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この話を俊介が聞いたら、きっと冤罪だと嘆くだろう。
そもそも彼の中に「誰かを落とす」なんて気持ちは一つもないのだから。
もうすぐ夏休みだ。
俊介はこの時期が好きだった。冬休みでも夏休みでも、休みに入ると寮の連中はみんな実家へ帰る。
だから寮の部屋は俊介ひとり。
誰とも話さずに済む、静かな空間が手に入るのだ。
航平のいとこ、理花ちゃんは最近恋をしている。
俊介が家庭教師へ向かう途中、小さな広場を通るのだが、そこにはいつも若い子たちが集まってスケボーをしている。
理花ちゃんも今やすっかり雰囲気のある先輩で、彼氏はひとつ年下の後輩だという。
俊介がその広場を通りかかると、理花ちゃんが遠くから手を振ってきた。
「俊介さーん!」
俊介も軽く手を上げて応える。
理花ちゃんとはずっと連絡を取り合っていて、会えばいつも元気に挨拶してくれる。
彼女を見ていると、俊介は心の中でいつも思う。――あの家は子どもの教育が本当にうまいな。みんな明るくて、まっすぐだ。
その夜、理花ちゃんがSNSに九枚の写真を投稿した。
食事の写真、スケボー、タピオカ、そして恋人と手をつないでいる写真。
それを見た航平がコメントをつけた。
「いつの間に彼氏できたんだ?」
理花ちゃんの返信は、
「先月だよ~。ねぇねぇ、大叔母が航平くんにも紹介したい人いるって言ってた。待っててね!」
航平:「……」
理花ちゃん:「ほんとだって!昨日お母さんが言ってたもん。同じ誕生日なんだって。おじさんの同級生の子どもだって。運命じゃん!」
航平:「もう勘弁してくれ。」
俊介はその短いやり取りを見て、航平の心底からの「やれやれ感」が伝わってきて、思わず笑ってしまった。
そして理花ちゃんの投稿に「いいね」をひとつつけた。
最近、俊介と航平は連絡を取っていなかった。
「いいね」を押してからスマホを置き、俊介は洗濯を始めた。
だが「共通の友達」が「いいね」を押すと、相手にも通知が行く。
航平はその通知を見て、俊介のプロフィールを開いた。
最近の投稿はなし。
理花ちゃんの話を思い出しながら、「いいね」に並ぶ俊介の小さなアイコンを見つめる。
なぜだか、そのアイコンが少し寂しげに見えた。
そして彼もまた、無意識に指先で「いいね」を押していた。
俊介が洗濯を終えて戻ると、スマホに通知があった。
――航平が理花ちゃんの投稿に「いいね」した。
俊介は画面を見て、苦笑した。
「コメントまでしたくせに、さらにいいねか……今日はずいぶん暇なんだな。」
航平からメッセージが来たのは、その二日後の夜だった。
俊介がベッドに入ったころ、通知音が鳴った。
そこには一枚の写真が添付されていた。
片手で小さな子犬を支えている写真。
子犬は全身びしょ濡れで、泥だらけ。
その手の上で丸まっている姿が、なんとも小さい。
俊介はすぐに分かった。――それは航平の手だ。
爪の形も、手首から伸びる筋も、見覚えがある。
力強いのに、子犬を包む仕草はどこまでも優しい。
親指が、ちいさな前足にそっと触れていた。
写真の下に、音声メッセージがついていた。
「仕事帰りに、子犬拾った。」
息の混じった声。まだ外を歩いている最中のようだった。
俊介はしばらく、その写真を見つめ続けていた。
そもそも彼の中に「誰かを落とす」なんて気持ちは一つもないのだから。
もうすぐ夏休みだ。
俊介はこの時期が好きだった。冬休みでも夏休みでも、休みに入ると寮の連中はみんな実家へ帰る。
だから寮の部屋は俊介ひとり。
誰とも話さずに済む、静かな空間が手に入るのだ。
航平のいとこ、理花ちゃんは最近恋をしている。
俊介が家庭教師へ向かう途中、小さな広場を通るのだが、そこにはいつも若い子たちが集まってスケボーをしている。
理花ちゃんも今やすっかり雰囲気のある先輩で、彼氏はひとつ年下の後輩だという。
俊介がその広場を通りかかると、理花ちゃんが遠くから手を振ってきた。
「俊介さーん!」
俊介も軽く手を上げて応える。
理花ちゃんとはずっと連絡を取り合っていて、会えばいつも元気に挨拶してくれる。
彼女を見ていると、俊介は心の中でいつも思う。――あの家は子どもの教育が本当にうまいな。みんな明るくて、まっすぐだ。
その夜、理花ちゃんがSNSに九枚の写真を投稿した。
食事の写真、スケボー、タピオカ、そして恋人と手をつないでいる写真。
それを見た航平がコメントをつけた。
「いつの間に彼氏できたんだ?」
理花ちゃんの返信は、
「先月だよ~。ねぇねぇ、大叔母が航平くんにも紹介したい人いるって言ってた。待っててね!」
航平:「……」
理花ちゃん:「ほんとだって!昨日お母さんが言ってたもん。同じ誕生日なんだって。おじさんの同級生の子どもだって。運命じゃん!」
航平:「もう勘弁してくれ。」
俊介はその短いやり取りを見て、航平の心底からの「やれやれ感」が伝わってきて、思わず笑ってしまった。
そして理花ちゃんの投稿に「いいね」をひとつつけた。
最近、俊介と航平は連絡を取っていなかった。
「いいね」を押してからスマホを置き、俊介は洗濯を始めた。
だが「共通の友達」が「いいね」を押すと、相手にも通知が行く。
航平はその通知を見て、俊介のプロフィールを開いた。
最近の投稿はなし。
理花ちゃんの話を思い出しながら、「いいね」に並ぶ俊介の小さなアイコンを見つめる。
なぜだか、そのアイコンが少し寂しげに見えた。
そして彼もまた、無意識に指先で「いいね」を押していた。
俊介が洗濯を終えて戻ると、スマホに通知があった。
――航平が理花ちゃんの投稿に「いいね」した。
俊介は画面を見て、苦笑した。
「コメントまでしたくせに、さらにいいねか……今日はずいぶん暇なんだな。」
航平からメッセージが来たのは、その二日後の夜だった。
俊介がベッドに入ったころ、通知音が鳴った。
そこには一枚の写真が添付されていた。
片手で小さな子犬を支えている写真。
子犬は全身びしょ濡れで、泥だらけ。
その手の上で丸まっている姿が、なんとも小さい。
俊介はすぐに分かった。――それは航平の手だ。
爪の形も、手首から伸びる筋も、見覚えがある。
力強いのに、子犬を包む仕草はどこまでも優しい。
親指が、ちいさな前足にそっと触れていた。
写真の下に、音声メッセージがついていた。
「仕事帰りに、子犬拾った。」
息の混じった声。まだ外を歩いている最中のようだった。
俊介はしばらく、その写真を見つめ続けていた。
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