エルーシアの物語

ねむ太朗

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「まあいい、そろそろ日が暮れる頃だろう。宿をとりに行くぞ」

  私達は宿の部屋の確保をしてから、飲食店に向かった。
  飲食店は、酔っぱらいで賑わっていた。
  やはり、ライングドール王国の人間はぽわわんとしている。

  宿屋に戻りのんびりしているとノックがあった。
  ディリック様だった。

「どうしたのですか?」

「いや、その……帰……た……か」

  ディリック様の声が小さすぎて聞き取れなかった。

「ごめんなさい。何と言っているのか聞き取れませんでした」

「だから、帰りたいのか。と聞いている」

「えっ?」

「今日言っていただろう」

  私は今日の出来事を思い出す。
  そう言えば、言ったわね。

「帰りたくないですけどお荷物になってしまうので、いつでも解雇をされる覚悟はあります」

「ふむ。帰りたくないのだな。俺達と一緒に居たいのだな」

「旅は楽しいですからね。それにまだ立派な庶民になれていませんので」

  ディリック様はククッと笑った。

「まだ解雇の予定はないから安心しろ。そうだな、立派な庶民になるのだったな。俺も不思議探しが終わったら、立派な庶民を目指すのも悪くないな」

「えっ……。ディリック様もですか……」

「なんだ嫌そうな顔をして」

「いえ、何でもないです」

「それにライングドール王国よりも、フォンダーン王国の方が職探しは簡単そうだぞ」

「どうしてですか」

「終戦後でどこも人手不足だからな」

「あっ……なるほど」

  ディリック様はまたククッと笑った。

「それで、まだ家には帰りたくないのだな」

「はい!」

「ならいい。今日は失礼する」

  そう言うとディリック様は立ち上がって歩き始めた。

「おやすみなさい」

  ディリック様は振り返って、ふっと笑ってから返事が返ってきた。

「おやすみ、エルーシア」

  ディリック様が部屋から出ていき、扉が閉まった音が聞こえてきた。

  なんだ?  なんだ、今の笑顔は。
  あの笑顔はずるいわね。
  今まで何人の女の人をあれで落としてきたのかしら?
  明日聞いてみよっと!

  私は解雇をされない事が分かり、安心をして眠りについた。

  次の日の朝になり、宿屋の近くで朝食を食べた。

「ディリック様は、女性の方とお付き合いされた事がありますか?  それとも婚約者がいるのですか?」

  私の質問を聞いたディリック様は、目の前でむせていた。

「な、なんだ急に」

「いえ、昨夜の帰り際の笑顔で、今まで何人の女性を落としてきたのかと気になりまして」

「別に一人付き合っていた人が居たが、すぐに別れた。婚約者もいない」

「ほ、ほー!  お付き合いされていた方が居たのですね」

  私は、わくわくしてきた。

「すぐに別れたと言っているだろう」

「どうしてですか?」

「しらん。冷たいからどうのこうのと言っていた」

「女の子には、優しくしないと逃げられちゃいますよ」

「くだらん事を言っていないで、さっさと朝食を食べてくれ。図書館に行くぞ」

  ベルノーさんは、朝からさわやかな笑顔で笑っていた。
  あー、癒されるー。

  ディリック様は怒ってばっかりね。だから振られちゃうのね。
  あれ?  ルシアン様に振られた私は、人の事言えないかもしれないわね。
  
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