かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

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  今日はたくさん走って疲れたのか、夕食を食べるとロンはすぐに眠ってしまった。

  私は眠くなかったので読書をしていた。

「チュー」

  ロンが起きたようだ。寝起きのロンは、寝床から出て窓際に走って行った。

「ロンは元気ねー」

  窓際に行ったロンは私の方を向いた。

「チュー、チュー!」

「外が見たいの?」

「チュー」

  私がカーテンを開けると、ロンが月明かりに照らされた。

「チュー!」

  すると、ロンの身体がうっすら輝き、ロンの身体がどんどん大きくなっていく。

「えっ……」

  私は目を見開いた。目の前に立っていたのはロイアン殿下だったからだ。

「えっ、どういう事?」

「あー、やっと戻れた。けれどすぐにネズミに戻ってしまうから、頼むキスをしてくれ」

「はっ?」

「だから、真実の愛のキスだよ。俺にしてくれ」

「えっ、嫌です。無理です」

「なんでだ?」

「説明してもらえませんか?」

  ロイアン殿下は少し考えた様子をしてから返事をした。

「すまない。久しぶりに人間の姿になったから慌ててしまったみたいだ」

「最初から話そう。まず俺は数ヶ月前に興味本位で森の魔女に会いに行ったんだ」

「はい」

「そして、森で迷子になり一人森をさ迷った。何故か近くに居た側近達が急に見えなくなったんだ。しかし、俺は魔女に会う事が出来た」

「おお!」

「そして魔女は俺の願いを叶えてくれると言った。けれど、特に叶えて欲しい願いも無かったので、俺は言ったんだ」

  王子様ならなんでも手に入りそうですものね。

「特にない。それより、魔女と言うからもっと美人なのかと思った。っと……」

「はっ?」

「そうしたら、魔女が怒り出してなー。ははは。ネズミにされてしまったよ」

  ロイアン殿下はあほうなのだろうか?
  全然笑えないから!

「大変でしたね……」

「そうなんだよ。それでな。魔女が言うには、真実の愛のキスで人間に戻れると言っていた」

「そんな、おとぎ話じゃないんですから」

「けど、魔法を掛けた本人が言っていたんだぞ。あと、満月の日の月明かりを浴びると、日の出までの間は人間の姿に戻れると言っていた」

「ああ、それで今は人間の姿なのですね」

「分かってくれたか」

「ええ、まあ」

「よし、キスをしよう!」

「いやいや、ちょっと待って下さい」

  私がそう言うとロイアン殿下は不満そうな顔をした。
  ファーストキスなのよ。好きな人としたいわ。
  何でもいいから理由をつけて断りましょう。

「なんでだ」

「私がロイアン殿下にキスをしても戻れないと思います」

「何故だ」

「私はロイアン殿下を愛していないからです」

「あんなに可愛がってくれていたではないか!」

「それは、ペットとしてです。私が好きなのは、ロンでしてロイアン殿下ではありません」

「では、俺を愛せ。今から愛を語り合おう」

  この人気持ち悪いなー。
  あっ、人間に戻りたくて必死なのか。

「愛せと言われましても……」
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