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4.裏切り
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「必ず手紙の行方を見つけるから、私に少し時間をいただけないだろうか?」
「はい」
「君の手紙を追跡したい。指定した時間に私に手紙を書いて送って欲しいのだが、構わなだろうか」
「分かりました」
こうしてミレリアは、後日クロヴィス宛てに手紙を書くこととなった。
ダンスが終わるとクロヴィスは、令息達の所でもなく、弟の所でもなく、ミレリアの友人が居るところまでエスコートした。
ミレリアは令息達の所に戻されずに安心する。
クロヴィスのさり気ない気遣いに、ミレリアは再び心惹かれていた。
ついこの間までは、クロヴィスを非難する気持ちがあったのに、クロヴィスを好きだった頃の自分を思い出し、もう少しだけクロヴィスと一緒にいたいと思ってしまった自分を、ミレリアは自嘲した。
ミレリアはこの後、友人との話に花を咲かせてから夜会を後にする。
夜会から数日。
ミレリアは無事にクロヴィスに手紙が届いたのか、気もそぞろな状態だった。
そして、ミレリアに一通の手紙が届く。クロヴィスからだった。
クロヴィスからの手紙は、騎士のオルビスから渡された。
彼は平民出身だが、実力がありクロヴィスが自ら側に置いた者だった。
手紙の内容には、クロヴィスの側近のアドニスが手紙を隠し持っていた事が書かれていた。
アドニスには協力者がいること。また、他にも罪を重ねている可能性がある為、しばらく泳がせる事にしたそうだ。
また、クロヴィスに手紙を書く時は、オルビス宛てで書いて欲しい事が書いてある。
「どうして……」
クロヴィスからの手紙を読み終えたミレリアは、悲愴な顔でつぶやいた。
それからさらに数日が経ち、ミレリアは父に呼ばれた。
「ミレリア、クロヴィス殿下の側近のアドニスが、ミレリアとクロヴィス殿下の手紙を隠し持ち、また、二人を会わせないように遠ざけていた」
「では、私がクロヴィス殿下に会えなかったのは……」
「クロヴィス殿下の意思ではない」
「そうですか」
ランチェスター公爵は深いため息をついた後、話を続けた。
「それから、クロヴィス殿下の側近がブルーノ殿を除き、総入れ替えとなった」
「手紙の件には、クロヴィス殿下の側近の方がほとんど関わっていたのですか?」
「手紙の件だけではない。クロヴィス殿下とミレリアを会わせないようにした事、ミレリアに聞こえるように陰口を言った事。結婚初夜にクロヴィス殿下が寝室に来られなかったのも、アドニスに呼び止められていたらしい。全てアドニスの指示のもとに行われていた。ミレリアの近くに居た侍女も、アドニスの指示で動いている者がいた。思いの外、殿下の出自を嫌う者が多かったようだ。ミレリア、私では殿下の後ろ盾に力及ばなかった。申し訳ない」
「いえ、お父様が悪いのではありません」
クロヴィスを信じなかったのはミレリア自身。
婚姻の無効の話を出す前に、なんとかしてクロヴィスと会って話そうとしなかったのはミレリアだ。
うつむくミレリアをランチェスター公爵は、苦しげに見守った。
「アドニス様は、なんの為にこのような事をしたのでしょうか?」
「ミレリアの事が好きだったようだ」
「えっ」
「クロヴィス殿下と別れさせたかったと」
「そう、ですか」
「アドニス・エルーの実家のエルー伯爵家には、王家が多額の賠償金を請求した。没落するのも時間の問題だろう」
ミレリアは顔上げ、目を見張った。
「没落……それ程まで……」
「仕方のない事だ。エルー家には見せしめになってもらう。それをしなければ、クロヴィス殿下の地位を確立出来ない」
「分かりました」
クロヴィスはミレリアの知らない所で、誹謗中傷を受けていたのだろう。
この間も敵が多いと言っていた。
側近がほぼ総入れ替えになると言う事は、クロヴィスは陛下やミレリアの父など味方になったくれただろう人物にも隠し、一人耐えていたのだろう。
ミレリアはクロヴィスを想うと胸が痛くなった。
ミレリアは夜会にほとんど顔を出さなくなった。
縁談の話がいくつも来たが全て断った。
ミレリアの両親は、ミレリアを無理に結婚させようとはせず、ミレリアの弟もミレリアにずっと家にいていいと言ってくれた。
社交の場に出なくなったミレリアは、福祉活動に力を入れ、孤児院などに訪問する事が増えていった。
「はい」
「君の手紙を追跡したい。指定した時間に私に手紙を書いて送って欲しいのだが、構わなだろうか」
「分かりました」
こうしてミレリアは、後日クロヴィス宛てに手紙を書くこととなった。
ダンスが終わるとクロヴィスは、令息達の所でもなく、弟の所でもなく、ミレリアの友人が居るところまでエスコートした。
ミレリアは令息達の所に戻されずに安心する。
クロヴィスのさり気ない気遣いに、ミレリアは再び心惹かれていた。
ついこの間までは、クロヴィスを非難する気持ちがあったのに、クロヴィスを好きだった頃の自分を思い出し、もう少しだけクロヴィスと一緒にいたいと思ってしまった自分を、ミレリアは自嘲した。
ミレリアはこの後、友人との話に花を咲かせてから夜会を後にする。
夜会から数日。
ミレリアは無事にクロヴィスに手紙が届いたのか、気もそぞろな状態だった。
そして、ミレリアに一通の手紙が届く。クロヴィスからだった。
クロヴィスからの手紙は、騎士のオルビスから渡された。
彼は平民出身だが、実力がありクロヴィスが自ら側に置いた者だった。
手紙の内容には、クロヴィスの側近のアドニスが手紙を隠し持っていた事が書かれていた。
アドニスには協力者がいること。また、他にも罪を重ねている可能性がある為、しばらく泳がせる事にしたそうだ。
また、クロヴィスに手紙を書く時は、オルビス宛てで書いて欲しい事が書いてある。
「どうして……」
クロヴィスからの手紙を読み終えたミレリアは、悲愴な顔でつぶやいた。
それからさらに数日が経ち、ミレリアは父に呼ばれた。
「ミレリア、クロヴィス殿下の側近のアドニスが、ミレリアとクロヴィス殿下の手紙を隠し持ち、また、二人を会わせないように遠ざけていた」
「では、私がクロヴィス殿下に会えなかったのは……」
「クロヴィス殿下の意思ではない」
「そうですか」
ランチェスター公爵は深いため息をついた後、話を続けた。
「それから、クロヴィス殿下の側近がブルーノ殿を除き、総入れ替えとなった」
「手紙の件には、クロヴィス殿下の側近の方がほとんど関わっていたのですか?」
「手紙の件だけではない。クロヴィス殿下とミレリアを会わせないようにした事、ミレリアに聞こえるように陰口を言った事。結婚初夜にクロヴィス殿下が寝室に来られなかったのも、アドニスに呼び止められていたらしい。全てアドニスの指示のもとに行われていた。ミレリアの近くに居た侍女も、アドニスの指示で動いている者がいた。思いの外、殿下の出自を嫌う者が多かったようだ。ミレリア、私では殿下の後ろ盾に力及ばなかった。申し訳ない」
「いえ、お父様が悪いのではありません」
クロヴィスを信じなかったのはミレリア自身。
婚姻の無効の話を出す前に、なんとかしてクロヴィスと会って話そうとしなかったのはミレリアだ。
うつむくミレリアをランチェスター公爵は、苦しげに見守った。
「アドニス様は、なんの為にこのような事をしたのでしょうか?」
「ミレリアの事が好きだったようだ」
「えっ」
「クロヴィス殿下と別れさせたかったと」
「そう、ですか」
「アドニス・エルーの実家のエルー伯爵家には、王家が多額の賠償金を請求した。没落するのも時間の問題だろう」
ミレリアは顔上げ、目を見張った。
「没落……それ程まで……」
「仕方のない事だ。エルー家には見せしめになってもらう。それをしなければ、クロヴィス殿下の地位を確立出来ない」
「分かりました」
クロヴィスはミレリアの知らない所で、誹謗中傷を受けていたのだろう。
この間も敵が多いと言っていた。
側近がほぼ総入れ替えになると言う事は、クロヴィスは陛下やミレリアの父など味方になったくれただろう人物にも隠し、一人耐えていたのだろう。
ミレリアはクロヴィスを想うと胸が痛くなった。
ミレリアは夜会にほとんど顔を出さなくなった。
縁談の話がいくつも来たが全て断った。
ミレリアの両親は、ミレリアを無理に結婚させようとはせず、ミレリアの弟もミレリアにずっと家にいていいと言ってくれた。
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