目が合うたび、恋が始まっていた

perari

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俊介は言った。
「東京のコーヒーって、高いな。」
航平は笑いながら返した。
「安いのもあるよ。俺はこれが飲みたいだけ。」
俊介:「ああ、飲めば。」
俊介はスマホを置き、ベッドシーツを取り替え始めた。
隣のベッドのルームメイトは寝転びながらゲームをしていて、向かいのベッドの友人とボイスチャットで遊んでいる。俊介は布団が舞い上がらないよう、できるだけ静かに動いた。
ルームメイトが言う。
「お前、そんなに頻繁にシーツ替える? なんかいつも替えてる気がするんだけど。」
俊介:「そうかな? 一週間以上経ってるし。」
二人のルームメイトはボイスチャットをつけたまま、他の友人たちともわいわい話していた。
隣のベッドのルームメイトが軽い調子で言う。
「男の寮で俊介みたいにマメにシーツ替える奴、珍しいよな。月一で替えたらいいほうだろ。」
ボイスチャットの中の誰かが言った。
「わかってても言うなよ、察しろって。」
別の声が続けた。
「俺も大学のときは結構替えてたよ。なんせ、動画多かったからな。」
隣のベッドのやつが笑いながら「くそっ」と呟いた。
ボイスの中の男がまだ喋っている。
「大体さ、夜動画見た次の日はシーツ替えるんだよ。夜中にわざわざ下に行くの面倒だし、そのまま拭いちゃうこともあるし。」
誰かが叫んだ。
「お前マジでキモいな! 兄貴んとこ帰れよ!」
「何がキモいんだよ、男同士だろ? 誰だってそういう時期あるだろ。ルームメイトがシーツ替えてても聞くなっての。」
俊介は無表情のまま、布団を整え終えた。向こうが何を言っていようが、聞こえないふりをする。
西村や航平の前では、俊介も以前よりは明るくなった。
それでも普段は、やっぱり人付き合いが苦手だった。
たとえ寮の中でも。
男同士でそんな冗談を言い合うのは普通のことかもしれない。
でも俊介には、それがどうにも気まずかった。
だから彼はルームメイトと話すのも好きじゃない。
一番落ち着くのは、誰もいない寮の時間だ。
誰かが帰ってくると、この狭い部屋が急に息苦しくなる。
航平や西村にメッセージを送っている時だけが、
その窮屈さから一瞬だけ解放される時間だった。
夜。俊介は新しく替えたシーツの上に横になった。
二人のルームメイトはまだゲームをしていて、
もう一人はまだ帰っていない。
部屋の灯りはついたまま。眩しくて、目を閉じても落ち着かない。
俊介はアイマスクをつけ、ルームメイトのゲームの声を聞きながら、
ふと、遠い問いを思い浮かべた。
――俺、本当に男が好きなんだろうか。
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