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3.婚姻の無効と真実
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結婚をしてから三ヶ月が経った。
ミレリアは会いに来ない夫に怒っているだろうか。それとも、ここぞとばかりに羽根を伸ばしているのだろうか。
不安は募るばかりだが、クロヴィスはミレリアに会いに行く時間が無く、今日も深夜遅くに泥のように眠る。
そして、クロヴィスに思い掛けない出来事が起きた。
結婚を無効にして欲しいとランチェスター公爵家から申し出があったのだ。
クロヴィスは目の前に置かれた書類を茫然と眺めた。
これ程までにミレリアを精神的に追いつめ、傷つけていたとは……。
クロヴィスの結婚生活は、幻のように消えていった。
その後、クロヴィスは国王に呼ばれる。
「お前は何をやっていたんだ!」
国王の叱咤にクロヴィスは答える事が出来ない。
「いいか。こうなったからには、王太子をアレックスにするしか無くなった。言っている意味が分かるか、アレックスが王太子になる」
「はい。もともとそれが一番だったと思います」
「あれをどうやって椅子に座らせておくのだ。紐で括り付けとくのか」
アレックスは脱走の常習犯だ。
クロヴィスにもアレックスに毎日執務をさせるには、国王の言った方法くらいしか思い浮かばない。
「よく聞け。あれが国王になると言う事はな、お前自身が国王になるよりも何倍も大変な事だ。あれは、儂とお前の話しか聞かない。いや、最近は儂の話すら聞かん。クロヴィス、お前の肩の荷を少しでも下ろしてやろうと言う親心を無下にしおって。はあ。もう下がってよい」
父親なりにクロヴィスの事を考えてくれたのだろう。ただ、国王が気づいていないだけで、クロヴィスを良く思っていない者は多い。傀儡の王になっていた可能性もある。
しかし、アレックスのおもりも大変そうだ。
どうやらクロヴィスの未来は、傀儡の王か弟のおもりの二択だったようだ。
次の日には会議が開かれた。
「どいう事ですか。クロヴィス殿下の婚姻にいくら使ったとお思いですか」
ベイナルスター公爵は、クロヴィスとランチェスター公爵をギロリと睨んだ。
相当な金額が使われている。何しろ盛大なパレードまで行ったのだから。
謝罪しか思い浮かば無かったクロヴィスが口を開こうとした時、隣からアレックスの声が聞こえてきた。
「ほぼ回収出来ていますよ。記念品の売り上げがかなり良く。色々作って良かったなー。何しろ、兄上とミレリア嬢は国民から人気がありますからねー」
呑気に話すアレックスに、クロヴィスは救われた。
アレックスの発言に黙り込むベイナルスター公爵。
やはり、アレックスは国王の器なのでは? と思うクロヴィスだった。
その後、クロヴィスとミレリアの婚姻の無効は、国王により国民に周知された。
ミレリアとは夫婦で無くなったが、クロヴィスには心に引っかかるものがあった。
あの日ミレリアは、嘘でもいいから好きと言って欲しかったと言っていた。
夫で無くなった今のクロヴィスが言った所で、ミレリアは困るかもしれないが、それでも最後に伝えようと決心する。
夜会でクロヴィスがミレリアに声を掛けると、やはり困った顔をされた。
終わった事だから気にするなと言われて、少し傷つく。
それでも自分の気持ちを伝え、困った顔をしたミレリアを見て自己満足だった事に気づいた。
今さらだ。失った時間は戻らないし、二人の未来は二度と交わる事はない。
最後だからと思い、自分の気持ちを全て伝えるクロヴィス。
最後にミレリアも自分の事が好きだと聞けて、天にも昇る心地になった。
そして事実が明らかになる。
クロヴィスもミレリアも手紙を書いていたが、お互いに届いていなかった。
クロヴィスは信頼できる者に、ミレリアからの手紙を追跡させた。
犯人はアドニスだった。
アドニスが執務室にいる間に、王宮内に貸し与えているアドニスの部屋を確認させると、結婚をしてからお互いに送った手紙が全て出てきたのだった。
「アドニス、何故このような事をした」
「知っていただろう? 俺がミレリア様の事を好きな事。なんでお前なんだよ。友人のクロヴィスには渡したくなかった」
「私達の結婚は政略で、父が……陛下が決めた事だ」
「それでも、クロヴィスはミレリア様の事が好きだっただろう? なのに、何とも思ってないように彼女の前で格好つけて澄まして。王子だからって、何もせずに彼女を手に入れて、許せない。皆、彼女の気を引こうと必死だったのに。何もしていないお前が一瞬で掻っ攫っていった。くそ、庶子のくせに」
確かに、クロヴィスがミレリアに自分の気持ちを伝えたのはつい先日。
アドニスが言うように自分がミレリアと結婚をする事は決定事項で、ミレリアに良い所を見せようと背伸びをして、仕事をこなして、クロヴィスを悪く思う者にに付け入るすきを与えないようにし、ミレリアに嫌われているかもしれないと思うと会いに行けないチキン野郎だった。
生まれたての子鹿のように怯えて何もしなかった自分は、ミレリアに愛想をつかされて当然だと思う。
しかし、たとえどんな理由あったとしても、アドニスがした事は犯罪であることに変わりはないが。
アドニスは手紙の他には、アレックスの仕事を意図的にクロヴィスに回し、他のものもクロヴィスに回していた。
