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芝生の広場を抜けた先には、小さな川が流れていた。
夕方になると、川辺の風が心地よく涼しかった。
私たちはみんなで川沿いを歩きながら、時々おしゃべりしていた。
すると突然、後ろの方を歩いていた女の子が叫んだ。
「仁野くん、ちょっと!体どうしたの!?」
その声にみんなが一斉に仁野くんを見た。
「うわ、足にブツブツがいっぱい!」
仁野くんはハーフパンツを履いていて、ふくらはぎに赤い発疹がびっしり出ていた。
さっき草むらを通ったから、そのとき虫に刺されたのかもしれない。
「やだ、怖い!早く戻ろうよ!ひどい蕁麻疹ってショック起こすこともあるって聞いたよ!」
女の子が怯えた声で言う。
私は急いで彼の胸に手を当てた。
「息苦しくない?胸、苦しいとか……」
仁野くんの視線が私の手に落ちた瞬間、私は慌てて火照った手を引っ込めた。
「大丈夫だよ」
彼はそっけなく目線を逸らした。
私はバッグの中からアレルギー用の薬を取り出して差し出した。
「仁野くん、これ飲んで。軟膏はテントの中にあるから、後で塗ろう」
彼は不思議そうな顔をして、なかなか薬を受け取らなかった。
「……あ、ほら、仁野くんアレルギー体質でしょ?荷物準備するときに念のため持ってきたの」
そう説明すると、隣の女の子が口元を押さえて言った。
「え~、なにそれ……仁野くんのこと、すごい詳しいんだね!」
——だって彼は、私の小説のモデルだもん。詳しくないわけないじゃん!
「この前、寮で謎の蚊に刺されて腕が真っ赤になったの、もう忘れたの?」
そう言うと、仁野くんは何も言わず、素直に薬を飲み込んだ。
みんなで引き返して、テントに戻った。
私は中から軟膏を取り出して、仁野くんに声をかけた。
「さ、塗ろっか」
「……は?」
「服脱いで。体にも発疹が出てたら大変だから、ちゃんと見ておかないと。ひどかったら病院行こう」
仁野くんの顔が一気に赤くなった。
「や、やだ……」
あっ、そういえば。
寮で一緒に生活してても、仁野くんが上半身裸になってるの見たことなかったな。
かなりプライバシー気にするタイプだ。
うちの寮って、他の二人なんか風呂上がりでも裸でウロウロしてるのに。
……たぶん、初めて誰かの前で脱ぐのが恥ずかしいんだろうな。
「男同士で、何を恥ずかしがるのさ」
私は少し考えてから提案した。
「じゃあさ、俺も脱ぐから。これでおあいこってことで、どう?」
「い、いいから!」
結局、仁野くんは渋々服を脱いで、背中を向けて私の前に座った。
……正直、ちょっと見とれた。
肩幅は広いのに、ウエストは細くて、筋肉のラインが綺麗に出ている。
それに、背中の真ん中に走る深い背筋……いわゆる美人溝ってやつ?
私はしばし見惚れていたが、仁野くんが振り向きもせずに聞いてきた。
「……どう?」
「完璧……」
って、うわ!なに言ってんだ俺!
「違っ、違う!つまり、発疹は出てないって意味!」
仁野くんはそそくさと服を着て、軟膏を手に取ろうとした。
私は先にそれを取って言った。
「俺が塗るよ」
すると、仁野くんの耳がまた赤くなった。
「……自分でやる」
たかがすねだよ?別にプライベートな部分でもないし。
そもそも外に出ようって言い出したのは私だし、彼がこうなったの、ある意味私のせいじゃん……。
罪悪感が押し寄せてきた。
「俺がやるって!ゆっくり休んでて!」
疲れたらアレルギーひどくなるかもしれないし!
