入れ、然るべき時を待つのが上策でしょうが……最近此処のマザーの『термит(サーマイト)(白蟻)』に対しての力の割き様は黙って目を瞑っている様では危うく一網打尽、と迄は行きませんが、こちら側がかなりの痛手を受ける事は避けられないと思ったので」
ケビンはロギア達を見てゆっくりと近付いて来る。
「先手にこの強攻手段を取らせて頂きました。俺程度の人材ならば幾らでも要る。それに時期に発覚する事になるだけならば少しでもマザーに対してはそれなりの深手を負って貰いたくてね」
「本来安全でなければならないこの場所で」
ケビン・コーフィンの口元が吊り上がると笑いを抑えきれないのか声が漏れる。
「……」
「ロギア・オルバース、そこで大人しくジッとしておいて下さい。混乱に乗じて行動するのは目に見えていますからね、勝手な真似をしない様に」
数人の男の銃口がロギアに向き、ケビンはロギアから目を離さずアリアを更に引き離す。そしてロギアに対して微笑みかける。
「ロギっ――――!」
「安心しろ、必ず助ける……」
「危機に直面し尚も諦めないとは……だてに今迄外で暮らしていた経験は甘く見れませんね、そこに関しては感服します」
ケビンはロギアを見据える。
「あの日、施設であの男が問題を起こしていなければロギア・オルバース、ならびにアリア・イェリネック・エンシェント君たちの情報は俺の耳にすら届いていなかった。あの男には感謝せざる負えないが……笑っちゃうよな……確かに根回しはしていたつもりですが、そこまでマザーの信頼を持っていなかったのか、はては、マザーには何処かで感づかれていたかハハハ……まさか買収したつもりの奴等迄もが既に橘の奴に捕まっていたとはね……おかげで外で待つ奴等とも連携が取れない――いや、此処まで此の場所が混沌としていただなんて俺の想定外の事ですよ」
乾いた笑いをする。
「だけど……先ほども述べた様に俺もただでは終わらない。君達が此処に到着する時間を見計らって各報道局へマザーの秘密を暴露すると、敷地内と感染者の映像を送信しておいた」
ケビンはそう言うと手元のタブレットを操作しその音声を再生する。
「……」
「知ってるかロギア・オルバース。此処の連中は何時かあの時の様な当たり前に明日が訪れる生活に戻れると……ふっ……こんな状況になっても一般人の大半が未だにそう信じている、呆れるを通り越して称賛を与えたい気分だよ」
ケビンは皮肉を込めてそう告げると手元のタブレットへと目を落とす。
「俺はねそんな連中に現実を鼻先迄つき付けなくてはならない。ロギア・オルバース、お前も理解しているだろう? 正しさだけでは人間は生きていけない。だが誰一人として決して救われる事の無いこの世界で俺の擦り切れていた魂に点火して下さったお方が居た…」
「セルゲイ……オルバース……」
男の羨望の眼差しが誰を示しているのか予想が出来、ロギアの口から父親の名前が零れた。
「ここは……廃墟、なのか……?」
手首に拘束具を取り付けられ古く荒廃した場所に迄連れて来られていた。此処に来る迄検問は一度超えていなかったのでロギアの脳裏に疑問が浮かぶ。
”ここはグリーンエリア……いや――――”
周りの余りにも荒れた景色からその可能性を消す。
建物内には数十人程の武装した兵士が見える。此処までの間、乱暴な兵士に道案内され、何やら怪しげな音がする部屋の前を通り過ぎ、部屋ともいえる様な大きな場所へと連れて来られて来ていた。
部屋の中央にはアリアが自分と同じ様に手首を拘束具で固定され座らされている。
「ロギ!」
何も外傷が見当たらない事にロギアはホッと胸を撫でおろす。それと同時に周囲の荒れた様子から先程脳裏に浮かんだ疑問を再度考え、此処を脱出出来た場合の道筋を考える。
”グリーンエリアだった場合はとは思っていたが……この荒れ方を考えると――――レッドエリアに迄来ているのかもしれないな……”
周囲へと目を走らせるロギアに、部屋の奥に座る金髪の男が腰を上げる。
「いや此処は一件レッドエリアに見えるだろうがれっきとしたイエローエリアの建物ですよ」
二人が到着するのを待っていたかの様に口元を歪ませ声を掛け歩いて来る。
「……」
状況がどんどん悪化して行くこの状況にロギアの額に汗が流れる。幸いに男の言う通りだとすれば今はまだイエローエリア内と言う事もあり、この状況を把握したマザー達が救援に来るのに左程時間がかからない可能性が高い。
ただそれは内通者がいなければの話だ。此処がグリーンエリアではなくイエローエリアだった以上検問では当然内通者が居る。此処での情報がマザー達に伝わるのは最速でも朝。それまでに目の前に居る連中が何をするのか見当すらつかない。
一刻も早くこの建物からの脱出を試みなければならない。急ぎこの兵士達から身を守れる場所を探し、マザーからの救援を待ちたい所だが。
ロギアはこの出来事の指揮をとっているであろう人物へと睨み付ける。お互い無駄な挙動はする事無く、眼前にいる相手にだけ注視し身構えていた。
男は二人を一瞥すると懐かしそうにアリアを眺める。
「アリア・イェリネック・エンシェント……」
男がそう声を発するとアリアは顔を上げ不快そうに声がした方へと視線を向けた。
「身に覚えが無い、それとも忘れてしまったかな? まぁ、だとしても何ら感じる物も無いのですが……俺の方もあれからかなり老けたからなぁ――」
アリアには男の顔が思い出せない。ただ、何処か心に引っ掛かる不気味な物を感じる。
「ほら、前に君の精神面でケアしていた頃を覚えているだろう――?」
男の言葉にアリアの眉間に皺が、ロギアは男を睨む。
「こう言えば分かりやすいか……先生の研究で疲れ切った君の話し相手になっていた」
先生、研究。その単語だけで男が所属している場所が把握出来、ロギアは咄嗟にアリアの元へと飛び出そうと足掻くが拘束が固く失敗に終わり、アリアの表情も真っ青に固まる。
「一応精神科医で君のメンタルケアをしていた……まぁ現在はその時とは状況が一変してしまってね……今は戦わざる負えない状況でね、俺も今や『термит(サーマイト)(白蟻)』に所属している、名前でも聞けば判るかな? ケビン・コーフィンだ」
アリアは実験の合間に話をしていた男の事を思い出し目が見開かれ、背筋が凍り付く。
『термит(サーマイト)(白蟻)』その名前を聞きロギアも表情が強張る。焦りで何とか拘束具を解こうとするアリアだが、手枷はびくともせずにただ悪戯に息を乱し、体力を消耗するだけだった。
「それ外れないよ、鍵も此処に在る」
ケビンは懐から鍵を取り出しアリアの前でぶら下げる。そして視線を二人から外し先程から点滅している無線へと手を伸ばす。
『ボス、マザーとその鎮圧部隊、並びに中央政府機関の連中にも動きがありました』
「思ったより早くないかい? まぁ、もう少し余裕があると思ったけど若干ズレがあるにしろ一応想定内だ……その為に此処迄大胆に騒いだのだからな。――報道機関の連中は?」
『はい、ボスが命じた通りマザーの不正を公表するって情報は十分に流しましたし、それに釣られて目的地付近に集まっています』
「確認しとくが他の地区からの動きは?」
『ええ、どうやら何も手を出すつもりは無い様で今は平然と見ているだけです』
「……そうですか、まぁそれだけでも上出来でしょう」
ケビンは無線を切るとロギア達へと視線を戻す。
「大変な騒ぎになってしまいました……」
ケビンは窓の景色を眺め眉間に皺を寄せながらワザとらしく呟いた。
「お前が言うのか?」
「だが余りにも雑な作戦……いや余りにも酷い失敗をしたな」
皮肉を込めロギアが言う。
「ええ、それは俺にも判りますよ。本来ならばマザーの信頼を得、もっと組織内部へと人間を入れ、然るべき時を待つのが上策でしょうが……最近此処のマザーの『термит(サーマイト)(白蟻)』に対しての力の割き様は黙って目を瞑っている様では危うく一網打尽、と迄は行きませんが、こちら側がかなりの痛手を受ける事は避けられないと思ったので」
ケビンはロギア達を見てゆっくりと近付いて来る。
「先手にこの強攻手段を取らせて頂きました。俺程度の人材ならば幾らでも要る。それに時期に発覚する事になるだけならば少しでもマザーに対してはそれなりの深手を負って貰いたくてね」
「本来安全でなければならないこの場所で」
ケビン・コーフィンの口元が吊り上がると笑いを抑えきれないのか声が漏れる。
「……」
「ロギア・オルバース、そこで大人しくジッとしておいて下さい。混乱に乗じて行動するのは目に見えていますからね、勝手な真似をしない様に」
数人の男の銃口がロギアに向き、ケビンはロギアから目を離さずアリアを更に引き離す。そしてロギアに対して微笑みかける。
「ロギっ――――!」
「安心しろ、必ず助ける……」
「危機に直面し尚も諦めないとは……だてに今迄外で暮らしていた経験は甘く見れませんね、そこに関しては感服します」
ケビンはロギアを見据える。
「あの日、施設であの男が問題を起こしていなければロギア・オルバース、ならびにアリア・イェリネック・エンシェント君たちの情報は俺の耳にすら届いていなかった。あの男には感謝せざる負えないが……笑っちゃうよな……確かに根回しはしていたつもりですが、そこまでマザーの信頼を持っていなかったのか、はては、マザーには何処かで感づかれていたかハハハ……まさか買収したつもりの奴等迄もが既に橘の奴に捕まっていたとはね……おかげで外で待つ奴等とも連携が取れない――いや、此処まで此の場所が混沌としていただなんて俺の想定外の事ですよ」
乾いた笑いをする。
「だけど……先ほども述べた様に俺もただでは終わらない。君達が此処に到着する時間を見計らって各報道局へマザーの秘密を暴露すると、敷地内と感染者の映像を送信しておいた」
ケビンはそう言うと手元のタブレットを操作しその音声を再生する。
「……」
「知ってるかロギア・オルバース。此処の連中は何時かあの時の様な当たり前に明日が訪れる生活に戻れると……ふっ……こんな状況になっても一般人の大半が未だにそう信じている、呆れるを通り越して称賛を与えたい気分だよ」
ケビンは皮肉を込めてそう告げると手元のタブレットへと目を落とす。
「俺はねそんな連中に現実を鼻先迄つき付けなくてはならない。ロギア・オルバース、お前も理解しているだろう? 正しさだけでは人間は生きていけない。だが誰一人として決して救われる事の無いこの世界で俺の擦り切れていた魂に点火して下さったお方が居た…」
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