33 / 37
32
しおりを挟む
「お姉様……怒られるような事をされたのですか」
お姉様は私の笑顔を見て、右往左往している。
「お姉様……?」
「このくらいしないと、エルーシアは素直にならないと思ったのよ」
「では、今のやり取りは仕組まれていたと」
「違うわよ。台本通りに事が運んだだけよ」
どっちも似たようなものでしょ!
お姉様って、ああ言えばこう言うんだから。
「お姉様……私の顔を見て」
私は無表情でお姉様を見つめた。
「エルーシア……ごめんなさい」
「ディリック様には」
「ディリック様……申し訳ありません」
「いえ、エルーシア嬢の気持ちを聞く事が出来ました。ありがとうございます」
ディリック様は、優し過ぎるわ。
ああ、きっとクラウス様もこういうふうに、お姉様を甘やかしているのね。
「では、私そろそろ行くわね。みんな元気でね」
精霊エミリア様が急に話出した。
「えっ、精霊エミリア様……またですか?」
「そうよ。私が人に関わり過ぎるのは良くないわ。フォンダーン王国には、もう力を使ったから大丈夫よ」
「ありがとうございます。精霊エミリア様……」
お姉様は悲しそうだった。
全員が精霊エミリア様への挨拶を済ませると、精霊エミリア様は消えてしまった。
「エルーシア、一旦フォンダーン王国に帰るが、直ぐに帰って来るからもう少し待っていて欲しい」
私は帰り際にディリック様に話しかけられた。
「分かりました」
その日の夜にお姉様から聞いたのだが、精霊エミリア様は、ディリック様が私に不思議探しを始めたきっかけを話していた時に、宿屋の部屋の中にいたらしい。
ディリック様の話を聞いた精霊エミリア様は、おお! となったらしく、その時から助けてあげようと思っていたようだ。ちなみに音は、興奮した精霊エミリア様の、うっかりだったとか。
お姉様がよけいな事をしなければ、私は恥ずかしい思いをしなくて良かったのに……
後日にディリック様に話した所、ねずみでもすきま風でも無かったな。と笑っていた。
それから数日が経ち。
ディリック様のクラフェクト家から、手紙が届いた。
私とお父様とお母様は、クラフェクト家に向かい、無事に婚約が整った。
それからさらに数日が経ち、ディリック様がプラメル家に会いに来てくれた。
ディリック様と遠乗りに出かけた。
なんだかちょっぴり懐かしい。
今は近隣の領地の森の中を馬で走っている。
私達は木陰で少し休む事にした。
「不思議探しの褒美として、領地と爵位をもらった」
「はっ?」
「だから、子爵になった」
「まあ、おめでとうございます」
「だから、ごめんな」
「えっ……」
私棄てられるの……?
「立派な庶民になれなくなった」
ああ、そういう事ね。
「確かに……、立派な庶民になれないですね」
「だけど、婚約は白紙に戻さないからな」
ディリック様は微笑んでから、私の頭をポンポンと撫でた。
さらに一月が経った。
私はディリック様がもらった領地に来ている。
「人が少ないですね……」
「この土地は作物が育ちにくいみたいで……それから、ずっと国が管理していたから……」
「そうですか」
この領地の中心街は、町と言うより村だった。村もこの一つだけ。
広さはそこそこあるのだけれども……
私は領民の方々と一緒に、農作業を手伝った。
今の私は、立派な庶民をしているかもしれない。
それからさらに月日が流れ、私は十五歳になり、春の王宮の舞踏会に参加をした。
久しぶりに会った貴族令嬢の友人達は、すぐにルシアン様の事を聞いてきた。
説明をして、今はディリック様と婚約をした事を伝えた。
ディリック様も招待されていて、一緒にいたので挨拶をしてくれた。
友人達は顔赤らめていた。
「ディリック様……私にもその笑顔で接して下さい」
「エルーシアの前では素でいいんだよ」
私の意見は通らなかった……
それから友人達に聞いたのだが、ルシアン様は別の女性と遊んでいるらしい……彼は一年に一度彼女をかえないと気がすまないのだろうか……?
男爵家に見捨てられないといいけど……と思ったが、今の私には関係ないのでどうでもいいか。
あんなに会う事が嫌だった友人達は、今は怖くない。
ばかにされてもいっか。とさえ思うようになった。
だって私は、おつむが少々弱いらしいから仕方がないわよね。
愛するディリック様がそう言っていたのだもの。
それにお姉様より自分は、普通の人間だと思っている。
お姉様は、ぶっ飛んでいるものね。
それから、アイラ様にも会った。
婚約した事をとても喜んでくれた。
お姉様は私の笑顔を見て、右往左往している。
「お姉様……?」
「このくらいしないと、エルーシアは素直にならないと思ったのよ」
「では、今のやり取りは仕組まれていたと」
「違うわよ。台本通りに事が運んだだけよ」
どっちも似たようなものでしょ!
