エルーシアの物語

ねむ太朗

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  私は宿屋の部屋に戻って安心をしていた。
  良かった……ディリック様は怒っていなさそうだった。

  その日から二日程、北西方向に馬を走らせた。二日後の夜もぐっすり眠った。

  次の日の朝になり、朝食を食べてからライングドール王国に向けて進んで行く。

「ディリック様。昨日考えたのですが、やはりライングドール王国は不思議かもしれません」

「やはりそうか」

「けれど私にも理由が分かりません。だから、お荷物になってしまうので家に帰ろうと思います」

「本当に帰りたいのか」

「それは……」

  私は本当は帰りたくなかったので言葉に詰まってしまった。
  この旅が結構気に入っているのかもしれない。

「帰りたくないのなら、帰らなくていい。俺にはライングドール王国の知識が必用だ」

「ですが、私が知っている知識は図書館で調べれば分かるものしかありませんよ」

「図書館……よし!  図書館に行こう」

「はい?」

「だから、ライングドール王国に入ったら図書館に連れて行ってくれ」

「分かりました」

  私達はライングドール王国との国境近くの町で、昼食を食べてから進んで行く。
  関所が見えて来た。関所は簡単に通る事が出来た。

  ただいまー!  我が国よ。

  ライングドール王国に入ったとたんに、雰囲気がフワッとした気がした。
  一番最初に入った町はそのまま通過をし、そこそこ大きな町に来た。
  プラメル領の中心街くらいの大きさだ。

  この町の図書館に向かう事になった。
  この町の図書館は、プラメル家の図書室の五倍程の大きさだった。

「えっと……なんの本を探しますか」

「ふむ。王族に関する本をまず見てみるか」

「分かりました」

  私は初代から現在までの王族の名前が乗っている本を手に取った。
  図書館の為、三人で小声で話した。
  人がほとんど居ないのがありがたい。

「これが歴代の陛下の名前が載っている本ですね」

「ふむ。かなりの人数が居るな」

「そりゃあ、千年以上ですからね」

  ディリック様はパラパラとページをめくっていた。
  その速さで読めているのだろうか……

「おい。ここを見ろ」

「何ですか?」

「何故か即位五日で病死になってるぞ」

「へっ?」

「殺されたのか?」

  私は驚いて目を見開いてしまった。

「そんな事……あるのですか?」

「まあ、兄弟関係での殺し合いがある国は……あるみたいだが」

「次に即位をしたのが、公爵家の人間だな」

「どこの家ですか?」

「リーベル家と書いてあるぞ」

「えっ!?  お姉様の婚約者がリーベル家のクラウス様ですよ」

「ふむ。調べてみたが、この時は一人息子だったみたいだな。殺された可能性は低そうだ。しかし、即位をして五日で亡くなる程に病弱な人間を、いくら一人息子とはいえ即位させるだろうか……」

  三人で頭を抱えて悩んでしまった。

「謎が深まりましたね」

「ベルノーさん……本当に不思議ですね。この国は……」

  全く……この国の人間はみんな、ぽわわんとしているのね。
  きっと私もディリック様に言われなければ、五日で亡くなっていてもお気の毒ね。くらいにしか思わなかったわね。
  平和過ぎて、頭がボケてしまっているのかもしれないわね。

「何か王族に関する事で変わった事は無いか」

「えっと……。フォンダーン王国と違うのは男の人しか王になれませんね」

「もし、王女しかいなければどうするのだ?」

「さぁー?」

「さぁーって……」

  ディリック様はため息をついてから、ページをめくって行く。
  最後まで読めたようだ。

「ふむ。今見た所……王家には必ず男の子が生まれているようだな」

「うわー!  では、問題ないですね」

「これが、ぽわわんだな」

  図星だったので言い返せなかった……

「まあ、血縁者の中で一番近い者が継ぐのだろうな」

「そうです!  きっとそう」

  ディリック様は、またため息をついていた。
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