落ちこぼれ魔法使い見習いのアイリーン

ねむ太朗

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58. シルフィーさんの感謝

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 謁見の日から数ヶ月が経ち、進級まで数日となった。
 私は今日最初の授業を受ける為に教室に向かって歩いていた。

「アイリーン! おはよう」

 私が振り向くとシルフィーさんがこちらに向かって駆けて来た。
 廊下を走るなんてシルフィーさんにしては珍しい。どうしたのだろうか?

「シルフィーさん。おはようございます」

「アイリーンありがとう。あなたのおかげよ」

 シルフィーさんは私の両手を握って感謝を述べている。
 はて? 私は何をしたのだろうか。

「殿下が服屋を経営する許可をしてくれたのよ」

「そうなんですか」

 私は目玉が落ちそうな程目を見開いた。

「そうなの。もちろん条件付きよ。公務が優先とか、共同経営者を立てるとか」

 王太子妃が経営を行うとは聞いた事が無い。この国では新しい試みなのだろう。

「シルフィーさん。おめでとうございます」

「ありがとう」

 シルフィーさんはとても嬉しそうに笑った。はにかむ姿が可愛らしい。
 きっと王太子殿下はこの笑顔に胸を高鳴らせたに違いない。

「それで、共同経営者を弟にお願いしようかと思って」

「身内なら安心ですね」

「そうでしょう」

 私達が教室に着くとすぐに魔法学の授業が始まった。

「えー。今日は最近分かってきた魔法使いが使える魔法について話すぞ」

 今日の授業は新しい情報のようで、プラント先生は手元の教科書を開く事なく進めている。

「魔法使いは火と水と雷の魔法が使えるな。しかし、妖精にはその三つと新緑、治癒がいる。また、黒龍は氷だ。改めて魔法使い達が新緑、治癒、氷の魔法を使えるのか実験がされた所、やはり不可能だった。しかし、新緑や治癒の妖精と契約をする事で間接的に使う事が出来る」

 やはり魔法使いは三つの魔法しか使えないようだ。
 私はプラント先生の言う間接的にしか魔法が使えない。

「間接的にとは、一つは妖精に直接指示を出して使う事だ。もう一つは、新緑の妖精と契約をしている場合はその者が薬を作る時に、効果の高い物が出来上がる事が報告されている」

 これは私が初めてピンクの解毒薬を作った時の事だろう。その後に新緑の妖精と契約をした者も同じ事が起ったと聞いている。
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