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イヤリングを売ってから二日が経った。
とうとうお金が底をつきかけ、手元に残ったのは小銭だけになった。
私は宿に泊まるお金が無くなったので、公園のベンチに横になっていた。
はー。本当に私はおばかね。
お兄様にあれだけ甘ったれって言われた事が今になって分かったわ。
これから、どうしましょう……
仕方がないので眠る事にした。少し肌寒かったが我慢をした。
公園には誰も居ない。この町の治安は良さそうだ。
次の日も職探しをしたが見つからず、とうとうお金が底をついた。
明日は、森に入って食べられる木の実でも探そうかしら?
今日も仕方がないので公園のベンチに寝そべった。
水分を摂っていないからか、軽くめまいもしてきた。
明日は朝一で水を飲みましょう……
私は疲れもあり意識を失うように眠りについた。
「おい! 大丈……夫…… おい! こんな所で……ひくし、誘拐……れる……」
「うん……? お母様……」
「おい! 起き……お……さん」
どのくらい寝たのだろうか。私が目を覚ますと天井が見えた。
「あれ? 空じゃない……」
「何寝ぼけているんだ」
隣から男性の声が聞こえてきた。横を見ると、深紫色の髪の毛で薄紫色の瞳の男が、不愉快そうに私を見ていた。私よりも年齢が上そうだが、二十歳は越えていなさそうだ。
私は視線を自分の身体に移す。寝床の上に居た。
私はたった今状況を理解した。
「すみません。ご迷惑をおかけしました。助けていただいてありがとうございます」
「いや、それはいい。たいした事はしていない」
「ごめんなさい。今の私は無一文で家に帰らないとお礼が出来ないんです」
「別にお礼はいらない」
「けれど申し訳ないです。私これでもまだ伯爵令嬢だから、家に帰ればお礼が出来ます」
それを聞いた男は驚いた顔をした。
「この国のか? どこの家だ?」
「プラメル伯爵家です。王都よりも南にあって、少し西よりです」
「なるほど! 伯爵令嬢なのに、なぜ公園で寝ていた」
「私、立派な庶民になる為に家を出ました」
「はっ?」
「だから、働く為に家出をしました」
男は私の言葉に納得をしていないような顔をしていた。
「伯爵令嬢が何故庶民になる必用がある」
「貴族令嬢を辞めたいからです」
「何故」
「結婚をしたくありません。けれど、ずっと家にいると家族に迷惑が掛かります」
「それは、貴族令嬢に生まれたのに無責任ではないのか?」
私は仕方がないので、一年間の出来事をざっくりと目の前の男に話した。
「だから、私は最低な人間です。あの家に、居てはいけないのです」
「なるほど……。事情は分かった。では、何故公園で寝ていた」
「職探しをしたのですが、どこも雇ってはくれませんでした」
「だろうな」
「えっ……理由が、分かるのですか」
「手が綺麗過ぎる。苦労をしていない手だな。俺なら人に困っていなければ、まず雇わないだろう」
私は思わずため息が出た。
男は腕を組んで考え込んでいた。
「よし! 俺が雇ってやろう」
「はい?」
「だから、俺が雇ってやる。お金は払わないが、食事と住む場所を提供してやる。その変わり、この国について教えて欲しい。伯爵令嬢ならば、多少おつむが弱くても、それなりに知識はあるだろう?」
目の前にいる男は、なんと失礼なのだろうか。言い返せない事が癪に障る。だが、この提案はうれしい。
正直職探しには困っていた。
「わかりました。よろしくお願いいたします」
男はふっと笑ってから自己紹介を始めた。
「俺はディリック・クラフェクト。隣国のフォンダーン王国にあるクラフェクト伯爵家の次男だ」
「私はエルーシア・プラメルです。プラメル伯爵家の次女です。」
「そこに居るのが、従者のベルノーだ」
「ベルノーと申します。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
ベルノーさんは、黒い髪の毛に黒い瞳をしていた。表情が柔らかく、親近感が湧いた。
目の前にいる男は、隣国の伯爵家の人間らしい。
そうか、フォンダーン王国はライングドール王国の東側に位置していたわね。
とうとうお金が底をつきかけ、手元に残ったのは小銭だけになった。
私は宿に泊まるお金が無くなったので、公園のベンチに横になっていた。
はー。本当に私はおばかね。
お兄様にあれだけ甘ったれって言われた事が今になって分かったわ。
これから、どうしましょう……
仕方がないので眠る事にした。少し肌寒かったが我慢をした。
公園には誰も居ない。この町の治安は良さそうだ。
次の日も職探しをしたが見つからず、とうとうお金が底をついた。
明日は、森に入って食べられる木の実でも探そうかしら?
