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大学に入ったら、このことはもう過去の話になるはずだった。みんなそれぞれの道を歩いているんだし。
だけど、理紗ちゃんの彼氏が、なんと同じ大学の体育会のやつで、しかも坂本のすぐ近くだった。まあ、それは偶然だけど。
飲み会でトイレに行って戻ってきたら、理紗ちゃんがニヤニヤしながら坂本に聞いていた。
「悠真とまだ付き合ってないの?」
は?坂本と俺が付き合ってる?頭おかしいんじゃないか?
俺は花壇の陰に隠れてこっそり聞いた。
いつもクールな坂本の表情も一瞬止まって、冗談だと思ったのか軽く首を振った。
「いや、付き合ってないよ。」
理紗ちゃんは目を見開いて、誇張したように言った。
「まだ付き合ってないの?悠真が嫌なんじゃない?そんなわけないよ……」
じっくり考えた後、こそこそと小声で言った。
「知らない?前に悠真に、どんな女の子が好きか聞いたら、なんと……」
うわあああ!
俺は思わず理紗ちゃんの口を塞ごうと飛び出した。テーブルまで来て手を伸ばしたその時、理紗ちゃんが大声で叫んだ。
「悠真は、坂本が女の子好きじゃないって言ってたよ!」
店内の視線が一斉に俺たちの席に集まった。ざわざわと囁く声が響く。
周りは笑いたそうだったけど、坂本の氷のような無表情を見て笑えず、みんな顔を歪めて苦しそうだった。
一方、坂本本人は一瞬驚いたあと、俺を見て少しだけ笑みを浮かべた。
終わったな!
俺は慌てて何もなかったように手を引っ込めて、ティッシュを掴んで理紗ちゃんに渡しながら、歯を食いしばって言った。
「さっさと口拭けよ。」
帰り道、俺は前を歩き、坂本は後ろをついてきた。
中学までは、あのクソ野郎の偉そうな態度が気に入らなかったけど、小さい頃からの唯一の親友だから、俺も我慢して彼の“パパ”役をしてきた。
だけど、高校に入ってから急に距離を置かれるようになった。
思えば、二人っきりでゆっくり過ごしたのは、中学卒業後の夏休みが最後だった。
暑い日で、坂本はあまり話さず、風のようにさっと走り去って、俺の首筋に冷たいコーラの缶を押し付けた。
冷たさにハッとして、俺は追いかけて彼を殴ろうとした。
それから、なぜかあいつは一方的に怒り出して、今に至っている。
坂本は路上の街灯の下で俺を押さえつけた。
灯りに照らされて彼の顔が明滅し、酒の匂いが少し漂っている。顔が近づいてきて、吐息が俺の頬を撫でた。少し酔っているらしい。
俺は腕を伸ばして押し返そうとしたけど、体格差がありすぎて力が及ばない。坂本はびくともしなかった。
「おい、俺が背負って帰ると思うなよ。無理だからな。」
坂本は黙って長いまつげを伏せて俺を見ていた。その瞳には俺にはわからない輝きがあった。
彼が黙ると、逆に俺のほうが戸惑ってしまう。考えたら、坂本が俺の好きな女の子を奪わなければ、こんな噂を流すこともなかったんだ。
理不尽だけど、因果応報ってやつだな。
だけど、理紗ちゃんの彼氏が、なんと同じ大学の体育会のやつで、しかも坂本のすぐ近くだった。まあ、それは偶然だけど。
飲み会でトイレに行って戻ってきたら、理紗ちゃんがニヤニヤしながら坂本に聞いていた。
「悠真とまだ付き合ってないの?」
は?坂本と俺が付き合ってる?頭おかしいんじゃないか?
俺は花壇の陰に隠れてこっそり聞いた。
いつもクールな坂本の表情も一瞬止まって、冗談だと思ったのか軽く首を振った。
「いや、付き合ってないよ。」
理紗ちゃんは目を見開いて、誇張したように言った。
「まだ付き合ってないの?悠真が嫌なんじゃない?そんなわけないよ……」
じっくり考えた後、こそこそと小声で言った。
「知らない?前に悠真に、どんな女の子が好きか聞いたら、なんと……」
うわあああ!
俺は思わず理紗ちゃんの口を塞ごうと飛び出した。テーブルまで来て手を伸ばしたその時、理紗ちゃんが大声で叫んだ。
「悠真は、坂本が女の子好きじゃないって言ってたよ!」
店内の視線が一斉に俺たちの席に集まった。ざわざわと囁く声が響く。
周りは笑いたそうだったけど、坂本の氷のような無表情を見て笑えず、みんな顔を歪めて苦しそうだった。
一方、坂本本人は一瞬驚いたあと、俺を見て少しだけ笑みを浮かべた。
終わったな!
俺は慌てて何もなかったように手を引っ込めて、ティッシュを掴んで理紗ちゃんに渡しながら、歯を食いしばって言った。
「さっさと口拭けよ。」
帰り道、俺は前を歩き、坂本は後ろをついてきた。
中学までは、あのクソ野郎の偉そうな態度が気に入らなかったけど、小さい頃からの唯一の親友だから、俺も我慢して彼の“パパ”役をしてきた。
だけど、高校に入ってから急に距離を置かれるようになった。
思えば、二人っきりでゆっくり過ごしたのは、中学卒業後の夏休みが最後だった。
暑い日で、坂本はあまり話さず、風のようにさっと走り去って、俺の首筋に冷たいコーラの缶を押し付けた。
冷たさにハッとして、俺は追いかけて彼を殴ろうとした。
それから、なぜかあいつは一方的に怒り出して、今に至っている。
坂本は路上の街灯の下で俺を押さえつけた。
灯りに照らされて彼の顔が明滅し、酒の匂いが少し漂っている。顔が近づいてきて、吐息が俺の頬を撫でた。少し酔っているらしい。
俺は腕を伸ばして押し返そうとしたけど、体格差がありすぎて力が及ばない。坂本はびくともしなかった。
「おい、俺が背負って帰ると思うなよ。無理だからな。」
坂本は黙って長いまつげを伏せて俺を見ていた。その瞳には俺にはわからない輝きがあった。
彼が黙ると、逆に俺のほうが戸惑ってしまう。考えたら、坂本が俺の好きな女の子を奪わなければ、こんな噂を流すこともなかったんだ。
理不尽だけど、因果応報ってやつだな。
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