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2. 婚約の無効に向けて
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「ミレリア様の望む穏便に済ませられるか分かりませんが、先日従姉妹が婚姻を無効に致しました」
「婚姻の無効?」
ミレリアにとって興味深い話だった。
「はい。婚姻の無効は離婚とは異なり、結婚自体を無かった事に出来ます。しかし、白い結婚である事を証明する必要があります」
「その方はどうやって証明したの?」
「医師の診断書を使いました」
「そうなの。医師以外でも白い結婚を証明出来れば、婚姻の無効は可能かしら?」
「と、申しますと?」
ロレッタは首を傾げでミレリアを見た。
「毎晩部屋の前で護衛をしてくれている方が証言してくれると思うの。他には侍女達ね」
「はい。それで十分かと思います」
「ふふ。そう」
ロレッタの返事を聞くと、ミレリアは嬉しそうに笑った。
「ですが、第一王子殿下との婚姻の無効は中々難しいかと思います」
「ええ、分かっているわ。だけど、少しだけ希望が見えたわ。私も夫に愛されて幸せになりたいの。せめて、妻の事を愛している振りが出来る人と結婚がしたかったわ」
悲壮感漂うミレリアの表情に、ロレッタは見入ってしまった。
ロレッタの知るクロヴィスとミレリアの仲は、悪く無かったように思う。
クロヴィスが王太子になれるのは、ミレリアのおかげだ。
それなのにクロヴィスは、結婚してすぐにミレリアを無下に扱った。
ミレリアをこのように扱えば、離婚の話が出て来るのは予想が出来た事で、王太子の座が第二王子に代わる可能性も考えられただろうに。
王太子になりたくないのであれば、ミレリアとの結婚を断われば良かったのだ。
ロレッタの予想ではクロヴィスは、ミレリアの事が好きで結婚をしたのでは無いだろう。もしそうであれば、ミレリアに冷たく当たる必要はないのだから。
ロレッタが知るクロヴィスは、真面目を絵に描いたような人物だ。
だから、ランチェスター公爵家を後ろ盾につけて、王太子に選ばれたのだろう。
そのような人物がいったいなぜ?
ロレッタは首をひねった。
「婚姻の無効となれば、ミレリア様の所にはすぐに次の縁談の話が舞い込むでしょうね」
「そうかしら?」
ミレリアは嬉しそうに笑った。
今日一番の笑顔だ。
先程からミレリアの切なげな顔を見ていたロレッタは、婚姻の無効が無事に成立すと良いと思った。
「ええ。ミレリア様は社交界の華ですから」
「ふふ。お世辞でも嬉しいわ」
お世辞では無いのだが、ミレリアには伝わらなかったようだ。
ロレッタが帰ってから、ミレリアはすぐ行動に移した。
父親のランチェスター公爵に向けて手紙を書き、二日後には実家のランチェスター家の屋敷に帰った。
クロヴィスにも、実家に帰る事を手紙に書き、返事を一日待ったが、返事が届く事は無かった。
公爵家に帰ったミレリアは、父と母に結婚をしてからの半年間の出来事を報告した。
憤慨した公爵夫妻は、すぐに婚姻無効の書類を準備し、陛下との謁見を取り付けた。
ミレリアが実家に帰ってから一週間程経った今日。ミレリアは、王宮に戻って来ていた。
今日は父も一緒だ。心強い。
「愚息が申し訳ない事をした」
陛下からの謝罪の言葉は聞いたが、クロヴィスからは無く、ミレリアは目の前に座る二ヶ月ぶりに会う夫を見た。
クロヴィスは目を瞬かせて固まっている。
もとは王家からクロヴィスを王太子とするためにと打診された婚姻だった。
それをこのような扱いをすれば、こうなる事は分かっていただろうに。
ミレリアは首を傾げてクロヴィスを見たが、クロヴィスの表情からは驚き以外は読み取れない。
ミレリアがクロヴィスを観察している間に、陛下とランチェスター公爵の話し合いは進んで行き、婚姻無効の書類にサインをする事になった。
陛下がサインをすると、慰謝料を支払う事と嫁ぎ先を斡旋すると言ったが、ランチェスター公爵は、慰謝料のみでミレリアの新たな嫁ぎ先を見つけるのに王家の力を借りるのは断った。
陛下が婚姻無効の書類にサインを終えると、空欄はクロヴィスのみとなった。
目の前に置かれた書類を見たクロヴィスは微動だにしなかった。
「ランチェスター公爵」
皆の視線が集まる中クロヴィスは、重々しく顔上げ、ランチェスター公爵を見た。
ランチェスター公爵は、無言のままクロヴィスと視線を合わす。
