エルーシアの物語

ねむ太朗

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「お姉様……怒られるような事をされたのですか」

  お姉様は私の笑顔を見て、右往左往している。

「お姉様……?」

「このくらいしないと、エルーシアは素直にならないと思ったのよ」

「では、今のやり取りは仕組まれていたと」

「違うわよ。台本通りに事が運んだだけよ」

  どっちも似たようなものでしょ!
  お姉様って、ああ言えばこう言うんだから。

「お姉様……私の顔を見て」

  私は無表情でお姉様を見つめた。

「エルーシア……ごめんなさい」

「ディリック様には」

「ディリック様……申し訳ありません」

「いえ、エルーシア嬢の気持ちを聞く事が出来ました。ありがとうございます」

  ディリック様は、優し過ぎるわ。
  ああ、きっとクラウス様もこういうふうに、お姉様を甘やかしているのね。

「では、私そろそろ行くわね。みんな元気でね」

  精霊エミリア様が急に話出した。

「えっ、精霊エミリア様……またですか?」

「そうよ。私が人に関わり過ぎるのは良くないわ。フォンダーン王国には、もう力を使ったから大丈夫よ」

「ありがとうございます。精霊エミリア様……」

  お姉様は悲しそうだった。
  全員が精霊エミリア様への挨拶を済ませると、精霊エミリア様は消えてしまった。

「エルーシア、一旦フォンダーン王国に帰るが、直ぐに帰って来るからもう少し待っていて欲しい」

  私は帰り際にディリック様に話しかけられた。

「分かりました」

  その日の夜にお姉様から聞いたのだが、精霊エミリア様は、ディリック様が私に不思議探しを始めたきっかけを話していた時に、宿屋の部屋の中にいたらしい。
  ディリック様の話を聞いた精霊エミリア様は、おお!  となったらしく、その時から助けてあげようと思っていたようだ。ちなみに音は、興奮した精霊エミリア様の、うっかりだったとか。
  お姉様がよけいな事をしなければ、私は恥ずかしい思いをしなくて良かったのに……
  後日にディリック様に話した所、ねずみでもすきま風でも無かったな。と笑っていた。

  それから数日が経ち。
  ディリック様のクラフェクト家から、手紙が届いた。
  私とお父様とお母様は、クラフェクト家に向かい、無事に婚約が整った。

  それからさらに数日が経ち、ディリック様がプラメル家に会いに来てくれた。

  ディリック様と遠乗りに出かけた。
  なんだかちょっぴり懐かしい。

  今は近隣の領地の森の中を馬で走っている。
  私達は木陰で少し休む事にした。

「不思議探しの褒美として、領地と爵位をもらった」

「はっ?」

「だから、子爵になった」

「まあ、おめでとうございます」

「だから、ごめんな」

「えっ……」

  私棄てられるの……?

「立派な庶民になれなくなった」

  ああ、そういう事ね。

「確かに……、立派な庶民になれないですね」

「だけど、婚約は白紙に戻さないからな」

  ディリック様は微笑んでから、私の頭をポンポンと撫でた。

  さらに一月が経った。
  私はディリック様がもらった領地に来ている。

「人が少ないですね……」

「この土地は作物が育ちにくいみたいで……それから、ずっと国が管理していたから……」

「そうですか」

  この領地の中心街は、町と言うより村だった。村もこの一つだけ。

  広さはそこそこあるのだけれども……

  私は領民の方々と一緒に、農作業を手伝った。
  今の私は、立派な庶民をしているかもしれない。

  それからさらに月日が流れ、私は十五歳になり、春の王宮の舞踏会に参加をした。

  久しぶりに会った貴族令嬢の友人達は、すぐにルシアン様の事を聞いてきた。
  説明をして、今はディリック様と婚約をした事を伝えた。
  ディリック様も招待されていて、一緒にいたので挨拶をしてくれた。
  友人達は顔赤らめていた。

「ディリック様……私にもその笑顔で接して下さい」

「エルーシアの前では素でいいんだよ」

  私の意見は通らなかった……

  それから友人達に聞いたのだが、ルシアン様は別の女性と遊んでいるらしい……彼は一年に一度彼女をかえないと気がすまないのだろうか……?
  男爵家に見捨てられないといいけど……と思ったが、今の私には関係ないのでどうでもいいか。

  あんなに会う事が嫌だった友人達は、今は怖くない。
  ばかにされてもいっか。とさえ思うようになった。
  だって私は、おつむが少々弱いらしいから仕方がないわよね。
  愛するディリック様がそう言っていたのだもの。

  それにお姉様より自分は、普通の人間だと思っている。
  お姉様は、ぶっ飛んでいるものね。

  それから、アイラ様にも会った。 
  婚約した事をとても喜んでくれた。
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