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その後、理光は俺の後ろ首をぎゅっと押さえつけ、さらにキスを深めようとした。
咄嗟に手を伸ばして唇を覆う。だが理光は、きらめいた瞳で俺を見つめ、どこか期待を含んだ表情を浮かべていた。
俺が手をどかさないと悟ると、意外にも名残惜しそうに、その手の甲へ軽くキスを落とした。
——え?
理光が口を開き、何か言いかけた瞬間、顔が熱くなって、思わず手を振り上げて遮った。
「わかってるよ。あんたと愛子が仲悪いのは。でも、彼女は俺の彼女なんだ。そんな冗談、やりすぎだろ?」
怒り混じりに言葉を吐くと、声がつい荒くなっていた。
愛子の名前を聞いた理光は、鼻で軽く嘲るように息を漏らし、唇を何度か動かしたものの、結局その言葉を呑み込んだ。
「……冗談じゃない。」
低くつぶやかれたその一言に、身体が一瞬、固まった。
理光は深く息を吐き、まるで降参するように苦笑いを浮かべる。
「……いや、冗談だよ。」
その言葉に、ようやく息が整う。
冗談でよかった——そう思うのに、胸の奥が妙に酸っぱくなった。
俺の反応を見て、理光は静かに目を細め、まっすぐ俺を見据えてくる。
「でもさ……兄貴、俺たちって仲いいだろ? 友達同士でキスくらい、何が悪いんだ?」
思わず目を見開いた。
ふざけてるのか、こいつは。どこの「仲のいい兄弟」が唇を重ねるんだ?
眉を顰め、もう相手にしたくなくて、携帯を手に部屋を出た。
廊下の入口で愛子に電話をかける。
「理光? 大丈夫よ、ただの冗談だから気にしないで……うん、わかった、気をつける。」
電話を切って振り向くと、寮の入り口に理光が突っ立っていた。
「何してんだよ、そんなとこで。」
軽く言いながら中へ戻ろうとした瞬間、手首を掴まれた。
理光の目は苛立ちを帯びていて、声にはほんの少しだけ、懇願の響きが混じっていた。
「……愛子と別れてくれないか?」
胸の奥が一瞬、強く波打った。
思わずむっとして言い返す。
「理光、俺はずっとお前を弟みたいに思ってきたんだ。愛子はいい子だ。なんでいつも合わないんだよ?」
握られた手が震え、いったん緩んでは、また強く握り直される。
理光の瞳が揺れ、やがて静かに手を離すと、そのまま無言で部屋に戻っていった。
布団に潜り込み、壁のほうを向いて、俺を見ようともしなかった。
咄嗟に手を伸ばして唇を覆う。だが理光は、きらめいた瞳で俺を見つめ、どこか期待を含んだ表情を浮かべていた。
俺が手をどかさないと悟ると、意外にも名残惜しそうに、その手の甲へ軽くキスを落とした。
——え?
理光が口を開き、何か言いかけた瞬間、顔が熱くなって、思わず手を振り上げて遮った。
「わかってるよ。あんたと愛子が仲悪いのは。でも、彼女は俺の彼女なんだ。そんな冗談、やりすぎだろ?」
怒り混じりに言葉を吐くと、声がつい荒くなっていた。
愛子の名前を聞いた理光は、鼻で軽く嘲るように息を漏らし、唇を何度か動かしたものの、結局その言葉を呑み込んだ。
「……冗談じゃない。」
低くつぶやかれたその一言に、身体が一瞬、固まった。
理光は深く息を吐き、まるで降参するように苦笑いを浮かべる。
「……いや、冗談だよ。」
その言葉に、ようやく息が整う。
冗談でよかった——そう思うのに、胸の奥が妙に酸っぱくなった。
俺の反応を見て、理光は静かに目を細め、まっすぐ俺を見据えてくる。
「でもさ……兄貴、俺たちって仲いいだろ? 友達同士でキスくらい、何が悪いんだ?」
思わず目を見開いた。
ふざけてるのか、こいつは。どこの「仲のいい兄弟」が唇を重ねるんだ?
眉を顰め、もう相手にしたくなくて、携帯を手に部屋を出た。
廊下の入口で愛子に電話をかける。
「理光? 大丈夫よ、ただの冗談だから気にしないで……うん、わかった、気をつける。」
電話を切って振り向くと、寮の入り口に理光が突っ立っていた。
「何してんだよ、そんなとこで。」
軽く言いながら中へ戻ろうとした瞬間、手首を掴まれた。
理光の目は苛立ちを帯びていて、声にはほんの少しだけ、懇願の響きが混じっていた。
「……愛子と別れてくれないか?」
胸の奥が一瞬、強く波打った。
思わずむっとして言い返す。
「理光、俺はずっとお前を弟みたいに思ってきたんだ。愛子はいい子だ。なんでいつも合わないんだよ?」
握られた手が震え、いったん緩んでは、また強く握り直される。
理光の瞳が揺れ、やがて静かに手を離すと、そのまま無言で部屋に戻っていった。
布団に潜り込み、壁のほうを向いて、俺を見ようともしなかった。
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