「……ランチェスター公爵。ミレリア嬢との婚約を続けさせていただけないでしょうか?」
「婚姻の無効?」
ミレリアにとって興味深い話だった。
「はい。婚姻の無効は離婚とは異なり、結婚自体を無かった事に出来ます。しかし、白い結婚である事を証明する必要があります」
「その方はどうやって証明したの?」
「医師の診断書を使いました」
「そうなの。医師以外でも白い結婚を証明出来れば、婚姻の無効は可能かしら?」
「と、申しますと?」
ロレッタは首を傾げでミレリアを見た。
「毎晩部屋の前で護衛をしてくれている方が証言してくれると思うの。他には侍女達ね」
「はい。それで十分かと思います」
「ふふ。そう」
ロレッタの返事を聞くと、ミレリアは嬉しそうに笑った。
「ですが、第一王子殿下との婚姻の無効は中々難しいかと思います」
「ええ、分かっているわ。だけど、少しだけ希望が見えたわ。私も夫に愛されて幸せになりたいの。せめて、妻の事を愛している振りが出来る人と結婚がしたかったわ」
悲壮感漂うミレリアの表情に、ロレッタは見入ってしまった。
ロレッタの知るクロヴィスとミレリアの仲は、悪く無かったように思う。
クロヴィスが王太子になれるのは、ミレリアのおかげだ。
それなのにクロヴィスは、結婚してすぐにミレリアを無下に扱った。
ミレリアをこのように扱えば、離婚の話が出て来るのは予想が出来た事で、王太子の座が第二王子に代わる可能性も考えられただろうに。
王太子になりたくないのであれば、ミレリアとの結婚を断われば良かったのだ。
ロレッタの予想ではクロヴィスは、ミレリアの事が好きで結婚をしたのでは無いだろう。もしそうであれば、ミレリアに冷たく当たる必要はないのだから。
ロレッタが知るクロヴィスは、真面目を絵に描いたような人物だ。
だから、ランチェスター公爵家を後ろ盾につけて、王太子に選ばれたのだろう。
そのような人物がいったいなぜ?
ロレッタは首をひねった。
「婚姻の無効となれば、ミレリア様の所にはすぐに次の縁談の話が舞い込むでしょうね」
「そうかしら?」
ミレリアは嬉しそうに笑った。
今日一番の笑顔だ。
先程からミレリアの切なげな顔を見ていたロレッタは、婚姻の無効が無事に成立すと良いと思った。
「ええ。ミレリア様は社交界の華ですから」
「ふふ。お世辞でも嬉しいわ」
お世辞では無いのだが、ミレリアには伝わらなかったようだ。
ロレッタが帰ってから、ミレリアはすぐ行動に移した。
父親のランチェスター公爵に向けて手紙を書き、二日後には実家のランチェスター家の屋敷に帰った。
クロヴィスにも、実家に帰る事を手紙に書き、返事を一日待ったが、返事が届く事は無かった。
公爵家に帰ったミレリアは、父と母に結婚をしてからの半年間の出来事を報告した。
憤慨した公爵夫妻は、すぐに婚姻無効の書類を準備し、陛下との謁見を取り付けた。
ミレリアが実家に帰ってから一週間程経った今日。ミレリアは、王宮に戻って来ていた。
今日は父も一緒だ。心強い。
「愚息が申し訳ない事をした」
陛下からの謝罪の言葉は聞いたが、クロヴィスからは無く、ミレリアは目の前に座る二ヶ月ぶりに会う夫を見た。
クロヴィスは目を瞬かせて固まっている。
もとは王家からクロヴィスを王太子とするためにと打診された婚姻だった。
それをこのような扱いをすれば、こうなる事は分かっていただろうに。
ミレリアは首を傾げてクロヴィスを見たが、クロヴィスの表情からは驚き以外は読み取れない。
ミレリアがクロヴィスを観察している間に、陛下とランチェスター公爵の話し合いは進んで行き、婚姻無効の書類にサインをする事になった。
陛下がサインをすると、慰謝料を支払う事と嫁ぎ先を斡旋すると言ったが、ランチェスター公爵は、慰謝料のみでミレリアの新たな嫁ぎ先を見つけるのに王家の力を借りるのは断った。
陛下が婚姻無効の書類にサインを終えると、空欄はクロヴィスのみとなった。
目の前に置かれた書類を見たクロヴィスは微動だにしなかった。
「ランチェスター公爵」
皆の視線が集まる中クロヴィスは、重々しく顔上げ、ランチェスター公爵を見た。
ランチェスター公爵は、無言のままクロヴィスと視線を合わす。
「……ランチェスター公爵。ミレリア嬢との婚約を続けさせていただけないでしょうか?」
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