そして、アイシャとは付き合っていなく、クロヴィスを良く思わない者はたくさんいて、協力させるのは簡単だったそうだ。
ミレリアは会いに来ない夫に怒っているだろうか。それとも、ここぞとばかりに羽根を伸ばしているのだろうか。
不安は募るばかりだが、クロヴィスはミレリアに会いに行く時間が無く、今日も深夜遅くに泥のように眠る。
そして、クロヴィスに思い掛けない出来事が起きた。
結婚を無効にして欲しいとランチェスター公爵家から申し出があったのだ。
クロヴィスは目の前に置かれた書類を茫然と眺めた。
これ程までにミレリアを精神的に追いつめ、傷つけていたとは……。
クロヴィスの結婚生活は、幻のように消えていった。
その後、クロヴィスは国王に呼ばれる。
「お前は何をやっていたんだ!」
国王の叱咤にクロヴィスは答える事が出来ない。
「いいか。こうなったからには、王太子をアレックスにするしか無くなった。言っている意味が分かるか、アレックスが王太子になる」
「はい。もともとそれが一番だったと思います」
「あれをどうやって椅子に座らせておくのだ。紐で括り付けとくのか」
アレックスは脱走の常習犯だ。
クロヴィスにもアレックスに毎日執務をさせるには、国王の言った方法くらいしか思い浮かばない。
「よく聞け。あれが国王になると言う事はな、お前自身が国王になるよりも何倍も大変な事だ。あれは、儂とお前の話しか聞かない。いや、最近は儂の話すら聞かん。クロヴィス、お前の肩の荷を少しでも下ろしてやろうと言う親心を無下にしおって。はあ。もう下がってよい」
父親なりにクロヴィスの事を考えてくれたのだろう。ただ、国王が気づいていないだけで、クロヴィスを良く思っていない者は多い。傀儡の王になっていた可能性もある。
しかし、アレックスのおもりも大変そうだ。
どうやらクロヴィスの未来は、傀儡の王か弟のおもりの二択だったようだ。
次の日には会議が開かれた。
「どいう事ですか。クロヴィス殿下の婚姻にいくら使ったとお思いですか」
ベイナルスター公爵は、クロヴィスとランチェスター公爵をギロリと睨んだ。
相当な金額が使われている。何しろ盛大なパレードまで行ったのだから。
謝罪しか思い浮かば無かったクロヴィスが口を開こうとした時、隣からアレックスの声が聞こえてきた。
「ほぼ回収出来ていますよ。記念品の売り上げがかなり良く。色々作って良かったなー。何しろ、兄上とミレリア嬢は国民から人気がありますからねー」
呑気に話すアレックスに、クロヴィスは救われた。
アレックスの発言に黙り込むベイナルスター公爵。
やはり、アレックスは国王の器なのでは? と思うクロヴィスだった。
その後、クロヴィスとミレリアの婚姻の無効は、国王により国民に周知された。
ミレリアとは夫婦で無くなったが、クロヴィスには心に引っかかるものがあった。
あの日ミレリアは、嘘でもいいから好きと言って欲しかったと言っていた。
夫で無くなった今のクロヴィスが言った所で、ミレリアは困るかもしれないが、それでも最後に伝えようと決心する。
夜会でクロヴィスがミレリアに声を掛けると、やはり困った顔をされた。
終わった事だから気にするなと言われて、少し傷つく。
それでも自分の気持ちを伝え、困った顔をしたミレリアを見て自己満足だった事に気づいた。
今さらだ。失った時間は戻らないし、二人の未来は二度と交わる事はない。
最後だからと思い、自分の気持ちを全て伝えるクロヴィス。
最後にミレリアも自分の事が好きだと聞けて、天にも昇る心地になった。
そして事実が明らかになる。
クロヴィスもミレリアも手紙を書いていたが、お互いに届いていなかった。
クロヴィスは信頼できる者に、ミレリアからの手紙を追跡させた。
犯人はアドニスだった。
アドニスが執務室にいる間に、王宮内に貸し与えているアドニスの部屋を確認させると、結婚をしてからお互いに送った手紙が全て出てきたのだった。
「アドニス、何故このような事をした」
「知っていただろう? 俺がミレリア様の事を好きな事。なんでお前なんだよ。友人のクロヴィスには渡したくなかった」
「私達の結婚は政略で、父が……陛下が決めた事だ」
「それでも、クロヴィスはミレリア様の事が好きだっただろう? なのに、何とも思ってないように彼女の前で格好つけて澄まして。王子だからって、何もせずに彼女を手に入れて、許せない。皆、彼女の気を引こうと必死だったのに。何もしていないお前が一瞬で掻っ攫っていった。くそ、庶子のくせに」
確かに、クロヴィスがミレリアに自分の気持ちを伝えたのはつい先日。
アドニスが言うように自分がミレリアと結婚をする事は決定事項で、ミレリアに良い所を見せようと背伸びをして、仕事をこなして、クロヴィスを悪く思う者にに付け入るすきを与えないようにし、ミレリアに嫌われているかもしれないと思うと会いに行けないチキン野郎だった。
生まれたての子鹿のように怯えて何もしなかった自分は、ミレリアに愛想をつかされて当然だと思う。
しかし、たとえどんな理由あったとしても、アドニスがした事は犯罪であることに変わりはないが。
アドニスは手紙の他には、アレックスの仕事を意図的にクロヴィスに回し、他のものもクロヴィスに回していた。
そして、アイシャとは付き合っていなく、クロヴィスを良く思わない者はたくさんいて、協力させるのは簡単だったそうだ。
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