お姉様って、ああ言えばこう言うんだから。
「お姉様……私の顔を見て」
私は無表情でお姉様を見つめた。
「エルーシア……ごめんなさい」
「ディリック様には」
「ディリック様……申し訳ありません」
「いえ、エルーシア嬢の気持ちを聞く事が出来ました。ありがとうございます」
ディリック様は、優し過ぎるわ。
ああ、きっとクラウス様もこういうふうに、お姉様を甘やかしているのね。
「では、私そろそろ行くわね。みんな元気でね」
精霊エミリア様が急に話出した。
「えっ、精霊エミリア様……またですか?」
「そうよ。私が人に関わり過ぎるのは良くないわ。フォンダーン王国には、もう力を使ったから大丈夫よ」
「ありがとうございます。精霊エミリア様……」
お姉様は悲しそうだった。
全員が精霊エミリア様への挨拶を済ませると、精霊エミリア様は消えてしまった。
「エルーシア、一旦フォンダーン王国に帰るが、直ぐに帰って来るからもう少し待っていて欲しい」
私は帰り際にディリック様に話しかけられた。
「分かりました」
その日の夜にお姉様から聞いたのだが、精霊エミリア様は、ディリック様が私に不思議探しを始めたきっかけを話していた時に、宿屋の部屋の中にいたらしい。
ディリック様の話を聞いた精霊エミリア様は、おお! となったらしく、その時から助けてあげようと思っていたようだ。ちなみに音は、興奮した精霊エミリア様の、うっかりだったとか。
お姉様がよけいな事をしなければ、私は恥ずかしい思いをしなくて良かったのに……
後日にディリック様に話した所、ねずみでもすきま風でも無かったな。と笑っていた。
それから数日が経ち。
ディリック様のクラフェクト家から、手紙が届いた。
私とお父様とお母様は、クラフェクト家に向かい、無事に婚約が整った。
それからさらに数日が経ち、ディリック様がプラメル家に会いに来てくれた。
ディリック様と遠乗りに出かけた。
なんだかちょっぴり懐かしい。
今は近隣の領地の森の中を馬で走っている。
私達は木陰で少し休む事にした。
「不思議探しの褒美として、領地と爵位をもらった」
「はっ?」
「だから、子爵になった」
「まあ、おめでとうございます」
「だから、ごめんな」
「えっ……」
私棄てられるの……?
「立派な庶民になれなくなった」
ああ、そういう事ね。
「確かに……、立派な庶民になれないですね」
「だけど、婚約は白紙に戻さないからな」
ディリック様は微笑んでから、私の頭をポンポンと撫でた。
さらに一月が経った。
私はディリック様がもらった領地に来ている。
「人が少ないですね……」
「この土地は作物が育ちにくいみたいで……それから、ずっと国が管理していたから……」
「そうですか」
この領地の中心街は、町と言うより村だった。村もこの一つだけ。
広さはそこそこあるのだけれども……
私は領民の方々と一緒に、農作業を手伝った。
今の私は、立派な庶民をしているかもしれない。
それからさらに月日が流れ、私は十五歳になり、春の王宮の舞踏会に参加をした。
久しぶりに会った貴族令嬢の友人達は、すぐにルシアン様の事を聞いてきた。
説明をして、今はディリック様と婚約をした事を伝えた。
ディリック様も招待されていて、一緒にいたので挨拶をしてくれた。
友人達は顔赤らめていた。
「ディリック様……私にもその笑顔で接して下さい」
「エルーシアの前では素でいいんだよ」
私の意見は通らなかった……
それから友人達に聞いたのだが、ルシアン様は別の女性と遊んでいるらしい……彼は一年に一度彼女をかえないと気がすまないのだろうか……?
男爵家に見捨てられないといいけど……と思ったが、今の私には関係ないのでどうでもいいか。
あんなに会う事が嫌だった友人達は、今は怖くない。
ばかにされてもいっか。とさえ思うようになった。
だって私は、おつむが少々弱いらしいから仕方がないわよね。
愛するディリック様がそう言っていたのだもの。
それにお姉様より自分は、普通の人間だと思っている。
お姉様は、ぶっ飛んでいるものね。
それから、アイラ様にも会った。
婚約した事をとても喜んでくれた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる