エルーシアの物語

ねむ太朗

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  次の日の朝になった。
  私は宿屋の廊下で二人に声を掛けた。

「おはようございます」

「おはようございます」

「おはよう」

  ベルノーさんはいつも通りの優しそうな笑顔を見せてくれた。
  ディリック様は、挨拶をするとすっと顔を背けてしまった。

  次の日に引きずる程に気持ちが悪かったのだろうか……
  私は解雇されるのだろうか……

  私達は町の飲食店に来ていた。

「これから、ライングドール王国に戻るぞ」

「……分かりました」

  馬に乗って進んで行く。
  なんだか、背後が気になってそわそわしてしまう。

「そんなに気持ち悪かったですか?」

「何か言ったか」

  私は仕方が無いので首だけ振り返って話す事にした。

「そんなに気持ちが悪かったですか」

「うわあ!  お、おい。いきなり振り返るなよ。驚くだろう」

「すみません……」

  私達は小さな町で昼食をとり、進んで行く。
  また湖が見えて来た。

「もう、ここまで戻って来たのですね」

「ああ。順調に進んでいるな。少し休憩するか」

「はい!」

  さっきよりも大きな声を出したので、振り返る事無く会話をする事が出来た。

  もう、季節は初夏。
  今日は日差しが強かった。

「気持ちいい」

  私は湖の中に手を浸して涼んだ。

「服を濡らすなよ」

「大丈夫ですよー」

  ディリック様は鼻で笑っていた。

「ディリック様……昨日はそんなに気持ち悪かったですか」

「別に気持ち悪くなかった」

  そう言うと、ディリック様は顔を背けてしまった。
  気持ち悪くないのなら、なんだと言うのだ……
  そのままディリック様は、馬を引いて湖の周りを進んで行ってしまった。

「ベルノーさん……私、ディリック様を怒らせてしまったかもしれません」

「何かあったのですか」

「昨日の夜に腕に抱きついて、ありがとうございます。と言いました。ちょっとしたおふざけのつもりだったのです」

「なるほど。それから冷たくなったのですね」

「そうなんです……」

  ベルノーさんは考え込んでしまった。

「私は、解雇をされるのでしょうか……」

「それは……。もう少し様子を見て見ましょう。驚いてしまっただけかもしれませんよ」

「分かりました。ありがとうございます」

「ええ。今は少々ひねくれてしまっているのかもしれませんね」

  ベルノーさんは少し微笑んでから、肩をすくめた。

  私とベルノーさんは、ディリック様を追いかけた。

「そろそろ行くぞ」

「はい……」

  馬に乗って進んで行く。
  私は解雇をされないように、不思議探しに集中をする事にした。

  うーん。それにしても、ライングドール王国は平和よね。
  これだけ豊かな土地なら他国に攻められてもおかしくないわよね。

  しばらく馬を走らせると大きな都市が見えて来た。
  今日はこの町に泊まる事になった。
  夕食を食べる為に飲食店に入る。

「うーん。美味しい!」

「ああ。そうだな」

「ベルノーさんはどうですか?」

「もちろん、美味しいですよ」

  ベルノーさんは優しく微笑んでくれた。
  私は空気が重たいのが嫌だったので必死に話題を探した。

「所で、フォンダーン王国はどうして戦争になったのですか」

「国土の取り合いだ」

「なるほど。確か、引き分けでしたよね」

「そうだ。条約を結んで終戦をした。お互いに厳しい戦いだったからな」

「そうだったのですね」

「今はライングドール王国と同盟を結んだから、しばらく仕掛けて来る事はないだろう」

  ディリック様はいつも通りに戻っていた。

「そうですね。第一王女殿下と第二王子殿下が婚約をしたから安心ですね」

「所で……ライングドール王国は、第二王子殿下を他国に出してもいいのか?フォンダーン王国は王女殿下が二人しかいない。次は第一王女殿下が女王陛下になるだろう……」

「んー?  何ででしょう?  第三王子殿下が居るから大丈夫なのかもしれないですね」

「なるほど。もし、ライングドール王国の王太子殿下に何かあれば、第三王子殿下が次の王になると言うことか」

「うーん。たぶん、そうじゃないですかね」

  私達は夕食を終えて宿屋に向かった。

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