私は彼の横に座り、身をかがめて綿棒で丁寧に軟膏を塗っていった。
頭の上から、仁野くんの静かな呼吸が聞こえてくる。
「くすぐったい?ごめん、人に塗ってあげるの初めてで、加減わかんなくて……」
仁野くんの声は、ちょっと掠れていた。
「……大丈夫」
塗り終わった。
仁野くんはすぐ立ち上がると、私を見ずにそのままテントを出ていった。
「ちょっと……風に当たってくる」
夕方になると、川辺の風が心地よく涼しかった。
私たちはみんなで川沿いを歩きながら、時々おしゃべりしていた。
すると突然、後ろの方を歩いていた女の子が叫んだ。
「仁野くん、ちょっと!体どうしたの!?」
その声にみんなが一斉に仁野くんを見た。
「うわ、足にブツブツがいっぱい!」
仁野くんはハーフパンツを履いていて、ふくらはぎに赤い発疹がびっしり出ていた。
さっき草むらを通ったから、そのとき虫に刺されたのかもしれない。
「やだ、怖い!早く戻ろうよ!ひどい蕁麻疹ってショック起こすこともあるって聞いたよ!」
女の子が怯えた声で言う。
私は急いで彼の胸に手を当てた。
「息苦しくない?胸、苦しいとか……」
仁野くんの視線が私の手に落ちた瞬間、私は慌てて火照った手を引っ込めた。
「大丈夫だよ」
彼はそっけなく目線を逸らした。
私はバッグの中からアレルギー用の薬を取り出して差し出した。
「仁野くん、これ飲んで。軟膏はテントの中にあるから、後で塗ろう」
彼は不思議そうな顔をして、なかなか薬を受け取らなかった。
「……あ、ほら、仁野くんアレルギー体質でしょ?荷物準備するときに念のため持ってきたの」
そう説明すると、隣の女の子が口元を押さえて言った。
「え~、なにそれ……仁野くんのこと、すごい詳しいんだね!」
——だって彼は、私の小説のモデルだもん。詳しくないわけないじゃん!
「この前、寮で謎の蚊に刺されて腕が真っ赤になったの、もう忘れたの?」
そう言うと、仁野くんは何も言わず、素直に薬を飲み込んだ。
みんなで引き返して、テントに戻った。
私は中から軟膏を取り出して、仁野くんに声をかけた。
「さ、塗ろっか」
「……は?」
「服脱いで。体にも発疹が出てたら大変だから、ちゃんと見ておかないと。ひどかったら病院行こう」
仁野くんの顔が一気に赤くなった。
「や、やだ……」
あっ、そういえば。
寮で一緒に生活してても、仁野くんが上半身裸になってるの見たことなかったな。
かなりプライバシー気にするタイプだ。
うちの寮って、他の二人なんか風呂上がりでも裸でウロウロしてるのに。
……たぶん、初めて誰かの前で脱ぐのが恥ずかしいんだろうな。
「男同士で、何を恥ずかしがるのさ」
私は少し考えてから提案した。
「じゃあさ、俺も脱ぐから。これでおあいこってことで、どう?」
「い、いいから!」
結局、仁野くんは渋々服を脱いで、背中を向けて私の前に座った。
……正直、ちょっと見とれた。
肩幅は広いのに、ウエストは細くて、筋肉のラインが綺麗に出ている。
それに、背中の真ん中に走る深い背筋……いわゆる美人溝ってやつ?
私はしばし見惚れていたが、仁野くんが振り向きもせずに聞いてきた。
「……どう?」
「完璧……」
って、うわ!なに言ってんだ俺!
「違っ、違う!つまり、発疹は出てないって意味!」
仁野くんはそそくさと服を着て、軟膏を手に取ろうとした。
私は先にそれを取って言った。
「俺が塗るよ」
すると、仁野くんの耳がまた赤くなった。
「……自分でやる」
たかがすねだよ?別にプライベートな部分でもないし。
そもそも外に出ようって言い出したのは私だし、彼がこうなったの、ある意味私のせいじゃん……。
罪悪感が押し寄せてきた。
「俺がやるって!ゆっくり休んでて!」
疲れたらアレルギーひどくなるかもしれないし!
私は彼の横に座り、身をかがめて綿棒で丁寧に軟膏を塗っていった。
頭の上から、仁野くんの静かな呼吸が聞こえてくる。
「くすぐったい?ごめん、人に塗ってあげるの初めてで、加減わかんなくて……」
仁野くんの声は、ちょっと掠れていた。
「……大丈夫」
塗り終わった。
仁野くんはすぐ立ち上がると、私を見ずにそのままテントを出ていった。
「ちょっと……風に当たってくる」
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