落ちこぼれ魔法使い見習いのアイリーン

53. 付き合ってあげるよ

「おーい。バナナだぞ。バナナ。なんと皮まで剥いてある。ぜひ一口」

　ジーンがバナナを片手に教室の窓から身を乗り出している。

「ジーン何しているの？」

「おわっ、うわっ。アイリーン驚かすなよ」

　バランスを崩したジーンが窓枠にしがみついている。

「驚かしたつもりはないんだけど……なんかごめん」

「ああ」

「で、何をしているの？」

「そこにいた火の妖精をおびき寄せようかと」

「あー。あの子か。バナナには興味なさそうだね。ちなみにカロリーナさんの所の火の妖精のアンリエッタはひまわりの種が好物って言っていたよ」

　ジーンがおびき寄せようとしていた火の妖精は、バナナに近づいて来たかと思ったら直ぐに離れたりして、一喜一憂するジーンで遊んでいるように見えた。

「そうか。バナナには興味が無いのか」

　しょんぼりするジーン。

「あのね。女の勘なんだけど、あの子はやめた方がいいと思う。ジーンが振り回されて大変な思いをすると思う」

「妖精に振り回されるって大げさだなー」

　もう！　ジーンは何も分かっていないんだから。きっと将来ああいう感じの女の子に振り回されて鼻の下を伸ばしているに違いない。

「と・に・か・く。あの子はジーンと契約する気なさそうだから諦めた方がいいと思う」

「そうか」

　またしょんぼりするジーン。

「付き合ってあげるよ」

「つ、つ、つ、つ、付き合う？」

　少し声が裏返っているジーン。

「そう。今日の放課後森に行こう。昨日たくさん妖精がいたよ。私は封印の石碑を見に行きたいし」

「あー。放課後付き合うよって事ね。ありがとう」




　そして放課後になり、私達は森へ向かった。

「本当だ。すっげーいるな」

「すっげーか分からないけど、少し歩くたびに妖精に出くわすでしょう？」

「ああ」

　ジーンは火の妖精と水の妖精の横を通り過ぎ、しばらく歩いて出くわした雷の妖精の前で足を止めた。

「よし。君に決めた！」

　ジーンの声に驚いた妖精は逃げで行った。

「あれ？」

「おくびょうな性格だったのかもね」

「まあ、次だな次」

　気を取り直しで私達は歩みを進める。