今日も仕方がないので公園のベンチに寝そべった。
水分を摂っていないからか、軽くめまいもしてきた。
明日は朝一で水を飲みましょう……
私は疲れもあり意識を失うように眠りについた。
「おい! 大丈……夫…… おい! こんな所で……ひくし、誘拐……れる……」
「うん……? お母様……」
「おい! 起き……お……さん」
どのくらい寝たのだろうか。私が目を覚ますと天井が見えた。
「あれ? 空じゃない……」
「何寝ぼけているんだ」
隣から男性の声が聞こえてきた。横を見ると、深紫色の髪の毛で薄紫色の瞳の男が、不愉快そうに私を見ていた。私よりも年齢が上そうだが、二十歳は越えていなさそうだ。
私は視線を自分の身体に移す。寝床の上に居た。
私はたった今状況を理解した。
「すみません。ご迷惑をおかけしました。助けていただいてありがとうございます」
「いや、それはいい。たいした事はしていない」
「ごめんなさい。今の私は無一文で家に帰らないとお礼が出来ないんです」
「別にお礼はいらない」
「けれど申し訳ないです。私これでもまだ伯爵令嬢だから、家に帰ればお礼が出来ます」
それを聞いた男は驚いた顔をした。
「この国のか? どこの家だ?」
「プラメル伯爵家です。王都よりも南にあって、少し西よりです」
「なるほど! 伯爵令嬢なのに、なぜ公園で寝ていた」
「私、立派な庶民になる為に家を出ました」
「はっ?」
「だから、働く為に家出をしました」
男は私の言葉に納得をしていないような顔をしていた。
「伯爵令嬢が何故庶民になる必用がある」
「貴族令嬢を辞めたいからです」
「何故」
「結婚をしたくありません。けれど、ずっと家にいると家族に迷惑が掛かります」
「それは、貴族令嬢に生まれたのに無責任ではないのか?」
私は仕方がないので、一年間の出来事をざっくりと目の前の男に話した。
「だから、私は最低な人間です。あの家に、居てはいけないのです」
「なるほど……。事情は分かった。では、何故公園で寝ていた」
「職探しをしたのですが、どこも雇ってはくれませんでした」
「だろうな」
「えっ……理由が、分かるのですか」
「手が綺麗過ぎる。苦労をしていない手だな。俺なら人に困っていなければ、まず雇わないだろう」
私は思わずため息が出た。
男は腕を組んで考え込んでいた。
「よし! 俺が雇ってやろう」
「はい?」
「だから、俺が雇ってやる。お金は払わないが、食事と住む場所を提供してやる。その変わり、この国について教えて欲しい。伯爵令嬢ならば、多少おつむが弱くても、それなりに知識はあるだろう?」
目の前にいる男は、なんと失礼なのだろうか。言い返せない事が癪に障る。だが、この提案はうれしい。
正直職探しには困っていた。
「わかりました。よろしくお願いいたします」
男はふっと笑ってから自己紹介を始めた。
「俺はディリック・クラフェクト。隣国のフォンダーン王国にあるクラフェクト伯爵家の次男だ」
「私はエルーシア・プラメルです。プラメル伯爵家の次女です。」
「そこに居るのが、従者のベルノーだ」
「ベルノーと申します。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
ベルノーさんは、黒い髪の毛に黒い瞳をしていた。表情が柔らかく、親近感が湧いた。
目の前にいる男は、隣国の伯爵家の人間らしい。
そうか、フォンダーン王国はライングドール王国の東側に位置していたわね。
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