8 / 16
1.生い立ち(クロヴィス視点)
しおりを挟む
クロヴィスの母親は、この国の国王の愛妾だった。
幼いクロヴィスに心無い言葉を投げかける者がいて、物心がついてから数年後には、クロヴィスは自分が生まれて来てはいけなかったと思うようになった。
クロヴィスは母親が亡くなるまでは離宮で暮らす。王宮に行く時は一歳年下の弟のアレックスと一緒に、勉学に励む時だ。
まだクロヴィスの母が生きていた頃、王宮の廊下から国王である父親が、離宮に早足で向う姿が見えた。
クロヴィスがふと視線を上げると、目の前にクロヴィスがいる方向に向かって歩いてくる王妃が見えた。
王妃はふと立ち止まり、クロヴィスが先程まで見ていた方向に視線を向けた。
すると悲嘆な面持ちになり、子どもながらに自分達親子は、やってはいけない事をしているように思えてならなかった。
クロヴィスの母親が亡くなると、クロヴィスは住まいを王宮に移す。
離宮に居るときよりも、クロヴィスに心無い言葉を投げかける人が増えた。
この時のクロヴィスは、自分の存在そのものが悪に思えてならなかった。
その為、クロヴィスは悪意ある言葉に目をつぶり、誰にも相談する事なく、国王はクロヴィスを疎ましく、憎憎しく思っている人間で、王宮内が溢れている事に気づかなかった。
王妃とアレックスはクロヴィスを家族として扱い、クロヴィスの母親が亡くなると王妃はクロヴィスに、これからは自分の事を母親のように思って良いと言ってくれたが、クロヴィスは自分のような者がそのように思う事は出来ないと、自ら壁を作った。
クロヴィスは第一王子で、表立って誹謗中傷は受けなかったが、裏では日常茶飯事だった。
だんだんとクロヴィスは、相手に付け入る隙を与え無ければいいと思うようになる。
欠点を減らし、勉強では常に高得点を取った。
クロヴィスが与えられた課題を完璧にこなして行くと誹謗中傷が減った。
また、クロヴィスに言い寄る者も出て来るようになった。
成長をしたクロヴィスは学園に通うようになる。
そこで出会ったのが、ブルーノとアドニスだった。クロヴィスにとって、心から友人と呼べるのはこの二人だった。
クロヴィスはこの二人を自分の側近にし、護衛も自ら選んだ。
ある年の舞踏会の事だ。
一人の令嬢に目を奪われた。
「ブルーノ、あの美しい人は」
「ん? 美しい人って……ああ、今回デビュタントのミレリア・ランチェスター公爵令嬢ことか」
「ミレリア嬢と言うのか……」
「それにしても、どんどん人が集まってくるな。あれ、ダンスの順番待ちをしている男どもだろう? ほら、ちゃっかりアドニスもいるぞ」
ブルーノは可笑しそうな顔で、アドニスを見た。その横でクロヴィスは、今だにミレリアに目を奪われいた。
「おーい、クロヴィス殿下。クロヴィス様。クロヴィス、ちょっとクロヴィス聞いているのか?」
「うん? 何か言ったか」
「いや、もういいや」
ブルーノは呆れた顔をしてクロヴィスを見ていた。
美しい人は全ての縁談を断っていると聞いた。と言っても、彼女が断っているのではなくランチェスター公爵が断っているようだが。
「この間、ミレリア嬢と踊ったんだけど、自分に縁談の話が来ているの知らないんだってさ」
アドニスがそう言うと、ブルーノが相槌を打つ。
今社交界では、誰が彼女の心を射止めるのか話題になっていた。今の所は誰も射止めてなさそうだが。
挨拶をする事がやっとの自分には、到底縁のない話だ。
しかし、それから数ヶ月後に夢のような出来事が起こる。
父親が彼女との婚約の話を持ってきたのだ。
正直王太子には興味が無かったし、自分がなる事で火種になる事が予想出来たが、どうしてもこのチャンスを逃したく無かったので、その話を受け入れる事にしたのだった。
幼いクロヴィスに心無い言葉を投げかける者がいて、物心がついてから数年後には、クロヴィスは自分が生まれて来てはいけなかったと思うようになった。
クロヴィスは母親が亡くなるまでは離宮で暮らす。王宮に行く時は一歳年下の弟のアレックスと一緒に、勉学に励む時だ。
まだクロヴィスの母が生きていた頃、王宮の廊下から国王である父親が、離宮に早足で向う姿が見えた。
クロヴィスがふと視線を上げると、目の前にクロヴィスがいる方向に向かって歩いてくる王妃が見えた。
王妃はふと立ち止まり、クロヴィスが先程まで見ていた方向に視線を向けた。
すると悲嘆な面持ちになり、子どもながらに自分達親子は、やってはいけない事をしているように思えてならなかった。
クロヴィスの母親が亡くなると、クロヴィスは住まいを王宮に移す。
離宮に居るときよりも、クロヴィスに心無い言葉を投げかける人が増えた。
この時のクロヴィスは、自分の存在そのものが悪に思えてならなかった。
その為、クロヴィスは悪意ある言葉に目をつぶり、誰にも相談する事なく、国王はクロヴィスを疎ましく、憎憎しく思っている人間で、王宮内が溢れている事に気づかなかった。
王妃とアレックスはクロヴィスを家族として扱い、クロヴィスの母親が亡くなると王妃はクロヴィスに、これからは自分の事を母親のように思って良いと言ってくれたが、クロヴィスは自分のような者がそのように思う事は出来ないと、自ら壁を作った。
クロヴィスは第一王子で、表立って誹謗中傷は受けなかったが、裏では日常茶飯事だった。
だんだんとクロヴィスは、相手に付け入る隙を与え無ければいいと思うようになる。
欠点を減らし、勉強では常に高得点を取った。
クロヴィスが与えられた課題を完璧にこなして行くと誹謗中傷が減った。
また、クロヴィスに言い寄る者も出て来るようになった。
成長をしたクロヴィスは学園に通うようになる。
そこで出会ったのが、ブルーノとアドニスだった。クロヴィスにとって、心から友人と呼べるのはこの二人だった。
クロヴィスはこの二人を自分の側近にし、護衛も自ら選んだ。
ある年の舞踏会の事だ。
一人の令嬢に目を奪われた。
「ブルーノ、あの美しい人は」
「ん? 美しい人って……ああ、今回デビュタントのミレリア・ランチェスター公爵令嬢ことか」
「ミレリア嬢と言うのか……」
「それにしても、どんどん人が集まってくるな。あれ、ダンスの順番待ちをしている男どもだろう? ほら、ちゃっかりアドニスもいるぞ」
ブルーノは可笑しそうな顔で、アドニスを見た。その横でクロヴィスは、今だにミレリアに目を奪われいた。
「おーい、クロヴィス殿下。クロヴィス様。クロヴィス、ちょっとクロヴィス聞いているのか?」
「うん? 何か言ったか」
「いや、もういいや」
ブルーノは呆れた顔をしてクロヴィスを見ていた。
美しい人は全ての縁談を断っていると聞いた。と言っても、彼女が断っているのではなくランチェスター公爵が断っているようだが。
「この間、ミレリア嬢と踊ったんだけど、自分に縁談の話が来ているの知らないんだってさ」
アドニスがそう言うと、ブルーノが相槌を打つ。
今社交界では、誰が彼女の心を射止めるのか話題になっていた。今の所は誰も射止めてなさそうだが。
挨拶をする事がやっとの自分には、到底縁のない話だ。
しかし、それから数ヶ月後に夢のような出来事が起こる。
父親が彼女との婚約の話を持ってきたのだ。
正直王太子には興味が無かったし、自分がなる事で火種になる事が予想出来たが、どうしてもこのチャンスを逃したく無かったので、その話を受け入れる事にしたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
似合わない2人が見つけた幸せ
木蓮
恋愛
レックスには美しい自分に似合わない婚約者がいる。自分のプライドを傷つけ続ける婚約者に苛立つレックスの前に、ある日理想の姿をした美しい令嬢ミレイが現れる。彼女はレックスに甘くささやく「私のために最高のドレスを作って欲しい」と。
*1日1話、18時更新です。
身代わりーダイヤモンドのように
Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。
恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。
お互い好きあっていたが破れた恋の話。
一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)
『白い結婚』が好条件だったから即断即決するしかないよね!
三谷朱花
恋愛
私、エヴァはずっともう親がいないものだと思っていた。亡くなった母方の祖父母に育てられていたからだ。だけど、年頃になった私を迎えに来たのは、ピョルリング伯爵だった。どうやら私はピョルリング伯爵の庶子らしい。そしてどうやら、政治の道具になるために、王都に連れていかれるらしい。そして、連れていかれた先には、年若いタッペル公爵がいた。どうやら、タッペル公爵は結婚したい理由があるらしい。タッペル公爵の出した条件に、私はすぐに飛びついた。だって、とてもいい条件だったから!
最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜
腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。
「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。
エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。
【完結】「お前を愛することはない」と言われましたが借金返済の為にクズな旦那様に嫁ぎました
華抹茶
恋愛
度重なる不運により領地が大打撃を受け、復興するも被害が大きすぎて家は多額の借金を作ってしまい没落寸前まで追い込まれた。そんな時その借金を肩代わりするために申し込まれた縁談を受けることに。
「私はお前を愛することはない。これは契約結婚だ」
「…かしこまりました」
初めての顔合わせの日、開口一番そう言われて私はニコラーク伯爵家へと嫁ぐことになった。
そしてわずか1週間後、結婚式なんて挙げることもなく籍だけを入れて、私―アメリア・リンジーは身一つで伯爵家へと移った。
※なろうさんでも公開しています。
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…
藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。
契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。
そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。
設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全9話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる