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3.婚姻の無効
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「娘を無下にされて、クロヴィス殿下を支持する事は出来かねます」
「私の事を支持しなくても構いません。王太子には弟がなればいい。ですが、ミレリア嬢との婚姻を続けさせていただけないでしょうか?」
王太子は辞退するけれど、ミレリアはとは結婚を続けたいと言う事だろうか?
訳が分からずミレリアは首を傾げた。
「なんの為にでしょうか?」
「私がミレリア嬢の夫であり続けたいからです」
「娘を傷つけたのに夫でありたいと申すのですか」
「ミレリア嬢を傷つけた事、深くお詫び申しあげます。どうか、ミレリア嬢との婚姻を続けさせていただけないでしょうか」
ミレリアには、クロヴィスがなぜこんなにも苦しそうに、父に許しを請うのかが分からなかった。
厳しい視線をクロヴィスに向けていたランチェスター公爵は、ミレリアを見た。
「ミレリアはどうしたい」
「私は幸せになりたいです。たとえ政略結婚でも、少しくらいは夫に愛されたかった。嘘でもいいから好きだと言って欲しかった。ですので、申し訳ありませんがクロヴィス殿下には、書類にサインをしていただきたいと思います」
クロヴィスは悲痛な表情を浮かべた。
「……分かりました。今まで悲しい思いをさせた事、申し訳なかった」
クロヴィスは婚姻無効の書類にサインを終えた。
後日、二人の結婚が無効になった事を国王が発表した。
又、王家側に非があり、半年後に予定していた立太子の儀を、クロヴィスからアレックスに代わる事も報告された。
婚姻の無効の手続きが完了してから一月が経った。
あれからミレリアは実家でのんびりと過ごし、今日は久しぶりに社交の場に顔を出していた。
弟にエスコートをされて来たミレリアは、大広間に入るとすぐに令息達に囲まれた。
ミレリアは笑顔で対応し、順番にダンスを踊る。
ミレリアは友人の所に行きたかったが、群がる令息達の対応に追われていた。
ミレリアを囲んでいた令息達だったが、いきなり左右に離れ道を開けた。
ミレリアが顔上げると視界に入ったのはクロヴィスだった。
今さら何の用だろうかと、ミレリアはクロヴィスを見据えた。
「ミレリア嬢……少しだけ話がしたいのだがいいだろうか」
「ええ、少しだけでしたら」
ミレリアが二人きりになるのを断ったので、他者に話を聞かれないように踊りながら話す事となった。
クロヴィスとの久しぶりのダンスに、ミレリアは少し緊張をした。
「結婚をしていた間は、悲しい思いをさせて本当に申し訳なかった」
「いえ、もう無効となったのでお気になさらないで下さい」
クロヴィスはミレリアの言葉に顔を歪ませる。
「書類上は無かった事になったが、私の中では君との結婚は、大切な時間だった」
大切だったら、何故いないもののように扱ったんだろうか?
ミレリアはクロヴィスに問いかけようとして、思いとどまった。
今更聞いて何になる。クロヴィスとの結婚は無かった事になったのだ。
きらびやかな結婚式も。国民に祝福された婚姻のパレードも。
「この間、君の話を聞いて……最後にこれだけは伝えなくてはと思った。私はミレリア嬢の事が好きだった。その気持ちに嘘はない」
「だったら何故……」
ミレリアの小さなつぶやきを、クロヴィスはしっかりと聞き取った。
「ランチェスター公爵に後ろ盾になってもらったが、私の敵はまだまだ居た。与えられた仕事もこなす事が出来なければ、付け込まれると思った。今までは私だけだったが、結婚をしてからは妻の君も狙われると思った。だから私は、誰にも文句を言われないように仕事に励み、君を守っているつもりだった。しかし、私は何も見えていなかったようだ。私が君との時間を取らない事で、ミレリア嬢が傷つく事を言っている者がいる事を知らなかった。そして、私自身が君を傷つけてしまった。今更こんな事を言われても困るだろうと思ったが、この間の君の言葉は聞いて最後にこれだけは伝えなくてはと思った。私はミレリア嬢が好きだ」
ミレリアは頬が熱くなる。
しかし、クロヴィスを今でも忘れられない自分と、ならば何故半年もの長い間自分を放置出来たのかとクロヴィスを許せない自分が居た。
出来れば、結婚をしている時に言って欲しかった。
「もっと、早く聞きたかったです。私もクロヴィス殿下の事が好きでした。もう、過去の話ですが……。それに、どんなに忙しくても、手紙の返事くらいは出来ましたよね?」
「手紙? そう言えば私が出した手紙に一度も返事がなかったが……」
「えっ」
クロヴィスもミレリアも手紙で連絡を取ろうとしていたが、お互いに一通も届いていない事が分かったのだった。
「私の事を支持しなくても構いません。王太子には弟がなればいい。ですが、ミレリア嬢との婚姻を続けさせていただけないでしょうか?」
王太子は辞退するけれど、ミレリアはとは結婚を続けたいと言う事だろうか?
訳が分からずミレリアは首を傾げた。
「なんの為にでしょうか?」
「私がミレリア嬢の夫であり続けたいからです」
「娘を傷つけたのに夫でありたいと申すのですか」
「ミレリア嬢を傷つけた事、深くお詫び申しあげます。どうか、ミレリア嬢との婚姻を続けさせていただけないでしょうか」
ミレリアには、クロヴィスがなぜこんなにも苦しそうに、父に許しを請うのかが分からなかった。
厳しい視線をクロヴィスに向けていたランチェスター公爵は、ミレリアを見た。
「ミレリアはどうしたい」
「私は幸せになりたいです。たとえ政略結婚でも、少しくらいは夫に愛されたかった。嘘でもいいから好きだと言って欲しかった。ですので、申し訳ありませんがクロヴィス殿下には、書類にサインをしていただきたいと思います」
クロヴィスは悲痛な表情を浮かべた。
「……分かりました。今まで悲しい思いをさせた事、申し訳なかった」
クロヴィスは婚姻無効の書類にサインを終えた。
後日、二人の結婚が無効になった事を国王が発表した。
又、王家側に非があり、半年後に予定していた立太子の儀を、クロヴィスからアレックスに代わる事も報告された。
婚姻の無効の手続きが完了してから一月が経った。
あれからミレリアは実家でのんびりと過ごし、今日は久しぶりに社交の場に顔を出していた。
弟にエスコートをされて来たミレリアは、大広間に入るとすぐに令息達に囲まれた。
ミレリアは笑顔で対応し、順番にダンスを踊る。
ミレリアは友人の所に行きたかったが、群がる令息達の対応に追われていた。
ミレリアを囲んでいた令息達だったが、いきなり左右に離れ道を開けた。
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今さら何の用だろうかと、ミレリアはクロヴィスを見据えた。
「ミレリア嬢……少しだけ話がしたいのだがいいだろうか」
「ええ、少しだけでしたら」
ミレリアが二人きりになるのを断ったので、他者に話を聞かれないように踊りながら話す事となった。
クロヴィスとの久しぶりのダンスに、ミレリアは少し緊張をした。
「結婚をしていた間は、悲しい思いをさせて本当に申し訳なかった」
「いえ、もう無効となったのでお気になさらないで下さい」
クロヴィスはミレリアの言葉に顔を歪ませる。
「書類上は無かった事になったが、私の中では君との結婚は、大切な時間だった」
大切だったら、何故いないもののように扱ったんだろうか?
ミレリアはクロヴィスに問いかけようとして、思いとどまった。
今更聞いて何になる。クロヴィスとの結婚は無かった事になったのだ。
きらびやかな結婚式も。国民に祝福された婚姻のパレードも。
「この間、君の話を聞いて……最後にこれだけは伝えなくてはと思った。私はミレリア嬢の事が好きだった。その気持ちに嘘はない」
「だったら何故……」
ミレリアの小さなつぶやきを、クロヴィスはしっかりと聞き取った。
「ランチェスター公爵に後ろ盾になってもらったが、私の敵はまだまだ居た。与えられた仕事もこなす事が出来なければ、付け込まれると思った。今までは私だけだったが、結婚をしてからは妻の君も狙われると思った。だから私は、誰にも文句を言われないように仕事に励み、君を守っているつもりだった。しかし、私は何も見えていなかったようだ。私が君との時間を取らない事で、ミレリア嬢が傷つく事を言っている者がいる事を知らなかった。そして、私自身が君を傷つけてしまった。今更こんな事を言われても困るだろうと思ったが、この間の君の言葉は聞いて最後にこれだけは伝えなくてはと思った。私はミレリア嬢が好きだ」
ミレリアは頬が熱くなる。
しかし、クロヴィスを今でも忘れられない自分と、ならば何故半年もの長い間自分を放置出来たのかとクロヴィスを許せない自分が居た。
出来れば、結婚をしている時に言って欲しかった。
「もっと、早く聞きたかったです。私もクロヴィス殿下の事が好きでした。もう、過去の話ですが……。それに、どんなに忙しくても、手紙の返事くらいは出来ましたよね?」
「手紙? そう言えば私が出した手紙に一度も返事がなかったが……」
「えっ」
クロヴィスもミレリアも手紙で連絡を取ろうとしていたが、お互いに一通も届いていない事が分かったのだった。
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